今年6月に事実上の破産となった仮想通貨のカストディアンである”プライムトラスト(Prime Trust)”が8月に米連邦破産法11条、通称”チャプターイレブン(Chapter 11)”を申請し、再生手続が進行している。そんな中デラウェア州破産裁判所に提出された書類によると、プライムトラストは顧客資産100億円以上の使い込みの他にも、カストディアンであるにも関わらず顧客資産を勝手に使い込みをして一夜にして価値が0となったテラフォーム・ラボのUST(Terra USD)に投資をし、合計で10億円以上の損失を出していたことが判明した。

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仮想通貨カストディアンが顧客資産を勝手に使用して投資

仮想通貨における"カストディアン(Custodian)"とは、仮想通貨投資家やファンドからビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を預かり、ハッキングや秘密鍵の紛失などリスクを最小限にする預かりサービスを指す。

仮想通貨においては米最大手の仮想通貨取引所、コインベース(Coinbase)からさらには老舗銀行のBNYメロンなどが2020年から2021年に数多く参入しており、プロフェッショナルとしての資産管理委託を行えるサービスとして知られている。デラウェア州破産裁判所に提出された資料によると、顧客資産使い込みによりチャプターイレブンを申請して破産したプライムトラストは預かり顧客資産を使い込み、テラフォーム・ラボが開発、提供していたアルゴリズミックステーブルコインの”UST(Terra USD)に投資し、”顧客資産から600万ドル、企業資産から200万ドルで合計で約11.7億円の損失を出していたことが判明した。

*現在速報のため追記中。最新の更新は@bokujyuumaiよりお知らせします。

レンディングと異なるカストディサービス

基本的に仮想通貨におけるカストディサービスとは上場投資信託のETFにおける現物投資型の証券の裏付けとなるコモディティなどを管理したりするいわば”資産管理のプロ”であり、管理手数料を支払って安全に保管してもらうことを目的としている。

つまりカストディアンではレンディング(融資などの貸付や借入)業務は行わず、安全に仮想通貨を保管することをサービスの主としているわけだ。近年において証券などのカストディアン銀行では証券貸付などの多くのサービスを提供しはじめており、より広域の投資家サポートサービスとなってきている。

対してプライムトラストが行ってきたのはカストディアンを名乗った”レンディング”であり、実態としては本来破産したブロックファイ(BlockFi)やセルシウス(Celsius)のような”顧客から資産を預入てもらい、金利を支払うことでその借入した仮想通貨を運用する”というような事業を行っていたということになる。

このようなレンディングでは貸付先の仮想通貨レンディング企業が運用するというリスクを取る代わりに高い金利を顧客が得ているのに対し、プライムトラストは顧客資産を勝手に使い込みをし、レンディング企業以上の莫大なリスクを取っていたということになる。このような事例は今後の仮想通貨カストディアン事業における規制強化につながる重大な事件であると言えるだろう。

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