センタリング

流行の投資方法になりつつあるNFT

ブロックチェーンによって、映像や音楽をデジタル資産化した非代替性トークン(NFTs:Non-fungible tokens)の売買が投資の流行となっており、高い流動性を備えた市場を創出するオークション・サイトも登場してきました。

NFTの売買でこれまで成功した事例として、ビープル(Beeple)というアーティストのデジタルアートが6,900万ドル(約75億2,100万円)でオークションで落札されたことと、「NBAトップショット(NBA Top Shots)」というバスケットボール選手のビデオクリップの売買などが挙げられるでしょう。NBAの試合自体はYouTubeでも視聴できますが、このNFT化されたビデオクリップは数百ドルから値が付き始め、二次取引では数十万ドルにまで値上がりしました。NBA Top shotのNFTは1ヵ月で総額1億8,000万ドル(約196億2,000万円)の販売を記録しています。

ここまで市場が過熱しているのは、NFTを有価証券として扱う必要がなく、証券法の対象にならないためとされています。

映画業界はNFTを採用する可能性

NBA Top shotsの成功を踏まえて、次にどの業界がNFTに興味を示すかを考えると、無限のコンテンツを所有する映画業界でしょう。例えば、映画「カサブランカ」や「風と共に去りぬ」など過去の名作のクリップをNFTにして販売するかもしれません。

ここで重要な点として、NFTの所有者はオーディオビジュアル・コンテンツに関する著作権や商標権までを有していないという点です。NFTにおけるコンテンツの使用は、著作権法に基づく公正利用(フェアユース)に限定されますが、契約によって使用を拡大もしくは制限される可能性はあります。

購入時に規約の確認と同意を求めることで、最初の購入者に契約期間や条件を課すことは可能ですが、その後の二次購入者に規約を適用することが可能かどうかは分かりません。ただし、規約をNFTそのものに埋め込むことができるため、二次以降の購入時に規約を開くことができれば、規約は適用されます。NFTの購入時に、規約について「同意する」というボタンのクリックなどを義務付けることが理想でしょう。

映画のNFT化への問題点

ただ、映画のビデオクリップのNFT化には多くの問題があります。最初の問題はクリップに関する所有権です。所有権は制作会社にあるのか、配給会社など第三者(サードパーティ)にライセンス譲渡しているのかなど、所有権の所在が問題になるでしょう。そして、2つめの問題は、クリップに登場する俳優がパブリシティ権を放棄することに同意するかどうかです。これは彼らの出演契約における権利がどこまで及ぶのかにかかっているでしょう。俳優の契約がクリップに関する権利を認めなければ、俳優の同意を得た上でアメリカ映画俳優組合(SAG)に映像の再使用料を支払う必要が出てきます。

さらに映像の再使用料は、全米監督協会(DGA)と全米脚本家協会(WGA)との基本合意のもとで、監督や脚本家に対しても支払われることにもなります。クリップが音楽を含んでいれば、作曲及び録音上の著作権所有者の許可が必要になるかもしれません。そして、制作会社に支払われるNFTの販売利益やライセンス料は、会計上利益として処理されるのであれば、利益を共有する権利を持つ出演者にまで広がることも考えられます。

このように、映像をNFTに変換するには法的な煩雑さを伴いますが、今後実現されれば、その価値は非常に大きなものとなるでしょう。

参考
Non-Fungible Tokens (NFTs) Meet Hollywood

【こんな記事も読まれています】
世界最大手のオークションハウスがNFTデジタルアートの競売を開始
ゲームやデジタルアートなどに特化した新しいブロックチェーンFlowとは?
「仮想通貨の時代が遂に到来」とマイケル・ノボグラッツ氏が断言する背景とは?

おすすめの記事