
2018年の10月にはFacebookが約3,000万人のユーザー情報がハッキング被害にあったと報告があり、日本でも 2019年3月にトヨタの販売子会社への不正アクセスがあり合計310万件の流出の可能性があると報道されました。
2018年の12月には国税庁から委託を受けていた企業が無断で再委託をするなどの事件も起きています。これを受けて最近個人情報に関するニュースをよく聞くと感じられる方も多いのではないでしょうか。
今回は個人情報のあり方について既存の仕組みに対して課題を感じ、それを解決しようとするブロックチェーンプロジェクトのブロックスタック(Blockstack)について解説します。
出典:Blockstack公式より
Blockstackとは?
Blockstackを一言で表すと、「ユーザーのデータはユーザー自身が保管している分散型アプリケーションのプラットフォームおよびネットワーク」です。
これまでのサービスでは、ユーザー情報(名前やID、パスワード、メールアドレスなど)やそれに基づく情報(購入履歴や閲覧履歴など)は、そのサービスを提供している企業のサーバー上に保管されていました。
しかしBlockstackで作成されたサービスを利用した時に生まれたデータは、全てユーザー自身が保管する事となります。また、ユーザーはそのデータを保管する場所を選択する事ができ、サービス提供企業や他のユーザーはそのユーザー情報を読み取るのに承認が必要です。
分散型のインターネット時代へ
Blockstackは元々、「Onename」というブロックチェーンに直接自分のID情報を書き込むというデジタルIDサービスで、アイデンティティの管理を行っていました。
しかし、ビットコインを元に作成されているという事で、ブロックのデータ容量やデータ更新に時間がかかるなどのブロックチェーン特有の技術的な問題がありました。またIDを作成してもそのIDが使える場所が少ないという問題にも悩まされたそうです。そこでBlockstackはより汎用な分散型アプリケーションやインターネットの開発へと方向性を変えます。
Blockstackの共同創業者であるライアン・シェイ(Ryan Shea)氏は2017年に現在のインターネット社会における問題点を次のように指摘しています。
- データが企業のクラウドサーバー上に保管されている点
- アプリからアプリへデータを移行する事が難しい点
- 中央集権型のプラットフォームが利用法をコントロールする点
こういった状況をふまえてBlockstackは下記の問題を解決する構想を立ています。
- データが漏えいしたり盗難されたりする可能性がある
- プラットフォームでの独占が可能になってしまい業界ないし企業間の競争力低下を招いている
- 何か不具合があった場合サービスを提供している企業のコントロール下にいるためユーザー側から対処ができない
シェイ氏は続けてDapps(分散型アプリケーション)がそれらの問題を解決する方法だと話しています。これはデータが自分の手元やコントロール下にあれば上記の問題に対処できるという事で、この考え方がBlockstackを理解する上で重要な部分になります。
Blockstackでユーザーは何をできるのか?
Blockstackはユーザー自身が自分のデータを持つ事に加えて、開発者にとってユーザーが自分のデータを持つためのDappsを作りやすい環境やプラットフォームの開発にも力を入れています。
Dappsの開発者はある基準をクリアすると、Blockstackから毎月報酬が貰える仕組みがあったりアプリケーションを作成するための見本が沢山あるなどユーザーのみならず開発環境にも重点を置いています。
出典:Blockstack公式より
実際、さまざまなアプリケーションがBlockstackを利用しおり、例えばグラファイト(Graphite)やビットパトレオン(BitPatreon:応援したい人に定額課金して、リターンが得られるPatreonというサービスのビットコイン版)にもBlockstackが利用されています。
ユーザー側からはBlockstackのIDを作っておけば普段サービスを使う時にFacebookアカウントでの個人認証をするようなイメージでBlockstack認証をすることができます。
個人情報のあり方を大きく変える可能性
最後にBlockstackの特徴をまとめると、下記のようになります。
- ユーザーの情報はユーザー自身が持てる
- ユーザーのデータは、承認されないと読み取る事ができない
- 開発者環境もこれから充実していく
今後の個人情報のあり方を変える可能性を秘めたプロジェクト「Blockstack」にこれからも目が離せそうにありません。非エンジニアでも頑張れば試せそうな超初心者向けDapps開発ガイドのようなものもあるので、興味のある方は使ってみたり、IDを作ってみるとより理解しやすいかと思います。
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参考
・Blockstack
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