規制の厳しい米国にいや気がさしたリップル(Ripple)が、日本に移転するかもしれないと、米大手情報メディアのブルームバーグ(Bloomberg)が伝えています。最終決定されてはいませんが、Ripple Labs Inc.は日本が最有力であると考えています。
リップルは米国に残留したいが明確な規制方針が必要
ブルームバーグが10月22日、Ripple Labs Inc.最高経営責任者(CEO)のブラッド・ガーリングハウス(Brad Garlinghouse)氏の話として伝えたところによると、日本とシンガポール、英国、スイス、アラブ首長国連合(UAE)の5カ国の内、最有力の移転先として日本が挙がっています。移転の理由は、米証券取引員会(SEC)など米規制当局が、XRPは証券か否かという規制上の決定を遅らせていることだといいます。
ガーリングハウス氏は「これら5カ国に共通する基準は、それぞれ異なるデジタル資産つまり暗号資産(仮想通貨)をいかに規制するかについて明確にしていることである」と述べています。
同氏によると、米規制当局は仮想通貨のステータスについて、それがコモディティ(商品)なのか通貨かそれとも証券かについて見解が異なり、明確な考え方を示すことができません。同氏はさらに「規制は推測ゲームにすべきではない。リップルは米国企業としての誇りがあり、可能なら米国に残留したい。しかし、われわれは投資とビジネスの成長を図るために、明確な規制方針を必要としている」と語っています。
日本は健康的な仮想通貨市場を発展させる環境にある
日本が最有力の移転候補地であるとする理由についてガーリングハウス氏は、日本は米国とは対照的に、「非常に健全な市場を発展させる環境にある」と述べています。同氏によると、日本は2017年に、仮想通貨取引所の事業に対する登録システムを導入、これがデジタルコインを金融資産として公式に認めたものであると解釈されています。
仮想通貨市場について同氏は、「新型コロナウイルスのパンデミックは、仮想通貨市場にとって追い風になった。その理由は、中央銀行がそろって法定通貨を増刷し、一定程度のインフレ効果となったことだ」と指摘しました。同氏は併せて、現金離れも仮想通貨市場を支援する結果になったと述べています
日本のSBI グループとの合弁事業など緊密な関係が移転の背景に
リップルはSBIグループとは2016年以来、投資面でも緊密な関係にあります。リップルは同年5月、SBIホールディングと40対60%の出資比率で合弁会社SBI Ripple Asiaを創立しました。このジョイントベンチャーは、分散台帳技術(DLT)を活用した次世代型の決済プラットフォーム「RCクラウド」を提供して、アジア地域の金融機関や送金事業者に革新的な送金サービスを行っています。
ガーリングハウス氏は「日本はわれわれの最速成長している市場の1つであり、SBIのような重要なパートナーを持っている理由の1つである」と強調しています。同氏はすでにSBIと移転について話し合っていると述べ、両社関係の深化は、移転方針の有力な支えにもなっていると考えられます。SBIホールディングス社長兼最高経営責任者(CEO)の北尾吉孝氏は19年、リップルの取締役を兼任しています。
参考
・Ripple Eyes Japan, Singapore If Blockchain Firm Leaves U.S.
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