オーシャンプロトコル(Ocean Protocol)が医療に
ブロックチェーン技術を活用しAI(人工知能)のための分散型データ交換プロトコルを提供するオーシャンプロトコル(Ocean Protocol)が、スイスに本社を置くヘルスケア企業のロシュ・ダイアグノスティクス(Roche Diagnostics)との提携を発表した。安全で確実なデータ共有ソリューションを通して、心臓病患者の治療改善を図る。
オーシャンプロトコルを使い、個人の医療リアルタイムデータを患者の自己監視装置から医療専門家へ送信でき、患者への迅速なフィードバックの向上を可能とする。
医療業界は過去10年間で、多くのヘルスケアデータを作成しておきており、2020年までにその情報が25,000ペタバイト(1ペタバイト=100万ギガバイト)となるとされている。IBMによると、2020年まで医療データは73日ごとに2倍となる推測がされている。
この医療データには一部問題がある。データは、信頼・プライバシー・セキュリティなどの懸念から閉じられたままになっているのだ。患者のデータを安全に共有できれば、病気を早期に診断したり、効果的な治療法で処置を施すこともできる。重要なのは、患者がデータ使用に同意し、プライバシーが維持され、データが安全に保たれた状態で利用できることだ。
医療データへのソリューション
Roche Diagnosticsは、シンガポールの情報通信メディア開発庁(IMDA)及びオーシャンプロトコルと協力し、血液希釈療法を受けている患者の治療改善のため試験を開始した。患者のデータがブロックチェーン技術を介して病院に自動的に共有される新しいモデルとなる。オーシャンプロトコルによりデータの起源を確立し、データフローを追跡できるようにする。データ共有は、改ざん防止のためタイムスタンプが付けられる。
患者のデータフローを保護して、プライバシーとセキュリティの規制に準拠するために、データトランザクションのハッシュはオーシャンプロトコルによって強化されたブロックチェーンに格納される。ブロックチェーンを使用することで、データの改ざんが防止され、データフローを簡単に監査しトレースすることができる。
オーシャンプロトコルは、ブロックチェーンのプライバシーレイヤーとして、Enigma(エニグマ)と提携したことも発表している。Enigmaの技術を使いブロックチェーンのプライバシーを強化したソリューションとしている。
患者は、自分のデータを送信することで医者からのフィードバックを直接受け取ることができる。結果的に医師の診察を減らすことにもつながるようだ。また患者はデータがどこで使用されているか、誰がそれを使用しているかを理解できる。
医療とブロックチェーン
世界保健機関(WHO)は、2016年には1,500万を超える人々が心臓発作や脳卒中で早期死亡しており、その数は増え続けていると発表している。心臓病は、世界で最も多い死因とされている。心房細動や血栓のリスクを減らすための薬の投与量は、患者によって異なる。生活習慣や食事の変化の影響を受けるため注意が必要だ。患者は、定期的に血液検査を行い、正しい服用量を守ること、それが治療に有効であることを確認する必要がある。これは国際的に標準化された規格で測定されることとなっている。
現在実用化されている機器では、患者は血液をサンプリングし測定結果を医師にSMSやメールなどで送信する必要がある。このプロセスは安全ではなく、人的ミスも招きやすい。Roche Diagnosticsは、プロセスを迅速化・自動化し、よりタイムリーな管理を可能にしたいと考えている。オーシャンプロトコルは、技術をオープンソース化しており、世界中でデータ共有を可能にするために多くのデータマーケットプレイスとサービスプロバイダを構築することができる。
安全な環境で扱う必要がある医療データは、ブロックチェーンと相性が良いと考えられるが、その構造上プライバシーの問題がある。しかし、Enigmaの技術を活用したオーシャンプロトコルならば、プライバシーを保ちながらデータの交換提供が可能となる。このソリューションにより、ブロックチェーンがより実用的なシステムとして注目されるようになると思われる。オーシャンプロトコルにより、データの活用幅が広がっていくのではないだろうか。
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