Binance Smart Chainの拡大戦略を5つに整理

2020年9月に世界最大の取引所バイナンスによる新しいブロックチェーン「Binance Smart Chain(バイナンス・スマート・チェーン)」がローンチしました。

関連:世界最大の取引所バイナンスによる新しいブロックチェーン「Binance Smart Chain」とは?

本コラムでは、ローンチから4ヶ月が経過したBinance Smart Chainと、Binance Smart ChainのDeFi(分散型金融)拡大戦略を5つの要点に整理します。

EVM互換によるアプリケーションの取り込み

まず第一にイーサリアム(Ethereum)と同様のバーチャルマシンを保持していることにより、Binance Smart Chainではイーサリアムのスマートコントラクトをそのまま移植できます。なお正確にはBinance Smart Chainはイーサリアムクライアントをそのまま元にしているため、EVM互換というよりほとんどイーサリアムそのものです。これによってイーサリアムの開発言語・infuraやRemixなど主要な開発ツール、MetaMask(メタマスク)などのウォレットはそのままエコシステムに取り込めます。

ユーザーにとっても新しいウォレットをインストールすることなく、普段使っているMetaMaskから「ネットワークを追加」によるオプトインでBinance Smart Chainにアクセスできます。

Binance smart chain metamask

これによって開発者は新しい開発環境を学習する必要もなく、またイーサリアムのアプリケーションの移植も容易です。後述しますが、Binance Smart Chainにはイーサリアムのコピーアプリケーションも多く存在します。

インターオペラビリティ

Binance Smart Chainの拡大戦略の他の視点としては、他のブロックチェーンとインターオペラビリティが可能な点です。執筆時点で最もこれを活発に実行しているのはKava ChainとBinance Chain(Binance Smart Chain)間の通信です。このような取り組みが今後さらに活発になるのであれば、エコシステムの拡大が見込める可能性があります。

ただし、Binance Chainのブロックチェーンの相互通信は、COSMOSで規格化されたIBCではなく独自の実装になっている点は注意が必要です。

戦略的DeFiファンド

バイナンスは総額1億ドル(約104億円)のDeFiアクセラレータファンドを2020年9月に組成しました。このファンドは、Binance Smart ChainのDeFiに投資をします。

Launch Pool

中央集権型取引所のバイナンスのサイト内には「Launch Pool」というページがあり、このページ上ではユーザーがビットコイン(BTC)やバイナンスコイン(BNB)等のトークンをステーキングすることでBinance Smart Chain上のプロジェクトのトークンが付与されるプログラムがあります。

また、このプログラムに採択されたプロジェクトはバイナンス上で上場もします。恐らくプロジェクト側はこのプログラムのためにトークンを拠出して、その割当が実質的な上場費用になっていますが、これによってプロジェクトはバイナンスが保有する豊富なアカウントにアプローチができます。加えてBinance Smart Chainの拡大にも寄与します。

launch pool

バイナンスカストディのアセット群

Binnace Smart Chainではさまざまな他のブロックチェーンの資産が、バイナンスがカストディする形式でトークン化されています。イーサリアム上でBitgoがカストディしてWBTCが発行されているのと同じ形式です。

異なる点としてはBTCやETH、DOT、LTCなどから主要なERC20トークンまで非常に多くの銘柄がBinnace Smart Chain上でIOUとしてトークン化されていることです。実際にどれだけのBTCをカストディしていて、そのカストディ残高とIOUトークンが一致しているかはProof of Assetsのページで各公開鍵とともに照合できるようになっています。

バイナンスのproof of assets

まとめ

いかがだったでしょうか?Binance Smart Chainはまだローンチしてから間もないですが、成長しているブロックチェーンです。 また、中央集権取引所がDeFiに向き合う事例としても興味深いでしょう同社および、Binance Smart Chainの今後の展開が注目されます。

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