国際決済銀行(BIS)が1月23日に公表した調査リポートによると、世界人口の20%相当の国の中央銀行7行が、3年以内に中銀発行のデジタル通貨(CBDC)を流通させる可能性があると報告しています。これら中銀がどこの国か明らかにされていませんが、特に新興市場経済諸国(EME)の中銀が強い意欲を持ってCBDCの発行準備を進めていると指摘されています。
中央銀行66行の10%が1-6年中にCBDC発行へ
「時期到達迫る ブロックチェーンに基づく中銀発行デジタル通貨CBDCの調査結果」と題するリポートは、2019年に実施した調査結果です。今回の調査に参加した中銀は世界で66行ありました。その内、21行が先進国、45行が新興経済国(EME)の中銀であり、世界人口の75%、世界全体の経済生産高の90%を占めています。
リポートによると、中銀の10%が短期的(3年後)展望で、20%は中期的(1-6年)展望で汎用目的のCBDCを発行するだろうと予測されています。その数は前年比倍増しました。一方、中銀の70%は予見しうる将来、どのようなタイプのCBDCも発行する意図はないことが分かりました。
BIS調査リポートの主な結果は以下の通りです。
- 現金決済は下降傾向にある(キャッシュレスへの移行)。
- イノベーションと技術的進歩に応じて、現金を補完し、代替するものとしてCBDCを考慮する中銀が増えている。
- CBDCに対する調査は進んでいるが、この調査を実験あるいは試験に至る動きまで大きく広がってはいない。
- ほとんどすべての中銀はそれぞれの法域内で実行する意義を理解する努力を続けている。
- 意欲的な中銀は試験的設計に移行している。
中銀の80%はCBDCに何らかの形で関わり、49%は概念実証段階に
これら中銀のさまざまな計画は、全体としてスピードアップしており、18年調査と比較して、以下のようにより多くの中銀がCBDCに関わっています。
- 中銀の80%(前年は70%)は、何らかの形でCBDC関連の作業に関わっている。
- 半数の中銀が卸売および汎用双方のCBDCを考量している。
- 40%の中銀は、概念的研究段階から実験もしくは概念実証にまで進展している。
- 10%の中銀が、パイロットプロジェクトを開発済みである。
- パイロットプロジェクトを開発済みの中銀はすべてEME諸国である。
19年以来ステーブルコインへの関心高まる
19年リポートは18年のそれと比較して、国内もしくは国際的な決済に仮想通貨を利用する特に新しい動きを開始した中銀はありません。しかし、約60%の中銀が、ステーブルコインが通貨と金融の安定に与える影響に関心を持ち、調査していることが分かりました。一方でリポートは、ステーブルコインが特に世界的に拡散すると、数多くのリスクが起こりうると注意喚起しています。
リポートによると、民間企業が発行するデジタルトークンが及ぼすインパクトを調べている中銀はそれほど多くはありません。しかしBIS は「ステーブルコインは、仮想通貨が破綻するようなところで広く採用される可能性がある」と述べ、「ますます多くの中銀が、金融システムの外でそのようなリスクを評価するとともに、CBDCにかかわるシステムを向上する方策を探ろうとしている」と現状分析しています。
世界の人々は、より速く簡便な決済方法を望んでいます。リトアニアの中銀は19年12月、「単一の法域内の活動では、安全で信頼できる効率的な国際決済手段を求める世界の人々のニーズに対応できないが、現代技術はこのニーズに応えることができるようだ。複数通貨によるCBDCという考え方は、共同で深く分析する価値がある」との報告書を公表しています。
参考
・Impending arrival – a sequel
to the survey on central bank digital currency
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