韓国政府は2022年1月、暗号資産(仮想通貨)取引で得た利益へ20%の課税を開始する予定ですが、同時にNFT(Non-fungible tokens:非代替性トークン)への課税も実施される可能性があります。世論が反発しているにもかかわらず、強硬的に政策を推し進められるようですが、実施となった場合、大手4社以外の小規模な仮想通貨取引所は破産の危機に陥り、およそ31億米ドル(約3,467億3,500万円)の損失が出る可能性があるとのことです。
ソウル市での仮想通貨税導入計画
韓国では、年間2,100ドル(約23万4,900円)を超える仮想通貨の利益に対して、一律に税務申告を義務付けることを予定しています。この規定はコスダック(韓国取引所:KOSDAQ)に上場している企業の株式を取引した際において非課税となる42,000ドル(約469万7,700円)の基準を大幅に下回っています。野党議員と一部の与党議員、そして投資家やトレーダーからは、2023年までの見直しもしくは延期を求める声が上がっていますが、政府の方針は変わりません。
韓国の経済副首相兼企画財務部長官であるホン・ナムギ(Hong Nam-ki)氏は、企画財務委員会において「仮想通貨税は計画通り2022年1月に導入される予定で、株式投資との規定の不一致についても、すでに正当化されている」と述べました。議会も計画への決定を出してはいますが、世論はさまざまな分野での見直しを求めて反発を強めています。
委員会の中には、「課税システムは特に若者に代表される、仮想通貨を利用する人々の特性に合わせたものにする必要がある」とのの声もあり、政府は仮想通貨と株式投資との課税基準の違いについて説明を求められています。このことに対してホン長官は、「仮想通貨は株式とは異なる。コスダック市場での株式投資は金融資産であり、韓国経済には欠かせないものだ」と民営通信社のニューシス(Newsis)にて回答しています。
ホン長官は、世界金融はまだ仮想通貨を主流の投資とは完全に認めておらず、ほとんどの先進国で仮想通貨に関連する税の導入を計画中か、またはすでに導入しているとも述べています。また新興のNFT関連ビジネスについて、まだNFTへの課税は準備されていないものの検討段階に入っていると、NFTへも課税が行われる可能性も示唆しています。
取引所の縮小による巨額損失の可能性
韓国フィンテック協会(Korean Fintech Association)と高麗大学(Korea university)のキム・ヒョンジュン(Kim Hyung-joong)教授は、韓国の仮想通貨取引所の大半が廃業となった場合、仮想通貨市場におよそ31億ドルもの損失が発生するというデータを開示しました。
韓国国内ではほとんどの仮想通貨取引所で取引額が縮小しており、2021年9月に韓国の法定通貨ウォン(KRW)での取引も基本的に禁じられています。現在では銀行と提携できた4つの大手取引所だけが法定通貨ウォンをペアにした仮想通貨取引に対応しています。
韓国の新聞「東亜日報(Donga)」では、「キムチ・コイン」と名づけられたおよそ180種類のトークンが、現在はたった1つのプラットフォーム上でしか取引できず、他の取引所25社に約31億ドル分のトークンが閉じ込められた状態にあることを報じました。この唯一のプラットフォームが閉鎖となった場合、これらのトークンも紙切れ同然になり、数千という韓国内のトレーダーが多額の損失を被る可能性があることに言及しています。
一部の取引所は、手持ちのキムチ・コインを移動もしくは清算したいトレーダーのために、対ビットコイン(BTC:Bitcoin)取引が可能なマーケットを開設したところもありますが、東亜日報はキムチ・コインの取引を「ますます困難となっている」と結論付けています。
参考
・Seoul to Hold Firm on Crypto Tax Launch, Suggests NFT Tax May Follow
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