どうも墨汁うまい(@bokujyuumai)です。仮想通貨(暗号資産)のこれまでの歴史では、新たな仮想通貨トークンをローンチする際にICO(イニシャル・コイン・オファリング)が長年主流となってきていましたが、2020年からはエアドロップが主流となっています。
一方でX(旧Twitter)ではこのエアドロップに賛否両論の議論がかわされており、一部ではスキャム(詐欺)やゴミというような過激な意見も飛び交っています。
本稿ではエアドロップをこれまでのICOの方式と比べた際にどう違うのかについてわかりやすく解説を行います。
仮想通貨のエアドロップ(Airdrop)とは?
仮想通貨のエアドロップとは、「プロジェクトやプラットフォームを利用していたユーザー、またはそれに関連するプロダクトのユーザーに対して新規発行したトークンを付与すること」を指します。
エアドロップの歴史は古く、イーサリアムが仮想通貨市場で一般的になる前からユーザーに対して直接付与されるような例が2016年までは多くありました。その後イーサリアムのスマートコントラクトでより条件を絞ってエアドロップが可能となり、2020年からはDeFi(分散金融)の普及により数万円からときには数千万円規模のエアドロップがされるようになりました。
これにより近年ではエアドロップを狙った「エアドロップファーマー」が一般的となり、賛否両論の意見が見られるようになったのです。
エアドロップ vs ICO
一方でエアドロップという方式が取られるようになる以前は、トークンを一定金額でローンチ前に売却して資金調達を行うようなICO(イニシャル・コイン・オファリング)形式が一般的でした。ビットコインやZcashのようなローンチ前からICOを行っていないいわゆる「フェアローンチ」しているブロックチェーン以外は基本的にほぼすべてがこのICOを行っているということになります。
このICOにもたくさんの形式があり、大きく下記の2つに分けられるでしょう。
・運営が100%トークンの保有権利または売却権利を持っているもの
・発行数の数10%をICOで資金調達を行い、新規発行で残りを分配するもの
前者はリップル社のXRPなどが知られており、後者ではイーサリアムがそれにあたります。さらにイーサリアム上で2016年から2018年にかけてICOを行っていたいわゆる「ICOプロジェクト」では運営保有分とICO売却分という形が一般的でした。
それに対してエアドロップでは「運営保有分は1~2割程度、残りをユーザーにエアドロップし、5割などをプラットDAO基金として管理」というのが一般的となっています。
ICOでは売却したトークンの利益は100%運営に入るのに対し、エアドロップではユーザーに付与された部分は100%ユーザーに利益が帰属するという大きな違いがあります。
トークンの取り扱い理由の変化
わかりやすく言えば、大半のICOはプロジェクトが中心であり、「ユーザーはプロトコルの外の利用者」という立ち位置であったと言えます。
というのも例えば、発行したトークンの50%を運営費として運営が保有し50%を資金調達として売却するということは、発行したトークンの利益を100%運営側が保持するということになります。
これらの運営が保有していたトークンは基本的に開発者や社員の報酬に割り当てられることが一般的であり、ICOで調達した資金で日頃のプラットフォーム費用を賄い、広告や団体の維持に使用されてきたのがこれまでの仮想通貨でした。
一方でエアドロップの場合は、基本的に「ガバナンス」つまり開発や維持は運営が行うものの、全体的な意向は「ユーザー」に託されています。ブロックチェーンにおける重要な分散性や公平性という観点からエアドロップは、運営が中心となるICOとは異なっており、優れているということがわかるでしょう。
エアドロップが主流となった理由
また現在のエアドロップの形式はICOと比較して分散が容易であり、イーサリアムL2のアービトラム(Arbitrum)の例を参考にすると非常にわかりやすいです。
アービトラムのARBトークンでは下記の割合になっています。
11.62%:ユーザーへのエアドロップ
17.53%:シードラウンドでの投資家への配布
26.94%:運営及びアドバイザー
42.78%:DAO基金
1.13%:アービトラムエコシスムDAO
運営が有するコントロールは約25%であり、開発支援を受けるために資金調達した初期投資家に対しての付与を含めても43%となっており、過半数以上がユーザーまたはDAOでだれの支配下でもないということになります。
さらに重要なのはこのエアドロップされたARBトークンを利用し、DAO基金にある約43%の資金をアービトラムの成長のために提案と投票の合意で利用することができるという点でしょう。
ICOでは主にユーザーに権限はなく、資金の使い道は基本的に売却となっているのです。
このようなエアドロップのガバナンスの形式では、「アービトラム上のDeFiやNFTプロジェクトに対して助成金(Grants)を与え、さらなるユーザー獲得のための報酬として付与する」という形式が一般的となっています。
つまりユーザーはアービトラム上のプロジェクトを利用すると、ガバナンスによって付与されたARBトークンをインセンティブ報酬として受け取ることができ、そのままガバナンスへ参加することができるということを意味します。
従って分散性と公平性の観点からエアドロップでエコシステム参加者に付与するという点では、売却や利益が優先されるICOの参加より健全であると言え、ICOが廃れてエアドロップが増えた理由がわかると思います。
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