民間ソリューションも排除しないCBDC

欧州中央銀行総裁のクリスティーヌ・ラガルド氏は、欧州中央銀行(ECB)がデジタル通貨で積極的な役割を果たすことを望んでいると発言。民間が発行する仮想通貨やデジタル通貨についても排除しない意向を示した。

中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)について、発行するためのコストや利便性について査定も継続する意向を改めて示しつつも、CBDCがユーロ圏での迅速で効率的な小売決済のための民間ソリューションを妨げたり、排除したりしてはいけないと強調した。

CBDCのメリットの一つには、現金が廃れてきても、中央銀行のお金を使うことを可能にすることがあるとの考えがあるという。

なお、CBDCの調査については、CBDCが既存の金融セクターに大きな影響を与える可能性があるため、今後、その実現可能性やメリット、意図しない副作用を防ぐ方法などについても詳細に検討していく予定であるとした。

ECBは2019年末に各国中央銀行と緊密に連携して、ユーロ圏のCBDCの実現可能性をさまざまな形で調査する専門タスクフォースを設立しており、中国の動きを見て活動を活発化させた背景がある。

ラガルド総裁は、仮想通貨のメリットも認識

CBDCへの関心は、Facebookが主導するステーブルコイン「リブラ」と中国のデジタル人民元が発表されてから国際的にますます高まった。

ほとんどの中央銀行や政府は、仮想通貨や民間デジタル通貨、CBDC、法定通貨という存在が排他的で競合関係にあると認識している。

中国人民銀行(PBOC)は何年もの間「デジタル人民元」の発行計画に取り組んできたものの、民間イニシアチブが市場シェアを奪う可能性があることを懸念して最近になるまで、その計画を公表してこなかったと伝えられている。

有識者の見解としては、イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は昨年、様々な法定通貨を土台としたCBDCが、世界の主要な準備通貨として米ドルに取って代わることが有り得る点が重要になると発言。一方のIMFチーフエコノミストのGita Gopinath氏は、CBDCを含むデジタル通貨には、重要なインフラストラクチャがなく、米ドルに対抗するには、国際的な支持が未だ欠けていると指摘している状況だ。

その中でも、ラガルド総裁は、民間関係の仮想通貨やデジタル通貨にも前向きな見解を示す人物として知られている。これらの通貨は従来の金融システムが持つ多くの課題を改善できるとして、ユーザーに新しいリスクをもたらす可能性もこれまでにも認めている。

一方で、必要な規制については譲らない方針は一貫している。

具体的には、リブラなどのグローバルステーブルコインのケースでも、規制当局が関連するリスクを完全に査定するまで運用を開始すべきではなく、国境を越えて普及する仮想通貨については、各国が協力し調整する必要があると論じている。

リブラへの厳しい見解を示す背景には、Facebookが独自のソーシャルメディアを利用して、競争上、不公平に有利になってしまう可能性がある考えがあるという。

おすすめの記事