ステーブルコイン発行者のゴールドのトークン化計画、コモディティのトークン化によるメリットとは?

アメリカのビジネス雑誌のフォーチュン(Fortune)の報道によると、ニューヨークに拠点を置くPaxos(パクソス)社は、貴金属のトークン化に取り組んでおり、2019年内にゴールドなどのコモディティに裏付けをされたトークンのローンチを目指すことが明らかになりました。

ゴールドのトークン化の計画

Paxos社は、itBitという取引所を運営する企業として2012年に設立されましたが、最近では、ステーブルコインのプレーヤーとしての認知のほうが広まっているでしょう。

2018年5月には、6,500万ドル(約71億6,000万円)の資金調達をRREベンチャーズ(RRE Ventures)やリバティ・シティ・ベンチャーズ(Liberty City Ventures)などから行っています。

同社は、ニューヨーク州で信託会社の設立許可を取得しており、金融資産の保管など銀行と同等の権限を有しています。Paxosのステーブルコインである Paxos Standard(PAX)は、バイナンス(Binance)をはじめとした複数の取引所で売買されています。

こういったステーブルコインの発行体企業が、ゴールドなどを手掛けようとする事例は非常に多く、まだ実現はしていないですが、TrueUSDなどを発行するトラスト・トークン(Trust Token)も同様の目論見をしています。

しかし、Paxosが2019年内にこれを実現すると、ステーブルコインですでに実績があるプロジェクトの中ではこれを一番早く手がけるプレーヤーになる可能性があるでしょう。事業を行うことに必要な認可も、信託ライセンスであり、運用やビジネスモデルが比較的似通っているからこれは自然の流れです。

ステーブルコイン発行者のビジネスモデルについては下記の記事が詳しいです。
参考:Stablecoinのイシュアーのビジネスモデル。このレイヤーに何故投資が集まり、どのように投資は回収されるか

ステーブルコインの事業者以外にも、ゴールドのトークン化は、例えば、 ノウェム(Novem)など複数社が計画しています。

ゴールドなどのコモディティがトークン化すると享受できるメリット

さて、ゴールドなどのコモディティがトークン化することで、ユーザーなどが享受できるメリットはなんでしょうか。

主には下記が挙げられます。

  1. クロスボーダーを含む移転が容易になる。
  2. 24時間365日、送金やトレードができる。
  3. 分割が容易になる。
  4. スマートコントラクト互換になる。

1-3は説明不要でしょうが、4に関して解説をします。金などを信託し、イーサリアム(Ethereum)などのブロックチェーンに取り込むことで、そのトークンはスマートコントラクトでトランザクションを執行できるようになります。

つまり、例えばメイカーダオ(MakerDAO)やコンパウンド(Compound)などのシステムに技術的に組み込めるようになるということです。

スマートコントラクトの金融システムの中で、担保資産としてゴールドを預託したり、ゴールドをスマートコントラクトでレンディングをして金利を得ることなどが想定されます。

これはクリプトの文脈でも新しいユースケースが生まれる可能性がありますし、発行体を信託企業として捉えれば、信託保全会社としてこれは新しいビジネスチャンスであると言え、だからこそこの分野が注目されています。

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参考
Fortune


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