米国に限らず世界の準備通貨として数十年も支配してきた米ドル。JPモルガン・チェースは今年5月、中国など多くの中央銀行が進めているデジタル通貨が、米ドルの力を脅かしているとの報告書を公表していました。
JPモルガンは米ドル支配の崩壊を予測
報告書はJP モルガンのアナリストたちが分析した結果であり、「デジタル通貨の破壊力によって米国以上に失う国はほかにはない」と断じて、ドル支配に警報を発しました。報告書は世界の準備金としての米ドルが今すぐにも崩壊するとはあり得ないとしながらも、デジタル技術と比較して処理が遅くコスト高のSWIFT(国際銀行間通信協会)による国際決済ネットワークを含めて、ドル支配下システムの瓦解はありうると警告しています。
米ドルは第二次世界大戦後、事実上世界の準備通貨になりました。世界の圧倒的多数の中央銀行がドルを保有し、世界通商の大多数はドル紙幣で実行され、ドルは過去数十年にわたり多くのその他外国通貨より有利な役割を維持してきました。
国際決済銀行(BIS)もCBDC利用の価値が高まっているとの報告書
国際決済銀行(BIS)は4月、新型コロナウイルスのまん延は、現金決済手段が嫌われ、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)が取って代わることが合理的であるとの報告書を公表しました。
BISの報告書は「弾力的かつ利用しやすい中央銀行が運用する決済手段のインフラストラクチャーは、CBDCを含めて迅速により優れたものになることができる。新型コロナウイルスのパンデミックは、CBDCの需要を一段と鮮明にし、さまざまな決済手段を利用することの価値や、幅広い脅威に耐える決済手段の必要性を浮き彫りにした」と述べています。
金融専門家やエコノミストはドル支配の終焉を警告
イングランド銀行、カナダ銀行の総裁を歴任したエコノミストのマーク・カーニー(Mark Carney)氏は、昨年の20カ国財務相・中央銀行総裁会議で、ドル支配の終焉は、特に発展途上国市場など一部諸国の経済に影響を与えるかもしれないと次のように指摘しました。
「金融構造が新しいデジタル通貨をめぐって発展すれば、世界の金融状況に与えるドルの影響は衰え、クレジット市場におけるドル支配に取って代わることになる。世界の金融サイクルにおける米国の影響を減じることによって、それは発展途上国への資本の流れのボラティリティを減らす助けになる」。
一部の投資家は、現在進行中のリセッションや中央銀行の対応の長期的インパクトを把握しようと努めており、ビットコインはマクロ経済上の役割がますます理にかなっていると理解しつつあります。ヘッジファンドのビリオネア投資家で知られる米国のポール・チューダー・ジョーンズ(Paul Tudor Jones)氏は、法定通貨の価値の低下にヘッジするため、個人としてだけでなくプロフェッショナルとしてもビットコインに投資していると明言しています。
参考
・BIS Bulletin No3
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