ロシア金融・経済ニュース通信社のプライム(Prime)によると、ロシア中央銀行は年内に試験運用の準備が完了すれば、来年にも中央銀行デジタル通貨(CBDC)の試験運用が始まると報じました。同中銀のアレクセイ・ザボトキン(Alexei Zabotkin)副総裁は、いくつかの技術的問題が解決されれば、プロトタイプを実行に移す計画が進んでいると語りました。
デジタルルーブル発行はまだまだ
ザボトキン副総裁は会見で、実用段階のトランザクションは、プラットフォームが完全に始まるまでは実現せず、ユーザーはデジタルルーブルの利用までには長い間待たなくてはならないだろうと語りました。現状について同氏は、「来年、このプロトタイプに基づいて修正が行われるが、テストラウンドを始めることになるだろう」と述べています。
ロシアは昨年10月、中央銀行が「CBDCに関する諮問文書」を公開、決済システムを強化、促進していることを認めました。そして1週間後、同銀はデジタルルーブルを採用する功罪について検討を始めているとも語りました。関連してロシア貯蓄銀行は、デジタルルーブルをホストするブロックチェーンを開発する計画を明らかにしました。
プーチン大統領は昨年4月まではCBDC発行を否定
プーチン大統領は昨年4月、CBDCを発行する計画はないと公式に発言していましたが、その後中国や米国などがCBDCの開発に注力していることから、一転して計画を進める動きに転じました。
ザボトキン氏によると、デジタルルーブルの試験運用は数段階実施される予定であり、それまでは「仮想トランザクション(virtual transaction)」だけが実施されます。試験運用の参加者は、仮想通貨が全面的に展開される際に生じる諸問題を解決することに注力して、デジタルルーブルそのものは、さらなる試験運用が必要になります。
価値交換のためのデジタルシステム開発について、ロシアは一貫して敵視的な方針を続けてきました。デジタルルーブル発行に対する初めてと見られる今回の発表によって、事態はようやく動き始めます。
デジタルルーブルはeウォレットを市民が携帯する形で実現へ
CBDCが法定通貨に取って代わるまで発展するか否かは、なお様子見です。ロシア中銀はデジタルルーブルが「硬貨と共に付加される通貨形式の1つ」として存在するもので、「それはまた、リスクフリーの予算割り当てに供するもので、ロシア経済にとって重要な金融上の要因の安定化に役立つもの」と見なされています。
デジタルルーブルの利用について、ロシア中銀は「eウォレット(オンラインおよびオフラインの双方の携帯機器の形で利用可能となる)が開発され、市民による利用ができることになる」と説明しています。そのeウォレットを利用して、ユーザーは日々のサービスの支払いを済ませたり、入出金することができます。
しかしeウォレットなどのインフラストラクチャーがどのように運用されるのか、明確な説明はまだありません。
参考
・Bank of Russia to Launch Digital Ruble Pilot in 2021
・Digital Ruble Trials to Start in 2022
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