
ソフトバンクとARK、ステーブルコイン発行企業テザーに出資を検討か―最大200億ドル規模の資金調達で企業価値5000億ドルへ【2025年最新版】
概要
ソフトバンクグループとARK Investment Management(アーク・インベストメント・マネジメント)が、世界最大のステーブルコイン「USDT」を発行するテザー・ホールディングス(Tether Holdings)の大型資金調達ラウンドへの参加について協議していることが、2025年9月26日のブルームバーグ報道で明らかになりました。
この取引が実現すれば、テザーの企業価値は最大5000億ドル(約74兆7600億円)に達し、OpenAIやSpaceXといった企業と同等の評価を受け、世界で最も価値の高い非公開企業の一角に入る可能性があります。
2025年9月30日時点の最新状況:交渉は初期段階にあり、投資家候補はデータルームへのアクセスを許可され、詳細な財務レビューを進めています。キャンター・フィッツジェラルドが主幹事を務め、複数の著名投資家が出資を検討しています。
資金調達の詳細
調達規模と株式売却比率
テザー社は私募を通じて150億~200億ドル(約2兆2400億~2兆9900億円)の資金調達を目指しており、これは発行済み株式の約3%に相当します。
この資金調達が成功すれば、テザーにとって初の大規模な外部資本調達となり、同社の歴史的な転換点となります。
企業価値の算定根拠
200億ドルの調達額が発行済み株式の3%に相当することから逆算すると、テザーの企業価値は約5000億ドルと評価されることになります。この評価額は、以下のような要因に基づいています:
財務的根拠
- 圧倒的な収益性:2025年第2四半期に49億ドルの純利益を計上(前年同期比277%増)
- 上半期累計利益:57億ドル(2024年上半期比9.6%増)
- 年間利益見込み:このペースで推移すれば年間100億ドル超の純利益
- 従業員一人当たり利益:約200名の従業員で年間130億ドル規模の利益(2024年実績)、世界最高水準
資産基盤の健全性
- 準備金の充実:負債1,571億ドルに対し準備金1,625億ドル保有(54億ドルの超過準備金)
- 米国債保有額:約127億ドル(世界第18位の米国債保有者)
- ビットコイン保有:10万BTC超、約89億ドル相当
- 金保有:大規模な金資産による準備金の多様化
市場での圧倒的地位
- USDTの時価総額:約1,740億ドル(2025年9月時点、2024年の1,200億ドルから45%増加)
- ステーブルコイン市場シェア:約61.7%(2024年の44%から大幅増加)
- 取引量:1日の取引高が約700億~1,200億ドル、仮想通貨市場全体で最大
主幹事と投資家候補
主幹事:キャンター・フィッツジェラルド(Cantor Fitzgerald)
- ハワード・ラトニック氏(現商務長官)が長年CEOを務めた
- テザーの準備金の大部分を管理・カストディ
- トランプ政権との強固なコネクション
投資家候補:
- ソフトバンクグループ(Vision Fundを通じた投資を検討)
- ARK Investment Management(キャシー・ウッド率いる)
- その他複数の著名投資家(名前は未公表)
なぜソフトバンクとARKが注目するのか
ソフトバンクの投資戦略
ソフトバンクグループは、Vision Fundを通じてテクノロジー分野への大型投資を積極的に行ってきました。テザーへの投資は以下の理由で戦略的意義があります:
1. フィンテック分野の成長性
- ステーブルコイン市場:2025年時点で時価総額2,750億ドルを超え、前年比30%以上の成長
- グローバル決済市場:年間決済額数兆ドル規模の市場でのシェア拡大
- 金融インフラ:次世代の決済・送金インフラとしての地位確立
2. 収益性の高さ
- 営業利益率:推定80%超(従来の金融機関は10-30%)
- 資本効率:少ない従業員数で高収益を実現するビジネスモデル
- スケーラビリティ:デジタル資産の特性による高い拡張性
3. 規制環境の改善
- 米国GENIUS法成立:2025年7月にステーブルコイン規制が明確化
- トランプ政権の支援:仮想通貨に友好的な政策環境
- 国際的な規制整備:欧州MiCA規制など、グローバルな法整備の進展
4. ソフトバンクの既存ポートフォリオとのシナジー
- 決済分野:PayPayなどの決済サービスとの連携可能性
- AI投資:OpenAIへの300億ドル投資との補完関係
- データセンター:仮想通貨インフラとの統合
ARK Investの投資哲学
キャシー・ウッド率いるARK Investは、「破壊的イノベーション」に特化した投資戦略で知られています。テザーへの投資は同社の以下の投資テーゼと合致します:
1. 金融システムの革新
- 銀行システムの変革:従来の銀行を介さない国際送金
- 金融包摂:銀行口座を持たない人々へのアクセス提供
- 決済の効率化:リアルタイム・低コストの国際決済
2. デジタル資産の普及加速
- 機関投資家の参入:大手金融機関のステーブルコイン採用
- 企業財務への組み込み:資金管理手段としての利用拡大
- DeFi市場の成長:分散型金融サービスの基盤通貨
3. グローバル決済の効率化
- 国際送金コスト:従来の10分の1以下に削減
- 決済スピード:数秒~数分での国際送金実現
- 24時間365日対応:時間や曜日を問わない送金
4. ARKの既存投資との整合性
- Circle株保有:競合USDC発行のCircleにも投資
- Coinbase投資:主要仮想通貨取引所への投資
- ブロックチェーン関連株:包括的なデジタル資産エコシステムへの投資
ARK Investは80億ドル以上の運用資産を保有し、AI、自動運転、遺伝子編集技術などの革新的分野に投資を行っています。テザーへの投資は、同社のデジタル資産ポートフォリオをさらに強化する戦略的な動きと見られています。
テザー社の圧倒的な収益力
2025年第2四半期業績【最新データ】
テザー社は2025年第2四半期に49億ドル(約7,378億円)の純利益を計上し、過去最高を記録しました。この収益の内訳は以下の通りです:
収益構造の詳細
カテゴリー | 金額 | 説明 |
---|---|---|
経常的事業収益 | 31億ドル | 利息収入、手数料収入など |
金・ビットコインの時価評価益 | 26億ドル | 保有資産の価格上昇 |
評価損 | △8億ドル | 一部資産の価格下落 |
純利益 | 49億ドル | 前年同期比+277% |
収益成長の要因
1. 金利収入の拡大
- 米国債保有:127億ドル(世界第18位)
- 平均利回り:約4.5-5%(短期T-billsが中心)
- 年間利息収入:推定50-60億ドル
2. 準備金運用益
- 準備金総額:1,625億ドル
- 運用戦略:米国債、レポ取引、短期債券
- リスク管理:流動性の高い資産への集中投資
3. ビットコイン・金投資
- ビットコイン保有:10万BTC超(約89億ドル相当、2025年9月時点)
- 金保有:数十億ドル規模
- 2025年上半期評価益:26億ドル
4. USDT需要増加
- 新規発行:2025年上半期で200億USDT以上
- 発行手数料:新規発行・償還時の手数料収入
- 取引量増加:DeFi、CEXでの利用拡大
収益性の比較
テザーの収益性を他のテクノロジー企業と比較すると、その圧倒的な効率性が際立ちます:
企業 | 2025年予想純利益 | 従業員数 | 一人当たり利益 |
---|---|---|---|
テザー | 約100億ドル | 約200名 | 5,000万ドル |
約800億ドル | 約18万名 | 44万ドル | |
Apple | 約1,000億ドル | 約16万名 | 63万ドル |
Meta | 約450億ドル | 約7万名 | 64万ドル |
テザーの従業員一人当たり利益は、BigTech企業の約80-100倍という驚異的な数字です。
米国債保有で第18位の地位
テザー社は現在、米国債の第18位の保有者となっており、韓国やサウジアラビアといった国家を上回る保有額を誇ります。これは同社の準備金運用戦略の成果であり、以下のような意義があります:
国家レベルの米国債保有者との比較(2025年6月時点)
順位 | 保有者 | 保有額 |
---|---|---|
1位 | 日本 | 1.13兆ドル |
2位 | 中国 | 7,690億ドル |
15位 | 韓国 | 1,371億ドル |
18位 | テザー | 1,270億ドル |
20位 | サウジアラビア | 1,100億ドル |
戦略的意義
信頼性の向上
- 米国政府の信用力を背景とした安定性
- 規制当局からの信頼獲得
- 機関投資家へのアピール材料
流動性の確保
- 大量の償還請求への迅速な対応能力
- 市場ストレス時の安定性確保
- 準備金の即時換金性
収益の安定化
- 米国債利回りによる予測可能な利息収入
- 金利上昇局面での収益拡大
- 低リスク・安定収入の確保
政治的な意味
- 米国との経済的結びつきの強化
- 規制当局との良好な関係構築
- トランプ政権との協力関係の象徴
ステーブルコイン市場の現状【2025年最新】
USDT(Tether)の市場地位
USDTは時価総額約1,740億ドル(2025年9月時点)で、ステーブルコイン市場の約61.7%を占めています。2024年の1,200億ドル、市場シェア44%から大幅に成長しました。
主要ステーブルコインの比較(2025年9月時点)
ステーブルコイン | 時価総額 | 市場シェア | 前年比成長率 |
---|---|---|---|
USDT (Tether) | 約1,740億ドル | 61.7% | +45% |
USDC (Circle) | 約720億ドル | 25.5% | +20% |
USDP (Paxos) | 約50億ドル | 1.8% | +15% |
BUSD (Binance/Paxos) | 約40億ドル | 1.4% | △30% |
DAI (MakerDAO) | 約38億ドル | 1.3% | +10% |
その他 | 約232億ドル | 8.3% | 様々 |
合計 | 約2,820億ドル | 100% | +35% |
市場拡大の背景
ステーブルコイン市場が急成長している主な理由:
1. 機関投資家の参入加速
参入企業
- PayPal:PYUSD発行(2023年開始)
- Stripe:Bridge買収によるステーブルコイン事業強化(2024年)
- Citibank:独自ステーブルコイン検討中
- JPMorgan:JPM Coinの利用拡大
機関投資家の利用動機
- 国際送金コストの削減(従来の10分の1以下)
- 決済スピードの向上(数秒~数分)
- 24時間365日の送金対応
- プログラマブルな決済(スマートコントラクト活用)
2. 決済利用の拡大
主要利用ケース
- 国際送金:従来の銀行送金と比較して90%以上のコスト削減
- 企業間決済:サプライチェーン上のリアルタイム決済
- 給与支払い:海外リモートワーカーへの即時送金
- EC決済:オンラインショッピングでの利用増加
2025年の利用統計
- 日次決済額:約500-700億ドル
- 月間アクティブアドレス:約500万以上
- 平均取引額:約3,000ドル(企業間取引が多い)
3. DeFi市場の成長
DeFiでの利用
- レンディング:担保・貸付資産として
- 流動性提供:DEXでの流動性プール
- イールドファーミング:利回り獲得手段
- ステーブルスワップ:異なるステーブルコイン間の交換
DeFi TVL(Total Value Locked)
- USDTがロックされた総額:約200億ドル以上
- 主要プロトコル:Aave、Compound、Curve、Uniswap
4. 新興国での需要急増
利用が拡大している地域
- ラテンアメリカ:インフレ回避手段として
- アルゼンチン:年間インフレ率100%超でUSDT需要急増
- ベネズエラ:自国通貨不安定により日常決済で使用
- アフリカ:金融包摂の手段として
- ナイジェリア:海外送金の主要手段
- ケニア:M-Pesaに次ぐ決済手段として普及
- トルコ:通貨安対策として
- アジア:国際貿易決済で活用
- 中国:人民元の資本規制回避
- 東南アジア:クロスボーダー決済
新興国での利用データ(2025年)
- ラテンアメリカ取引量:月間100億ドル以上
- アフリカ取引量:月間30億ドル以上
- P2P取引の急増:LocalBitcoinsなどのプラットフォームで活発化
5. 規制明確化による制度化
主要国の規制動向
- 米国:GENIUS法(2025年7月成立)
- 欧州:MiCA規制(2024年施行)
- 日本:改正資金決済法(2023年施行、継続的改善)
- シンガポール:PSA(Payment Services Act)の整備
- UAE:仮想資産規制法(VARA)の施行
投資実行への課題と展望
交渉の現状(2025年9月30日時点)
現在の交渉はまだ初期段階にあり、具体的な投資額や条件については確定していません。関係者によると、以下の要素が検討されています:
検討中の主要項目
投資条件
- 投資金額の調整:150億~200億ドルの範囲内での最終決定
- 株式保有比率:3%の売却株式をどう配分するか
- バリュエーション:5000億ドルの企業価値評価の妥当性検証
- 投資家権利:情報開示権、拒否権などのガバナンス権利
デューデリジェンス
- 財務監査:BDO会計事務所による四半期監査の検証
- 準備金検証:1,625億ドルの準備金の実在性確認
- 法的リスク:過去の規制問題と係争案件の評価
- 運用体制:200名規模の組織での大規模オペレーション検証
ガバナンス構造
- 取締役会への参画:投資家としての経営参加の可能性
- 監査・報告体制:四半期報告の頻度と内容
- 意思決定プロセス:重要事項の決定方法
- Exit戦略:IPOやセカンダリー市場での売却可能性
テザーCEOの発言と矛盾
パオロ・アルドイノCEOの公式コメント
- 2025年9月24日のX(旧Twitter)での投稿:「選定された著名投資家グループからの資金調達を検討中」
- 具体的な投資家名や金額は明言せず
Bo Hines氏(USAT CEO)の発言
- 2025年9月のソウルカンファレンスで「追加資金調達の予定はない」と発言
- ただし、これはUSAT(米国向けステーブルコイン)に関する発言の可能性
情報の錯綜
- 異なる発言が報じられており、交渉の不確実性を示唆
- 投資家候補へのデータルームアクセスは確認されており、何らかの協議は進行中
- 最終決定には至っていないが、完全に中止されたわけでもない
規制環境の追い風
米国でのGENIUS法成立により、ステーブルコイン規制が明確化されたことが、今回の大型資金調達を後押ししています。
GENIUS法の主要内容(2025年7月成立)
発行者の要件
- 資本要件:最低10億ドルの資本金
- 準備金:1:1の完全準備、流動性の高い資産での保有
- 監査:四半期ごとの独立監査義務
- ライセンス:連邦レベルでの発行ライセンス取得
消費者保護
- 償還保証:保有者の償還請求への即時対応義務
- 透明性:準備金構成の定期的な開示
- 分別管理:顧客資産と会社資産の厳格な分離
規制の効果
- 機関投資家の参入障壁が低下:明確なルールによりコンプライアンス体制構築が容易に
- コンプライアンス体制の整備が進展:業界全体での標準化
- 長期的な事業の安定性が向上:規制リスクの大幅な低減
トランプ政権との関係強化
Bo Hines氏の役割拡大
経歴
- 元イェール大学フットボール選手
- 2度の下院議員選挙に立候補(いずれも落選)
- トランプ政権で大統領暗号資産諮問委員会執行ディレクターを務める(2025年1-8月)
- GENIUS法の成立に貢献
テザーでの役職変遷
- 2025年8月19日:デジタル資産・米国戦略担当戦略アドバイザーに就任
- 2025年9月12日:USAT(米国向けステーブルコイン)のCEOに昇格
- 本拠地:ノースカロライナ州シャーロット
主な業務内容
- 米国市場参入戦略の立案・実行
- 連邦・州レベルの規制当局との関係構築
- USAT(米国居住者向けステーブルコイン)の立ち上げ
- 政策提言とロビー活動
ハワード・ラトニック商務長官との関係
キャンター・フィッツジェラルドの役割
- テザーの準備金の大部分を管理・カストディ
- 今回の資金調達で主幹事を務める
- 米国債の主要ディーラーとして業界トップクラス
ラトニック商務長官の影響
- 長年キャンター・フィッツジェラルドのCEOを務めた
- トランプ大統領の側近として仮想通貨政策に影響力
- テザーの信頼性向上に貢献
トランプ政権の仮想通貨政策
主要な政策方針
- 米国を「暗号資産の首都」にする
- ビットコイン戦略的準備金の構築(検討中)
- 明確な規制枠組みの整備
- イノベーション促進と投資家保護のバランス
テザーへの影響
- 政権の支援により規制リスクが大幅に低減
- 米国市場への本格参入が現実的に
- 機関投資家からの信頼向上
USAT(米国向けステーブルコイン)の展開
テザーは、グローバル向けのUSDTとは別に、米国居住者向けの新しいステーブルコイン「USAT」を発表しています。
USATの特徴
規制準拠
- GENIUS法に完全準拠した設計
- 連邦レベルでのライセンス取得予定
- 州レベルの送金業者ライセンスも取得
準備金構成
- 100%米国内の資産で裏付け
- 主に米国債と現金
- 米国の金融機関でカストディ
ターゲット市場
- 米国居住者向けの決済・送金
- 企業の資金管理
- DeFiプラットフォームでの利用
ローンチ予定
- 2025年末~2026年初頭を目標
- 段階的なロールアウトを計画
- 主要取引所での上場を想定
競合との差別化戦略
USDTとUSATの使い分け
- USDT:グローバル市場向け、規制が緩やかな地域
- USAT:米国市場向け、厳格な規制準拠
Circleへの対抗
- Circleは2025年6月にIPO、時価総額330億ドルに成長
- テザーはプライベート企業のまま、より高い利益率を維持
- USDCの市場シェア(25.5%)に対抗し、米国市場でのシェア拡大を狙う
テザーのビジネスモデル分析
収益構造の詳細
テザーのビジネスモデルは、ステーブルコイン発行を通じた「デジタル銀行業」と位置づけることができます。
主要収益源
1. 利息収入(最大の収益源)
- 顧客から預かったドルを米国債などで運用
- 顧客には利息を支払わない(ステーブルコインは無利息)
- 全ての運用益が企業利益となる
2. 発行・償還手数料
- 大口顧客向けの発行手数料
- 早期償還時の手数料
- 取引所への流動性提供手数料
3. 投資収益
- ビットコイン、金などへの戦略的投資
- ベンチャー投資(Twenty One Capital、Rumbleなど)
- 農業・エネルギー分野への多角化投資
コスト構造の分析
主要コスト項目
運営コスト(極めて低い)
- 従業員コスト:約200名(推定年間5,000万~8,000万ドル)
- IT・インフラ:ブロックチェーン運用コスト(推定年間1億~2億ドル)
- 監査・コンプライアンス:BDOによる監査費用(推定年間数千万ドル)
- マーケティング:最小限(ブランドが既に確立)
営業利益率の驚異的な高さ
- 推定営業利益率:80-85%
- 伝統的銀行の営業利益率:20-30%
- BigTech企業の営業利益率:30-40%
スケーラビリティの優位性
デジタルネイティブビジネスの強み
- 追加顧客獲得のマージナルコストがほぼゼロ
- ブロックチェーン技術による自動化された運用
- グローバル展開が容易(規制を除く)
- 物理的インフラ不要(支店、ATMなど)
成長余地
- 現在の1,740億ドルから5,000億ドル規模への拡大余地
- グローバル決済市場(数百兆ドル規模)の一部を獲得
- 新興国での採用拡大
リスク要因
準備金の透明性問題
- 過去に準備金の実在性について疑問視された経歴
- 四半期監査は実施しているが、完全監査ではない
- 2021年にNY州とCFTCに計6,100万ドルの和解金支払い
規制リスク
- 各国の規制変更による事業制限の可能性
- マネーロンダリング対策(AML)の強化要求
- 準備金構成への規制介入
市場リスク
- 競合の台頭(Circle、PayPal、伝統的金融機関)
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC)による競争
- 仮想通貨市場全体の規制強化
競合との比較と市場ポジション
主要競合の動向
Circle(USDC発行)
2025年の状況
- 2025年6月にナスダック上場
- 初日株価160%上昇、時価総額330億ドルに
- USDC時価総額:約720億ドル(市場シェア25.5%)
強み
- 米国企業として規制準拠体制が確立
- BlackRockとのパートナーシップ(準備金運用)
- 主要取引所での採用(Coinbase、Binanceなど)
- 透明性の高い準備金報告
弱み
- 市場シェアがテザーの半分以下
- 収益性が低い(準備金の一部を顧客還元)
- グローバル展開がテザーより限定的
その他の競合
PayPal(PYUSD)
- 2023年8月にローンチ
- PayPalの3億9,000万アクティブユーザーが強み
- 時価総額:約8億ドル(まだ小規模)
伝統的金融機関の参入
- JPMorgan:JPM Coin(企業間決済に特化)
- Citibank:独自ステーブルコイン検討中
- Visa、Mastercard:ステーブルコイン決済への対応強化
テザーの競争優位性
1. 圧倒的な先行者利益
- 2014年から市場を形成
- 主要取引所での基軸通貨としての地位
- 深い流動性とネットワーク効果
2. グローバルな存在感
- 規制の緩やかな地域でのシェアが特に高い
- 新興国での圧倒的な採用率
- 多数のブロックチェーンでの展開(Ethereum、Tron、Solanaなど)
3. 高い収益性
- 利息を顧客に還元しないモデル
- 極めて低いコスト構造
- 従業員一人当たり利益が世界最高水準
4. ブランド認知度
- 「ステーブルコイン=USDT」という認識
- 10年以上の運用実績
- 金融危機時の安定性実証
市場シェアの推移と予測
過去3年間のシェア推移
- 2023年:48% → 2024年:44% → 2025年:61.7%
2024年にシェアが低下した理由
- Circle(USDC)のIPO発表による注目度向上
- 規制問題への懸念
- 競合の積極的なマーケティング
2025年にシェアが大幅回復した理由
- GENIUS法成立による規制明確化
- トランプ政権との関係強化
- Bo Hines氏の採用による信頼性向上
- 米国市場参入計画の具体化
2026-2027年の予測
- 市場全体が3,500-4,000億ドルに成長予想
- テザーのシェアは55-60%を維持する見込み
- CircleのIPO効果でUSDCも30%程度まで拡大の可能性
- 新規参入者(PayPal、JPMorganなど)が5-10%獲得
日本市場への影響
国内ステーブルコイン市場の現状
日本では2023年6月に改正資金決済法が施行され、ステーブルコインの規制枠組みが整備されています。しかし、厳格な規制により市場の発展は限定的です。
日本の規制の特徴
発行者の要件
- 銀行、資金移動業者、信託会社のみが発行可能
- 海外発行のステーブルコインは原則利用不可
- 100万円の送金上限(為替業務との兼ね合い)
現状の課題
- 海外ステーブルコイン(USDT、USDCなど)が日本の取引所で取り扱えない
- 国内発行のステーブルコインは普及が進まず
- 規制の厳しさから大手企業の参入が限定的
テザーの企業価値向上がもたらす影響
1. 日本企業の参入促進
期待される動き
- メガバンク:三菱UFJ、みずほ、三井住友などのステーブルコイン発行
- 金融系IT企業:SBI、楽天などの参入加速
- 決済企業:PayPay、LINE Payなどのステーブルコイン活用
具体的な事例
- JPYC(株式会社JPYC):日本円連動型ステーブルコインの先行事例
- 三菱UFJ信託銀行:デジタル証券とステーブルコインの連携実験
- SBIグループ:海外ステーブルコイン発行企業への投資検討
2. 規制緩和の検討加速
見直しが議論される可能性のある項目
- 100万円送金上限の撤廃:企業間決済への対応
- 海外ステーブルコインの取り扱い解禁:一定の条件下での利用許可
- 発行者要件の柔和化:IT企業など非金融事業者の参入許可
- 準備金運用規制の明確化:利息収入の取り扱いなど
金融庁の動向
- 2025年に「ステーブルコインの規制の在り方」に関する研究会を開催
- GENIUS法など海外事例を参考に制度改正を検討
- 2026年以降の法改正を視野
3. 機関投資家の暗号資産投資拡大
日本の機関投資家の現状
- 年金基金:原則として仮想通貨への直接投資は禁止
- 銀行:一部が仮想通貨カストディ業務に参入
- 保険会社:ブロックチェーン関連の実証実験段階
- 証券会社:仮想通貨デリバティブ取引の拡大
テザー投資成功がもたらす変化
- ステーブルコイン発行事業の収益性が実証される
- 機関投資家向けファンドでの組み入れ検討
- 年金基金の投資規制緩和の議論
国際送金市場への影響
日本の国際送金市場規模
- 年間約2兆円規模(個人送金)
- 企業間送金を含めると数十兆円規模
ステーブルコインによる変化
- 送金手数料:従来の2-5%から0.1-0.5%に低減
- 送金時間:2-5営業日から数分に短縮
- 為替リスク:リアルタイム決済により最小化
主要プレイヤー
- 従来:銀行、SBIレミット、Western Union
- 新興:ステーブルコインベースの送金サービス
日本の主要仮想通貨取引所
税制改正を見据えた投資環境の整備が進む中、日本の主要取引所をご紹介します。
BitTrade
特徴
- 300種類以上の豊富な取扱銘柄
- 低スプレッド取引対応
- プロ向け高機能取引ツール
- ステーキングサービス完備
- 24時間365日サポート
主な取扱銘柄: BTC、ETH、XRP、ADA、DOT、MATIC等 主要手数料:
- 売買手数料: 取引所0.2%、販売所スプレッドあり
- 入出金: 銀行振込入金無料、出金330円
- 送金: 通貨により異なる
最小購入額: 500円から 口座開設: オンライン完結、本人確認書類提出必要 スマホアプリ: iOS/Android対応 積立サービス: 月500円から対応 セキュリティ: コールドウォレット、2段階認証 最新キャンペーン: 新規登録で取引手数料50%割引(〜2025年12月末) 向いているユーザー: アルトコイン取引を重視する中級者以上
SBIVCトレード
特徴
- SBIグループの信頼性
- 各種手数料が業界最安水準
- レバレッジ取引対応
- 積立投資サービス充実
- 初心者向けUI
主な取扱銘柄: BTC、ETH、XRP、LTC、BCH、LINK、DOT、ADA等 主要手数料:
- 売買手数料: 取引所無料、販売所スプレッドあり
- 入出金: 住信SBIネット銀行は無料、他行330円
- 送金: 無料
最小購入額: 1円から 口座開設: オンライン完結、最短即日 スマホアプリ: 高機能アプリ対応 積立サービス: 月100円から セキュリティ: 顧客資産の分別管理、コールドウォレット 最新キャンペーン: 大口投資で最大1%キャッシュバック 向いているユーザー: 手数料を抑えたい初心者、積立投資重視
CoinCheck
特徴
- 国内最大級のユーザー数
- 初心者にも使いやすい直感的UI
- NFTマーケットプレイス併設
- Coincheckでんき・ガス連携
- 豊富な学習コンテンツ
主な取扱銘柄: BTC、ETH、XRP、LTC、BCH、XLM、MONA、LSK等 主要手数料:
- 売買手数料: 取引所無料、販売所スプレッドあり
- 入出金: 銀行振込入金無料、出金407円
- 送金: 通貨により異なる
最小購入額: 500円から 口座開設: オンライン完結、本人確認書類必要 スマホアプリ: 直感的で使いやすい 積立サービス: 月1万円から セキュリティ: マルチシグ、コールドウォレット 最新キャンペーン: 家族友達紹介で最大1500円プレゼント 向いているユーザー: 仮想通貨初心者、NFTに興味がある方
bitbank
特徴
- 国内最大級の取引量
- 60種類以上の豊富な銘柄
- リアルタイム入金対応
- セキュリティの高さで定評
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リスク要因
テザーへの大型投資には、以下のようなリスク要因も存在します。投資家は慎重な検討が必要です。
1. 規制リスク
各国規制の不確実性
- 米国:GENIUS法は成立したが、詳細規則はまだ策定中
- 欧州:MiCA規制への完全準拠には時間とコストが必要
- アジア:中国の仮想通貨禁止政策、香港・シンガポールの規制動向
規制変更のリスク
- 準備金構成への規制介入の可能性
- 顧客への利息還元義務化の可能性
- マネーロンダリング対策(AML)の強化要求
- 取引制限や地域限定の可能性
2. 準備金の透明性問題
過去の経緯
- 2021年:NY州とCFTCに計6,100万ドルの和解金支払い
- 準備金が不十分な時期があったことを認める
- 誤解を招く表現での準備金説明
- 2019年:準備金が74%しかなかった時期の存在
現在の状況
- 四半期ごとにBDO会計事務所による監査(attestation)
- 完全な監査(audit)ではなく、限定的な確認
- 準備金構成の詳細は部分的にしか開示されない
投資家の懸念
- 準備金が本当に全額存在するのか
- 準備金の流動性は十分か(即座に換金可能か)
- 会計基準の適切性
3. 競争激化のリスク
既存競合の強化
- Circle:上場により資金調達力が向上、信頼性も向上
- Paxos:規制準拠体制が最も厳格、機関投資家の信頼高い
- PayPal:3億9,000万ユーザーという圧倒的基盤
新規参入者の脅威
- 伝統的金融機関:JPMorgan、Citibank、Visaなど
- BigTech:Apple、Googleの決済サービスへの統合可能性
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC):政府発行の競合
市場シェア低下の可能性
- 現在61.7%のシェアが50%以下に低下する可能性
- 利益率の低下圧力(顧客への利息還元競争)
- ネットワーク効果の減衰
4. 技術・セキュリティリスク
ブロックチェーンの脆弱性
- スマートコントラクトのバグ
- 51%攻撃のリスク(特に小規模チェーン)
- 量子コンピュータによる暗号解読の将来的リスク
サイバー攻撃
- ハッキングによる資産盗難
- フィッシング詐欺
- 内部不正のリスク
過去の事例
- 2016年:DAO hack(Ethereum)
- 2018年:Coincheck hack(日本)
- 2022年:Ronin Bridge hack
5. カウンターパーティリスク
準備金管理先のリスク
- カンター・フィッツジェラルドへの集中
- 米国債市場の急変動リスク
- カストディアンの破綻リスク
取引所リスク
- 主要取引所の破綻や規制問題
- 流動性の急激な悪化
- 取引制限の可能性
6. 評価額の妥当性リスク
5000億ドル評価の疑問
- 年間純利益100億ドル×PER50倍=5,000億ドル
- PER50倍は成長企業としては妥当だが、金融インフラとしては高い
- 類似企業との比較:Circle(PER約40倍)、PayPal(PER約20倍)
バリュエーション低下の可能性
- 競争激化による利益率低下
- 規制コストの増加
- 市場環境の悪化
まとめ
ソフトバンクとARK Investによるテザーへの出資検討は、ステーブルコイン業界における歴史的な転換点となる可能性があります。5000億ドルという企業価値は、デジタル資産が従来の金融システムと同等の地位を獲得したことを示しています。
この投資が実現した場合の影響
1. テザーの地位確立
- 世界最大級の非公開企業:OpenAI、SpaceXと並ぶ評価額
- ステーブルコイン市場の統合:市場シェアのさらなる拡大
- 規制当局からの信認:著名投資家の参画による信頼性向上
- 米国市場での本格展開:USATローンチによる事業拡大
2. ステーブルコイン市場全体の発展
- 市場の制度化加速:機関投資家の大規模参入
- 競争の激化:Circle、PayPal、伝統的金融機関との競争
- 利用シーンの拡大:決済、送金、DeFi、企業財務管理など
- グローバル金融インフラ化:国際決済の標準手段へ
3. 規制整備の進展
- 日本を含む各国での規制整備:GENIUS法を参考にした法整備
- 国際的な協調:クロスボーダー規制の調和
- マネーロンダリング対策強化:AML/CFT規制の厳格化
- 消費者保護の充実:償還保証、透明性確保
4. 機関投資家の暗号資産投資本格化
- ステーブルコインへの投資拡大:安定性と収益性の両立
- 仮想通貨市場全体への波及:市場の成熟と機関化
- 新たな金融商品の開発:ステーブルコイン関連のETF、ファンド
- ポートフォリオの多様化:オルタナティブ投資としての位置づけ
投資家への示唆
ポジティブ要因
- 圧倒的な収益性:営業利益率80%超、ROE極めて高い
- 成長余地:グローバル決済市場のわずか数%を獲得
- 規制環境改善:GENIUS法成立、トランプ政権の支援
- ネットワーク効果:市場シェア61.7%による強固なポジション
- 多角化戦略:ビットコイン、金、ベンチャー投資による収益源多様化
慎重に検討すべき要因
- 規制リスク:各国規制の不確実性、準備金規制の変更可能性
- 競争リスク:Circle、PayPal、伝統的金融機関、CBDCとの競争
- 透明性の課題:完全監査ではなく限定的な確認のみ
- 評価額の妥当性:PER50倍の評価が適切かどうか
- 集中リスク:カンター・フィッツジェラルドへの準備金管理の集中
今後の注目ポイント
短期(3-6ヶ月)
- 資金調達の最終決定と発表
- 投資家リストの確定
- USATのローンチ時期
中期(6-12ヶ月)
- 米国市場でのシェア拡大状況
- 規制当局との関係構築の進展
- Circle上場後の競争環境変化
長期(1-3年)
- IPOの可能性(投資家のExit戦略)
- グローバル展開の加速
- CBDCとの競争・協調関係
- ステーブルコイン市場全体の成長(5,000億ドル超へ)
結論
テザーへの大型投資は、ステーブルコインが単なる「仮想通貨の取引手段」から「グローバル金融インフラ」へと進化したことを象徴する出来事です。ソフトバンクとARKという著名投資家の参画は、デジタル資産が主流金融の一部となったことを示しています。
しかし、規制リスク、競争激化、準備金の透明性といった課題も依然として存在します。投資家は、圧倒的な収益性と成長性を評価しつつも、これらのリスク要因を慎重に検討する必要があります。
今後の交渉の進展と最終的な投資実行について、業界関係者だけでなく、グローバル金融市場全体が注目しています。この動きは、デジタル資産が21世紀の金融インフラの中核を担う可能性を示す、歴史的な瞬間となるでしょう。
出典
主要報道
- Bloomberg(2025年9月26日):ソフトバンクGとアーク、テザーの大型資金調達への参加で協議
- Cointelegraph Japan(2025年9月27日):ソフトバンクとARK、ステーブルコイン発行企業テザーに出資を検討か
- CoinDesk Japan(2025年9月23日):テザー、最大200億ドルの資金調達を計画か
財務情報
- テザー公式サイト(2025年7月31日):Q2 2025 Attestation Report
- あたらしい経済(2025年8月3日):テザー、Q2純利益は過去最高49億ドル
- Tether.io(2025年7月31日):Financial Figures and Reserves Report
規制・人事
- CoinDesk(2025年8月19日):Tether Taps Bo Hines as Strategic Advisor
- Fortune Crypto(2025年9月12日):Tether launches U.S. stablecoin, appoints Bo Hines as CEO
- Bloomberg(2025年8月19日):Tether Taps Ex-White House Crypto Advisor for US Expansion
市場データ
- CoinMarketCap(2025年9月30日):テザー(USDT)価格・時価総額データ
- DefiLlama(2025年9月):ステーブルコイン市場統計
- CoinGecko(2025年9月30日):USDT価格・取引高データ
記事作成日:2025年9月30日
最終更新日:2025年9月30日
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、投資助言を行うものではありません。仮想通貨投資には高いリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。
本記事の情報は2025年9月30日時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
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