仮想通貨の逃避先?ステーブルコインの投資的役割

仮想通貨の相場は他の市場よりも価格が不安定でボラティリティが高い傾向があります。仮想通貨の価格が低迷していたこの1年、仮想通貨の代替コインとして注目されてきたのがステーブルコインです。

ステーブルコインとは?

ステーブルコインとは、安定した価格変動のないコインで、仮想通貨変動時の逃避先として、また仮想通貨資産の安定化の役割を担います。これまでテザー(Tether:USDT)が、米ドルと連動しているステーブルコインとして最も使われていますが、定期的に噴出するUSDTの信頼性に対する疑惑により、仮想通貨市場は少なからず影響を受けています。

簡単に分けるとステーブルコインには3種類(法定通貨担保型、仮想通貨担保型、無担保型)ありますが、現状では法定通貨担保型の米ドル連動(ペグ)が主流です。

国内でも法定通貨でペグされたステーブルコインは資金決済法上の「仮想通貨」には該当しないという見解があるように、ステーブルの扱いについてはさまざまな解釈があります。ここでは投資という観点からステーブルコインを見ていきます。

主な米ドル連動型ステーブルコイン

①Tether(USDT)
2014年に発行、米ドル連動型でもっとも古いステーブルコイン。これまでは仮想通貨業界の米ドルの代わりとしてUSDTが代替コインの役割を担っていましたが、今後はさまざまなステーブルコインのうちの1つ、という立場になるかもしれません。

②True USD(TUSD)
イーサリアムのERC20に準拠しているステーブルコイン。トラストトークン(TrustToken)によって発行されています。TrustTokenはTUSDの総量と同額のUSDを常に保有し、第三機関による信託保全を実施しています。

③USD Coin(USDC)
アメリカの仮想通貨取引所ポロニエックス(Poloniex)を買収したサークル(Circle)社が発表したステーブルコイン。USDCにペグするUSドルの残高は、大手会計企業のグラント・ソントン(Grant Thornton)が定期的に監査を行いレポートを出しています。ステーブルコインUSDCが発行される裏付けとして、残高を確認することができます。

④Gemini Dollar(GUSD)
仮想通貨業界では有名なウィンクルボス兄弟が運営する取引所ジェミニ(Gemini)が発行したステーブルコイン。このコインの特徴はニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)に認可されているという点です。GUSDはアメリカに認可された初の米ドルペグコインです。

⑤Paxos Standard(PAX)
パクソス(Paxos)社が発行するステーブルコイン。パクソス社はニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)に認可された信託会社で、預金はFDIC(連邦預金保険公社)で政府機関の保証の元管理されています。

ステーブルコインのブーム(?)は仮想通貨の価格が低迷している2018年に起こりました。(Tether以外は2018年の発行)世界の有名仮想通貨取引所も、各ステーブルコインの上場を行っています。

フォビ(Huobi)グローバルのステーブル戦略

海外の大手仮想通貨取引所フォビ・グローバル(Huibo Global)では新しい戦略として4つのステーブルコインをサポートするHUSDをローンチしました。


出典:Huobi Global reddit

HUSDは4つの米ドル担保型のステーブルコイン①Paxos(PAX)②USD Coin(USDC)③True USD(TUSD)④Gemini Dollar(GUSD)を取り扱っています。(USDTは無し)HUSDトークンを保有すると、4つのステーブルと同等の価値交換ができます。

例えば、100PAXを入金すると、自動的に1:1の等価交換でHUSDに手数料無料でコンバートされます。(100HUSD)そしてHUSDは自分が保有していない他のステーブル、例えば100TUSDや100GUSDとして出金する事ができます。HUSDを利用すれば、4つのステーブルコインの交換をその都度自由に、手数料無料で選べるのでステーブル単体を保有するよりも便利です。

HUSDはトレーディングに使える

交換されたHUSDはHuobiグローバルの取引プラットフォームで他の仮想通貨銘柄に交換(トレード)ができます。ここもユーザー側、取引所側双方にメリットがあります。


出典:Huobi Global 取引画面

HUSDペアで取引できる銘柄です。(現在は6銘柄に増えました。)
(HUSD/USDT,HUSD/BTC,HUSD/EHT,HUSD/XRP, HUSD/EOS,HUSD/HT)
※Huobi Globalは日本では口座を作ることはできません。

【基軸通貨と決済通貨】
トレーディング銘柄の基軸通貨側(左側)はなるべく変動の少ない通貨が望ましいと言われています。価格の変動の大きいビットコイン(BTC)やイーサリアム(EHT)が左側にある銘柄は、安定的なトレードには向きません。その点ステーブルコインには「ボラティリティの抑制と価格の安定」という2つの要素があるため、ステーブルコインが左側(基軸通貨)になると取引がしやすくなります。(BTC/USDTの例、左側:BTC=基軸通貨、右側:USDT=決済通貨)

【ステーブルに逃げるという考え方】
仮想通貨トレーダーがステーブルコインを「待機資金」として使うニーズは高いと思います。私自身、これまでテザー(USDT)を仮想通貨資金の退避先として捉えてきました。BTCやETHなど仮想通貨全体の相場が下落した時、仮想通貨同士の交換のみでは、資産を守ることができません。(でも法定通貨には替えたくはない)そんな場合に、数種類ものステーブルコインが自由に使え、簡単に交換できるしくみが取引所があれば便利だと思います。

HUSDはあくまでも取引所内で取り扱われるステーブルトークンなので、他のステーブルコインとは用途が違います。(取引ペア「HUSD / HT」に至っては取引所トークンとしてのメリットの方が大きいかもしれません)しかしステーブルコインを利用した1つの提案として非常に興味深いものがあります。

まとめ

国内でもGMOインターネットが日本円と連動したステーブルコイン「GJY」を発行するなど、ステーブルコインへの期待が高まっています。ステーブルコインには投資だけでなく、「決済」という重要な役割がありますので、さまざまなユースケースが出てくるでしょう。

トレード的には

  • 投資対象→「仮想通貨」
  • 安定資産(法定通貨の代用)→「ステーブルコイン」

今後このような使い分けが考えられるのではないでしょうか?

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