所有しない暮らしを広げる「家具・家電レンタルサービスCLAS」代表 久保裕丈氏インタビュー

実業家として知られる久保裕丈氏が展開する新事業「買わないインテリアショップCLAS(クラス)」。
CLASは、月々400円から家具・家電をレンタルできるシェアリングサービス。初期費用が不要で、わずかな負担でインテリア一式を揃えられるのが特徴だ。
今回のインタビューでは、立ち上げの経緯やシェアリングサービスに対する想いを語ってもらった。

【プロフィール】
東大大学院を卒業後、外資系コンサルティング会社のATカーニーに勤務。その後、ファッション通販サービス「MUSE & Co.」を展開するミューズコーを設立。2015年に同社を売却し、複数の企業の顧問やコンサルティングをしていくつものビジネスを成功させてきた青年実業家。

CLASは自分の原体験から生まれたサービス

―サービス誕生のきっかけを教えてください。

僕自身がこういったサービスを強烈に欲しかったっていうのが、きっかけにあります。1年半~2年に1回くらいの頻度で引越しをしていたので、そのたびに全部の家具を入れ替えていて。今って自分も含め、家具を買う人が少なくなっているんですが、家具は持たない方がたぶん、暮らしやすい。

―自身がフリーランスを経験したことも関係しているのでしょうか?

住むのに適した場所を求め、引っ越しの頻度は本来はもっと上がるべきだと思っています。
僕自身はフリーランスの時にノマド的な心地よさだったりだとか、合理性みたいなところはすごく感じました。今後はもっとフリーランスの人が増え、3カ月単位で住むところも変わってくると予測しています。

あと、周囲からは「車は何持ってるんですか?」「家はどういうところ?」という風に「物を持っている」と期待されがちで。そんな中、こういったありきたりな発想に対しての拒否感が生まれました。
それもこのCLASを生み出す原動力になったのかなと思うんですよね。
逆に持っていないほうが、物に縛られずに自由に生きていける。その自由さだったりとかを基に、もっと世の中に何を還元していくか?というようなことを考えているほうが余程かっこいい。そういうのをもう少し発信したいという想いはあります。

家具はトレンドに左右されないのが大事

―CLASで提供している家具や家電はシンプルですが、優れたデザイン性も持っていますね。

デザイン性という意味では、極端なデザイン性は求めていません。サブスクリプションで扱うべきサービスは、普遍性がないといけないと思っています。
その「普遍性」は何かというと、当然「物」としての耐久性がないといけない。

もうひとつ、「トレンドに左右されない」ことを大事にしています。(自分の目の前にあるデスクを指して)例えばこの机。これなんて10年間ぐらい余裕でもちますし、使った後に新たなお客様から借り手がつくケースがあります。
そうなったら、売り切りの家具屋さんよりも高い利益が得られますよね。
その利益を、今度は消費者に源泉としてちゃんと価値として提供できるっていうのが、サブスクリプションの本質だと思っています。

例えばNetflix (ネットフリックス)。月額1,000円ぐらいで、何十本、何百本と視聴できる。今まではレンタルビデオ屋で3泊4日で250円程度かかっていました。それと比較すると、サブスクリプションサービスは圧倒的なコストメリットを提供できています。こういうサービスや物の普遍性があり、そこから得られる何かしらのメリットがあること。これは必須だと思っているんです。

だからCLASの商品は一定程度のデザイン性はありつつも「トレンドに左右されない」ことを大事にしています。これは設立当初からCOOと話をしているところですね。

リーズナブルな価格で提供できるのは、資金需要を賄えているから

―CLASは月額400円から、とわずかな負担でインテリアを一式そろえることができます。その理由は?

それなりのコスト競争力を持たせているのは、単純に資金調達をしていたりだとか資金繰りをうまくやっているからです。エクイティの調達や、ファクタリングみたいなバックファイナンスをつけて、借入というかたちで資金調達(デットファイナンス)をしています。ちゃんと資金需要を賄えているからですね。

ユーザーは変化が早い人たち

―CLASにはどんなユーザーが多いですか?

ユーザー層は大体30歳前後が1番多いです。いわゆるIT系とかに勤めているような、転職・昇進・昇給といった変化が早い方たちが一定のユーザーとしてついています。
全体の10%強程度は海外のお客様ですね。まだサービスローンチをして間もないため、平均はまだ見えていないのが正直なところですが、全体の借りてくれているUUに対して、ひと月あたりの解約数・返却数は大体1%~2%の間という感じですね。

物事の変化やアップデートが早くなると、所有はフィットしなくなる

―所有を優先するいわゆる「物質主義」から「持たない主義」が増えているのはなぜだと思いますか?

携帯のアプリも含め、携帯の中に対する金額が上昇している気がします。僕自身は、圧倒的にKindle(キンドル)にばっかりお金を使いますし。
ただ、旅行とか体験とかに対してウォレットシェアが上がっている人もいるのかもしれないですが…その分、物に対してはお金を使う余裕というか、そっちに回すよりもほかで消費をしているのでは?というのが原因のひとつではないでしょうか。

さらに、もうひとつは、自分の人生もそうだし、「物」のアップデートが早いですよね。 僕があまりIOTに手を出さない理由は、デジタル製品はものすごいスピードでアップデートして機能が上がっていくから。
それに、自分の人生もそうです。年齢が上の方ですらも、転職を繰り返す時代になっています。こういう風に物事の変化やアップデートが早くなってくると、所有することはフィットしないなと、なんとなくみんな自分の感覚値として持ち始めてるんじゃないのかなと思います。

空間はものすごく大事なUX

―ユニオンテックさんと提携されたと思うのですが個人空間だけでなく、オフィス等の空間も変化させたいというニーズがあるのでしょうか?

例えばホテルだと、共用部などが本当にお客様のニーズに合っているのかどうか?というのは分からないですよね。
オフィスも同様に、「変化させたい」というニーズがあります。

いきなりすべてをガラッと変えるのは難しいし、本当に自分の会社にフィットするのか分からないという時に、一部だけABW(Activity Based Working:時間と場所を自由に選択できる働き方)のようなことができる空間をつくりたいと。ハマらなかったらそれはやめて、従来通りのかたちに戻すこともできますし。

―実験的な使われ方をしているケースもあるんですね。

あります。空間にはトライアンドエラーが必要。みんな当たり前のようにサイト上でUIとかUXのPDCAを回してABテストをしますよね。でも空間だって、ものすごく大事なUX。それはオフィスだったら従業員にとってのUXだし、ホテルとか飲食とかマンスリーマンションであれば、泊ってくれる人に対するUXだと思っていて。UXを最大化するためには、テストができないと駄目だと思っています。

家具を買わない選択肢はCSRの観点としても1番いい

―ほかにはどういったニーズがありますか?

オフィスの移転の話で「今ある家具の引き取り」についてよく相談されますね。でも難しいケースが多いのが現状です。
家具は購入金額だけを見がちですが、実はライフタイムに渡って手間もコストも生まれています。そして、捨てる時の環境負担にも目を向けてほしいですね。例え引き取ったとしても、リペアもできず次の借り手も見つからないとなると、申し訳ないんですが処分してもらうしかないんです。

例えば企業であっても海外の安い家具を導入しているケースが多いですが、そういう家具は耐久性が低く、移動の際に壊れやすいこともあって、次に回せません。そうなると捨てざるをえない。すると、ゴミが増えて環境負荷になってしまうという…。企業であっても、家具を買わない選択肢はCSRの観点としても1番いいんだということに気づいてほしいですね。

サブスクリプションサービスの本質はOne to Oneで最適な提案ができること

―CLASでは、法人案件はすべて社内でスタイリングをしているそうですね。そのメリットはどこにあるのでしょうか?

サブスクリプションの本質はユーザーに「One to Oneで最適な提案ができること」。そう思っている以上は、法人に対しても家具レンタル料金の範囲内ですべてコーディネートしています。

―それは別料金ではないんですね。

はい、インクルードしてます。普通だと家具の全部の買取価格の10%上乗せでやるんですが、CLASでは絶対乗せないですね。必ずお客様に最適なものを提案できないとダメだと思っているので。

自分が心地良い空間で働ける「ワーケーション」に注目

―今後、フリーアドレス化の企業が増えてくると思いますが、ほかに何か注目していることはありますか?

この先、注目しているのは「ワーケーション」です。「バケーション」と「ワーク」を混ぜた造語で、旅先などでバケーションしながら働く働き方です。実は、こういった機会の創出に積極的な企業が多いんです。今は東京にいなきゃ働けないわけではないですよね。
自分がすごく心地いい空間にいて、それでなおかつ働けるというワーケーションの考え方が素晴らしいなと。そういった案件にかかわることも、今後手掛けていきたいです。

―社員がくつろげる場所や状態で仕事ができるのは理想ですね。

今それに一番積極的なのは白浜ですが、今後は沖縄だったりともっと増えてくるのかなと思いますね。

CLASを「わがまま」に使ってほしい

―最後に、CLASについてユーザーにどのように使ってほしいのかを教えてください。

「わがままに使ってほしい」ですね。もちろん一定程度の利用規約はありますが、CLASは家具を扱うお店というよりも、お客様が1番自分らしい人生を過ごすためのサービスです。自由に気ままにCLASっていうサービスを使ってもらいたいです。

―まさにCLASのキャッチコピー『「暮らす」を自由に、軽やかに』を現したサービスですね。

そうですね。このコピーにすべて集約されていると思っています。まだまだこれから商品も増やしていきますので、期待していてください。

久保さんが展開する家具・家電のレンタルサービスCLASはこちらからチェックできます。

取材:三矢晃平
撮影:堅田ひとみ

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