日本企業もSaaSスタートアップに参戦!世界に飛び立つ各社の取り組みを紹介

ユーザーが自分でパソコンにインストールする必要がなく、クラウド上でアプリケーションが起動するSaaS(サース)は、Googleをはじめとする海外企業が積極的にサービスを展開しています。

日本では、内閣府が「未来投資戦略」にて、サイバー空間の一層の活用を進めることを提言。SaaSをはじめとしたサイバー空間のインフラを積極的に支援するなど、スタートアップ企業にとっても有利な条件がそろいつつあります。

今回は、国内企業のSaaS分野に関する取り組みの一覧、IoT(物のインターネット)や人工知能との連携ではじまるスタートアップの様子を考察します。

すでに使っている人も多い?日常に溶け込んだSaaS

Gmail に代表される、Google 提供のSaaSアプリケーション群「G Suite」やファイル共有の「Dropbox」など、海外企業のSaaSは私たちの日常に溶け込んでいます。

CD/DVD といったROMメディアを使ってインストールする従来のアプリケーションのような手間がかからず、無料枠からでも利用できる手軽さから、個人・法人を問わず導入されています。

複雑なアプリケーションを提供するSaaSとしては、パッケージソフトから上手くクラウドサービスに転換した、Adobe「Creative Cloud(クリエイティブ・クラウド)」、Microsoft「Microsoft Office 365」が有名です。

両方ともに、パッケージソフトの時代には、違法コピーによる被害が深刻でした。国内でも、パッケージからクラウドに移行した「サイボウズ」などの例もあります。

日本国内企業のSaaS(プロジェクト管理)

SaaSが得意とする「複数ユーザーの同時アクセス」を利用して構築されているのが、プロジェクト管理系のアプリケーションです。「グループウェア」とも呼ばれます。

IT企業がグループ開発するようなシチュエーションだけでなく、不動産などの営業職であれば「誰がいつ、どこを訪問する予定か?」といった定型的なやりとりをサポートするシステムとして稼働してます。

グループウェアの老舗「サイボウズ Office10」

国内企業で最も規模の大きい管理系のSaaSが、サイボウズ株式会社の「サイボウズ Office10」です。社名とサービス名が同じであることから分かる通り、同社はグループウェアを開発することからスタートした企業です。

各社員のスケジュール管理、会議室などの施設予約といったグループウェアとしての基本的な機能に加えて、エクセルファイルを簡単にアプリ化できる「カスタムアプリ」機能(※1)も用意されています。

サイボウズの初期バージョンである「Office 1」は、1997年にリリース。現在では、社員間だけでなく、親会社と子会社の情報共有を進める「Garoon(ガルーン)」のような大規模グループウェアも運用しており、この業界の草分け的存在とも言えます。

※1 プレミアムコース限定機能

シンプル・手軽な「do.pj(do project プロジェクト管理ツール)」

Amazon.co.jp アカウントがあれば、すぐに利用できるのが、シフトセブンコンサルティングによる「do.pj」。ほかの多くのSaaSと同様に、初期費用は必要なく、最初の30日間は無料枠が用意されています。

やることリスト(ToDo List)に特化したシンプルな画面構成で、パソコンに不慣れなユーザーでも使いやすい設計。「何をすべきか?」が一覧になっています。

Amazon では、ほかにも国内企業と提携して SaaS販売を行っています。トラックなど大型車専用のカーナビゲーションを提供する「トラックカーナビ」など、ニッチな法人向けのサービスもリリースされています。

さらなる飛躍が期待される日本国内企業のSaaS(スタートアップ)

内閣府による施策「未来投資戦略(※2)」では、データ駆動型社会をテーマに、クラウドで稼働するシステムの拡充と、そのインフラを支えるセキュリティの強化に着目。
具体的には、今後SaaSのようなネットワーク上で動くシステムが一層増えるにあたって、十分なセキュリティ技術を備える必要性を説いています。

同資料では、以下のように空間を定義して、SaaSに代表される取り組みの重要性を説いています。

・私たちが現実的に生活している場所を「フィジカル空間」
・ネットワークで形成されるクラウド上の場所を「サイバー空間」

これらの施策に伴い、国内企業のSaaS分野におけるスタートアップも勢いを増しています。

  • アプリ開発を支援する「Yappli(ヤプリ)」
  • デジタルマーケティング(アプリ内の広告管理)を行う「Repro(リプロ)」
  • 飲食店向けの顧客管理システム「トレタ」
  • 建設業における人材のマッチングサービス「助太刀」

このような個々のスタートアップにも注目が集まると同時に、各社の連携や一種の統合化も進んでいます。2019年に入ってからは、ReproとYappli が提携してサービスの拡充を図りました。

Yappli と Reproによる「Yappli De Repro」では、プログラミング未経験でもアプリが制作できる Yappliの特徴を活かし、アプリを導入した企業の収益化を支援しています。

また、建設現場の仕事を支える「助太刀」のような分野は、スマートフォンを活用したSaaS事業の典型例と言えるでしょう。

これまでSaaSを活用するのは、IT関連や経理業務など、デスクワーク作業が多い業界であったのに対して、スマートフォンが普及したことにより、いわゆる現場仕事でも手軽に取り入れることができるようになりました。

株式会社Rehab for JAPANがリリースしている、介護事業所向けSaaS「リハプラン」も同じような例です。
これからも人工の高齢化が進む日本においては、複雑な操作を必要とせずに、現場で働く人を支援するシステムが、一層求められるでしょう。

人工知能の分野では、株式会社エクサウィザーズの人事支援サービス「HR君」が、人事データを解析して社員のパフォーマンス向上をサポートしています。

※2 未来投資戦略2018

日本企業もSaaSビジネスで世界に飛び立つ

米国のGAFA(※3)、中国のBATH(※4)という、超大型プラットフォーマーに押されている日本企業ですが、「フィジカル空間」で安定したインフラが構築できていることから考えれば、「サイバー空間」での成功も夢ではないでしょう。

時間に遅れることなく発車する電車、飲料水として利用できる水道水などを、過去に国を挙げて作ってきたのですから、それをコンピュータ・ネットワーク上で実現することも不可能ではないはずです。

また、今回紹介した国内企業だけでなく、人工知能・機械学習のアルゴリズムを取り入れたSaaSがさらに増えていくことが予想されます。今後も国内外のスタートアップ企業に注目する必要がありそうですね。

※3 グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン
※4. バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ

おすすめの記事