2018年には、多くのクリプトファンドの組成が行われ、また、それらのファンドによる投資が実行されてきました。それらについては、d10n Labでも筆者も多くのレポートで触れてきました。
参照:シリコンバレーで最も影響力の大きい暗号通貨ファンドの投資スタイルと、影響力を強めるCoinbaseマフィア
一方で、企業が投資をされた場合、それは将来にリターンが期待されるものでもあります。執筆時点で、Bitmain(ビットメイン)などの企業がIPO承認されることが困難であるということは度々報道されています。では、買収が行われているディールはどのようなものでしょうか。
前年より約2倍のM&Aが起きた2018年
JMP Securitiesによると、2018年には、前年2017年の約2倍のM&A(企業の合併や買収)が起きています(画像参照)。
出典:Bitcoin.com
観測範囲で145件のM&Aが行われたと報告しています。
本レポートでは、どのような買収が行われているかを俯瞰、またそれらの特徴を踏まえ、解説します。
2018年のブロックチェーン企業の目立った買収(前編)
2018年のブロックチェーン企業の買収で目立ったトップ10を取り上げます。
Bitstamp(ビットスタンプ)=NXMHが買収
Bitstamp(ビットスタンプ)は、ルクセンブルクを拠点にしている、2011年に創業されたヨーロッパ圏をターゲットにする老舗取引所です。2018年10月にベルギーを拠点にする投資会社NXMHに買収されます。
Bitstampを買収した投資会社NXMHは、韓国のメディア・コングロマリットNXCの子会社です。また、同社は韓国の取引所Korbit(コルビット)の親会社でもあります。BitstampとKorbitは統合せず、それぞれ独立をして経営をするとコメントしています(参照)。
買収金額は4億ドル(約442億円)程度ではないかと噂をされていますが(参照)、非公開です。また、創業者は現在も10%程度の株式を保有し、経営に関与していくことが発表されています。
Trust Wallet(トラストウォレット)=Binanceが買収
Binance(バイナンス)はTrust Wallet(トラストウォレット)を2018年7月に買収しました。創業から1年満たないTrust Walletは、従業員が数名の状態で買収をされました。買収金額は非公開です。買収後はBinanceグループとして、DEX(分散型取引所)のエコシステムなどを構築するための機能の一つになる予定です。
BitTorrent(ビットトレント)=TRONが買収
2018年6月にTRON(トロン)のファウンダーであるJustin Sun(ジャスティン・サン)氏が、このBitTorrent(ビットトレント)の開発を主導する株式会社であるRainberry, Inc(旧BitTorrent, Inc)を1億2,600万ドル(約139億円)で買収しました。本件に関しては、下記のレポートが詳しいです。
参考:P2Pファイル共有プロトコルBitTorrent、その仕組みと略歴、TRONファウンダーのの買収、トークン発行まで。
Chain(チェーン)=Stellarが買収
2018年9月にはStella(ステラ)が技術スタートアップのChain(チェーン)を買収しました。Chainは、2014年に創業をした企業で、VISAなどを顧客に技術提供をしている企業です。買収金額は正確には非公開ですが、4,000万ドル(約44億円)以上のバリュエーションであったとコメントしています(参照)。
Bithumb(ビッサム)=BK Globalが買収
韓国の主要取引所の一つであるBithumb(ビッサム)は、2018年10月にシンガポールを拠点にするBK Global Consortiumに買収をされました。買収金額は3億5,300万ドル(約390億円)です。同取引所の株式をそれまでの筆頭株主から51%取得しています。
(後編へつづく…)
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・2019年の米証券取引委員会(SEC)は仮想通貨規制にどう動くのか?
・仮想通貨市場は低迷も企業の合併買収の件数は倍増、ビジネスは急拡大(2018年10月公開)
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