コインベース(Coinbase)などの事例から考える暗号通貨企業の独立性維持の難しさ

米国最大取引所であるコインベース(Coinbase)は9月20日、新しいトークンの上場を検討するアナウンスをしました。そのリストは以下の通りです。

コインベース9月の上場検討銘柄
出典:Coinbase

8月前半にも同様の発表がされており、その時の検討アセットは以下の通りです。
コインベース8月の上場検討銘柄
出典:Coinbase

Coinbaseの新規上場銘柄検討に株主の意向が影響?

さて、これらの検討リストに対して、Twitterをはじめとした場所では、Coinbaseに対する批判がされています。それは検討している25トークンのうち21がベンチャーキャピタル(VC)の資本が入っていて、CoinbaseもCoinbase VenturesというVCアームを通して自身の資本も入っていることが理由です。

この事実から、ベンチャー投資で保有したトークンを一般投資家に売りつける動きだという批判も多く見られます。これは下記のコラムで触れた通りです。

関連:2020年前半にかけて大型の新興ブロックチェーンが上場、投資家が行うべき行動とは?

Coinbaseにはa16zやユニオンスクエアベンチャーズなどのベンチャーキャピタルの資本が入っており、これらのベンチャーキャピタルはさまざまな暗号通貨に投資しています。Coinbaseは公には認めないですが、取り扱い銘柄に株主の意向が少なからず反映されている可能性は考えられます。

また、米メディアのザ・ブロック(TheBlock)は、投資だけではなく、Coinbaseと関係ある人物を以下のようにまとめています。

コインベースと関係ある人物図
出典:The Block

同社の幹部は2018年後半から数多く離職しており、メディアでは経営の独立性が失われていることもささやかれていました。

CoinDeskの本社移転とそれに反対をした編集チーム

業界最大メディアの1つであるコインデスク(CoinDesk)においても似たようなうわさが広がっています。CoinDeskの親会社は、業界の多数企業に投資をするデジタルカレンシーグループですが、これまでオフィスは分離され、メディアとしての独立性も維持されていました。

しかし、9月にCoinDeskの編集チームのオフィスがデジタルカレンシーグループのオフィスに移行されることが発表されています。この件について、CoinDesk編集の一部チームは独立性が損なうことを理由に反対をしたにも関わらず、オフィスが移転されたことが発表されています。また関連性があるか定かではありませんが、編集長が辞任しています。

暗号通貨企業の独立性維持の難しさ

従来の金融市場である株式の取引所、投資を助言するようなメディアにおいても、さまざまな規制があります。それらの規制には時代にそぐわないものも含まれていますが、これまでの歴史の中で必要性に応じて出来上がったものです。

それは、今回の事例のように各企業のガバナンスや資本関係への規制も時に含まれます。実際のところ、CoinbaseCoinDeskといった企業が、資本提供者から独立経営をできているか筆者には分かりかねますが、火のないところに煙が立たないこともまた事実でしょう。

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