イーサリアムクラシック(Ethereum Classic)のブロックチェーンで8月2日、3,693のブロックの「Reorg」が発生しました。「Reorg」とはそれまで分岐が発生していたブロックチェーンが突如として1つにまとまり、分岐していた期間のブロックに含まれる取引高が巻き戻しされることを指します。
Ethereum Classicに突如Reorgが発生
今回3,693のブロックのReorgが発生しており、これはイーサリアムクラシックの平均ブロックタイムを13秒だとすると、約13時間に相当し、その時間に含まれる取引が巻き戻しされたことを意味します。本コラムを執筆している8月3日時点に直接的な被害は報告はされていないものの、51%攻撃が疑われています。
Reorgが発生したのは、「0x75d1e5477f1fdaad6e0e3d433ab69b08c482f14e」というアカウントアドレスのマイナーが全てマイニングしていたブロックです。イーサリアム財団(Ethereum Foundation)のハドソン・ジェイムソン(Hudson Jameson)氏は、状況が確認され、ブロックチェーンが安定するまで取引所に預入れと引き出しを制限すべきとアドバイスしています。
There is a problem on the Ethereum Classic (ETC) blockchain. Exchanges need to pause deposits and withdrawals.
— Hudson Jameson (@hudsonjameson) August 1, 2020
Reorgが発生したブロックチェーンには、最初の2,000ブロック内に5つTxが内包されていたこと、悪意ある攻撃である可能性とも見られます。
あるいは可能性としては、現在イーサリアムクラシックではノードクライアントの通信の問題であるとも懸念されます。以前Parityが開発していたイーサリアムクラシックではノードクライアントであるMulti-Gethはv.1.9.18でサポートを打ち切りしているため、現在主流のOpen EthereumやCore-Gethと通信ができず、結果として分裂したというものです。
いずれにしても、現在のイーサリアムクラシックの安定性には強く警戒をしたほうが望ましいでしょう。
下位PoWブロックチェーンのセキュリティに懸念
このような下位PoWブロックチェーンのセキュリティに懸念があるのは今に始まった話ではありません。2018年頃から複数のブロックチェーンで悪意あるマイナーがブロックの巻き戻しを実行して、取引所などに対して二重支払いを試みています。
イーサリアムクラシックにおいても51%攻撃は過去にされており、2019年1月に報告されています。プルーフ・オブ・ワーク(PoW)のブロックチェーンは、そのネットワークに投下されている計算力に比例し、その計算力の投下量は、そのブロックチェーンのネイティブトークンの時価総額に比例します。マイナーとしてはマイニングに成功したときの報酬が高くなるからです。
イーサリアムクラシックににおいては、8月3日時点で時価総額25位のブロックチェーンであり、これはビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)以外のPoWチェーンの信頼性がいかに低いかということを結論付けざるを得ないでしょう。
PoWはASIC製でその種類のアルゴリズムで1位のコイン(例えばビットコインはSHA-256で1位である)ならネットワーク外部からの計算資源が調達困難であり、セキュリティは高いと言えます。しかし、そうでなければセキュリティは脆弱で、それと比較したらDPoS系のブロックチェーンほうがはるかに攻撃されにくいと言えます。これまで下位PoWのブロックチェーンは攻撃されている事例が複数あるものの、DPoS系のブロックチェーンが攻撃された実績はありません。これについては下記のレポートでさらに詳しく解説しています。
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このような背景を理解して下位PoWブロックチェーンについては、市場の認識の見直しが中期的にされる可能性が高いと言えます。
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