- QuadrigaCXのずさんな経営実態
- 顧客資産160億円を失くしたカナダの仮想通貨取引所クアドリガ。大手会計事務所アーンスト&ヤングの調査で、ずさんな経営実態が明らかとなった。
QuadrigaCXのずさんな経営実態
秘密鍵を独占的に管理していたCEOの突然死によって、仮想通貨資産にアクセスできない事態に陥り、4月に破産が確定したカナダの仮想通貨取引所クアドリガ(QuadrigaCX)。
仮想通貨投資家にとって悪夢のようなシナリオの舞台裏が、破産管財人に指定された大手会計事務所アーンスト&ヤング(EY)の最新報告書により明らかになった。
6月19日に公開されたEYの報告書では、まずクアドリガには財務並びに運営管理の両面において重大な欠陥があり、基本的な内部統制や職務分離さえも存在せず、同取引所の創設者兼CEOで昨年12月に死亡したGerald Cotten氏が経営の大半をコントロールしていたと指摘している。
取引所資産と顧客資産の分別管理も行われていなかったため、多くの「現金」取引が行われる中、正確な記録は残されておらず、入金が顧客資金口座向けのものかどうかも確認できなかったという。
さらに顧客保有の仮想通貨は、「クアドリガの」ホットウォレットとコールドウォレットのみで、管理されているわけではなかったようだ。
報告書の内容
報告書には次のように書かれている。
かなりの量の仮想通貨が、クアドリガ外のプラットフォームから競合他社の取引所のCotten氏の管理下にある個人口座に送金された。顧客の仮想通貨はこれらの取引所で取引され、状況によっては、Cotten氏の証拠金取引口座の担保として使用されていたようだ。
取引により発生した損失や取引所の追加手数料はクアドリガの仮想通貨準備金の状況を悪化させた。
また、相当な量の仮想通貨が、EYが識別不能な複数のウォレット所持者に送られているという。
さらに、Cotten氏は、クアドリガ内で複数の偽名を使ったアカウントを作成し、裏付けのない資金をプラットフォームに預け入れ取引に使用していたと報告書は指摘している。
中でも「Chris Markay」という名称のアカウントでは、2016年から2018年の間に、2億2000万ドルを超える現金預金と、34,806BTCおよび540,011ETHを含む主要仮想通貨を預け入れているが、これらの入金額が実際の現金や仮想通貨を反映している可能性は低いとEYは述べている。
しかし、このような裏付けのない入金処理により、クアドリガは顧客の提供する資金との取引を行い、同プラットフォームでの取引量並びに手数料による収益を増加させることに成功し、一時はカナダ有数の取引所となっている。
その後、Cotten氏は zcash、dash、dogecoinおよびomisegoのマージン取引を行い、「相当な損失を生み出した」と報告書では述べられている。
さらにEYは、ブロックチェーン記録の解析により、ある取引所のCotten氏名義のアカウントが21,501BTCを受け取り、8BTCを除くすべてが清算され、約65億円の利益を得ていたことも突き止めている。
現時点で回収見込みは無し
この報告書から、クアドリガはCEOの突然死による不運な仮想通貨のロックアップとはかけ離れた、「作為的に不正行為を行なった、悪意ある取引所による大規模な詐欺の様相を帯びてきた」との指摘もある。
これらの不正資金は、Cotten氏所有(現在は未亡人のJennifer Robertson氏)の不動産、投資有価証券、現金保有、ボート、航空機、高級車や金銀のコインの購入に使われたと見られる。破産による清算手続きに従い、これらの資産を現金化したとしても、最大9億8千万円相当で、290億円に上ると言われる顧客資金の大半は回収される見込みは立っていない。