ハイパーインフレ国家ベネズエラで起こる、政府の動きと草の根運動

ベネズエラ、ペトロトークン(Petro)で石油を販売

ベネズエラの大統領が、同国が発行するペトロトークン(Petro)を来年から石油の販売の際に決済で使用できると発表しました。同発表では、ドルと石油決済を切り離したいと明確に宣言しています。
(参考:Coindesk

この発言が内外向けのブラフ(意味:はったりなど)であるのか、それとも本気であるのかは定かではありませんが、本当であれば非常に大きな意味を持ちます。少なくとも、中東の産油国が独自トークンを作って同じようなことを始めたら、戦争になるような事例でしょう。

なぜなら石油の決済通貨はアメリカドル(USD)と決まっており、それに背くことはアメリカを中心とした国際社会に背を向けることと同義だからです。

石油決済をUSDではない通貨にすることは国際社会に背を向けることと同義

アメリカドルの基軸通貨たる所以は、現代の最高戦略物資である石油がほとんどドルでしか買えないからです。

石油市場の大きさはゴールドの10倍で、シルバーの100倍近くとなります。1945年にヤルタ会談の直後にアメリカとサウジアラビアが今後、石油取引に関する一切はドル建てで行うという密約を交わしたとされますが、これはその後の両国の動向などからも間違いないとされています。

2003年にブッシュ大統領が引き起こしたイラク戦争の要因の一つは、イラクがドルを外してユーロで石油決済をしようとした為だと言われているのは定説で、その他の産油国も過去に何度もドル以外の石油決済通貨を用いようとしましたが、失敗しています。

第二次世界大戦戦後、アメリカが基軸通貨化のためにやったことを極簡潔に2つにまとめると、このようになります。

  • 金を70%保有して最も兌換性(だかんせい)がある通貨という事実があった
  • 自由貿易化や石油決済をドル建てで行い、あらゆるものをドルで買える、またはドルでしか買えないよう産油国と様々な政治的やり取りを行った

ということです。

いずれにしても、20世紀から現代に至るまでの最も重要な戦略物質である石油の決済の99%は、今もアメリカドルのみ行われています。こういった背景で、ベネズエラが今、石油決済通貨がアメリカドルであることを公に否定をし、トークンを発行して切り離そうとしていることは大きい話です。

とはいえ、ベネズエラはすでに経済制裁も受けており、国際的な原油マーケットでの存在感も限定的です。しかし冒頭で述べたとおり、これがサウジアラビアなどの産油国であれば、非常に大きな事件になります。

ベネズエラの大統領の発言は、そういった種類の発言です。
今後の経過が見守られます。

なお、こういった背景は前提知識として、こちらのレポートを読むと理解が深まるでしょう。

参照:暗号通貨とブロックチェーンの未来を考えるために知るべき国際金融・近代金融史の基礎知識

有志による草の根プロジェクト

ベネズエラのハイパーインフレは凄まじく、同国の法定通貨が使い物にならなくなっていることは多くのメディアで報じられており、周知の通りです。そういった状況を暗号通貨で変えるための動きが今、民間プロジェクトでも生まれています。

「Airdrop Venezuela(エアドロップ・ベネズエラ)」というプロジェクトです。

ハイパーインフレ国家ベネズエラで起こる、政府の動きと草の根運動出典:https://airdropvenezuela.org/

有志による、ハイパーインフレのベネスエラの国民10万人に暗号通貨を送るプロジェクトです。現在は寄付を受付中で、来年からベネズエラ人の認証済みユーザーにエアドロップされるというタイムラインになっています。

主要の暗号通貨で寄付ができるようになっています。

ハイパーインフレ国家ベネズエラで起こる、政府の動きと草の根運動

財政破綻国家を暗号通貨で変えようとする、本気の「草の根プロジェクト」は世界初で、こちらは応援したい取り組みです。

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