バイナリースター株式会社主催のビジネスマッチングイベント「BUSINESS BLOCKCHAIN EXPO 2020 秋」が9月26日、東京・銀座のキラリトギンザで開催された。
日本のエンタープライズ領域の課題解決のために、ブロックチェーン技術を活用した提案や、各産業に適したソリューションなど最新事例が共有された。また同イベントは、ブロックチェーンに関わるコミュニティや著名人、有識者間の国境を超えた関係構築や業界横断的な情報共有体制の確立という役割も担っており、国内におけるさらなるビジネス創出が期待されている。
コロナ禍ということもあり、登壇セッションは動画配信で行われたが、seedラウンド後半に差し掛かっているプロジェクト主体者のブロックチェーンへの期待感や可能性に対する熱弁もあり、多いに盛り上がる結果となった。今回は本イベントに登壇された国内外29企業の中から2プロジェクトの事例を紹介する。
ブロックチェーンを活用したCTIAのプロジェクト
CTIAのセッションでは「サプライチェーンに透明性とセキュリティ向上をもたらすソリューション」と題して、CTIAが開発する「Traceability as a Service」の紹介をはじめ複数社と連携しサービス構築を進める各プロジェクトについて解説が行われた。近年注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するための業務効率改善ソリューションを中心にサービスの構想を進めているようだ。中でもタスクトークン(管理者が管理していた業務フロー工程をトークンで管理)を活用したマネジメントや監査業務自動化システムなどCTIA独自のサービスなどについて解説が行われた。
監査業務自動化の主な効果
- タスクトークンによるワークフロー指示で管理業務を効率化・自動化
- ライブタイムで業務進捗を可視化できれば監査業務負担を抑え、人日による出向軽減
- 基幹業務の自動記録
上記の訴求効果などにより、内部統制把握や監査依頼企業の基幹業務など社内の新しいIT運用方法の確立が期待される。
他にCTIAが進めているプロジェクトは以下の通り。
- BlockSign(ブロックサイン):ブロックチェーン技術を活用した電子契約システム
- サプライチェーン保険事業:ブロックチェーン技術を活用したサプライチェーン管理システム
- 電力取引プラットフォーム事業:ブロックチェーン×エネマネシステム
第一次産業へのブロックチェーン導入に注目
IPA(情報処理推進機構)は、IT社会のマーケット調査から規定ガイドラインに沿った的確な指針の設定など行っている団体である。近年は、ブロックチェーンへの将来的な可能性や社会実装の展望を見据え、マーケット調査に力を入れているようだ。
特に契約業務におけるワークフローの効率化やコスト削減へのアプローチ、サプライチェーンの中で発生する企業間で協調する必要がある場面などにおいて高い効果が発揮されることに注目。現在は酪農業、農業現場など第一次産業の上流工程において、ブロックチェーン技術の導入にも注目しており、消費者が牛乳や農作物を安心して購入できるよう、流通物へのトラッキング機能や品質管理状態を可視化するための仕組みなどを対象としたスコープを実施中。さらにスケールするための仕組みなど調査を進めている。
同機構のブロックチェーン推奨事例は以下の通り。(参照)
- ブロックチェーンの高付加価値創出のステージを見据える
- 競争領域のデータを活用すべく、競合他社とのコンソーシアムを組織する
- コンソーシアムに蓄積されるデータを活用すべく、フェデレーションラーニング等の他の技術とブロックチェーンを融合させる
「なぜブロックチェーンを使うのか?」
国内におけるブロックチェーン事業は今後ますます加速していくだろう。しかし、その際に必要な点として担当事業者は「なぜブロックチェーンを使うのか?」という大多数からの問いに対して明確な答えを持ち、ビジョンをしっかりと周りと共有した形でコンセンサスを取ることが重要な要素となるのではないか。その点に注目しながら今後の業界動向について深く考察していきたい。
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