仮想通貨の採用進めるさまざまな大手企業、金融業界に無言の圧力強まる

金融機関と仮想通貨業界との関係が深化しない状況に反して、さまざまな業界の大手企業はこのところ、仮想通貨・ブロックチェーンを採用する動きを強めています。そのことは金融業界が無視できない影響を受けることを意味しています。銀行はこれら大手企業と取引があり、仮想通貨関連の新しいサービスを開発しなくてはならない状況に追い込まれるかもしれないからです。

ディズニーが仮想通貨取引所を買収する可能性

韓国の大手英字紙コリアヘラルド(Korea Herald)は2019年4月17日、仮想通貨取引所のビットスタンプ(Bitstamp)とコルビット(Korbit)が近く、ウォルト・ディズニー社から130億ドル(約1兆4,300億円)の株式投資取引によって買収される可能性があると報道しました。

報道によると、韓国最大手のオンランゲーム企業NXCコーポレーション(NXC Corporation)のキム・チョンジュ(Jung-ju Kim)会長が、98.6%の自社株式を売却することを計画していますが、ディズニーはその大手入札者1つに名乗りを上げたとのことです。NXCは韓国大手ゲームデベロッパーのネクソン(Nexon)の47%の株式を保有しています。ネクソン自体は、ビットスタンプの47%、コルビットの60%の利権をそれぞれ保有していまので、ディズニーはNXCを落札すれば、成り行きとして両取引所に大きな利権を保有することになります。

ブロックチェーン技術採用へ動く世界の大手自動車メーカー

一方、BMWやフォード、ルノー、フォルクスワーゲンなど世界大手自動車メーカーは、次々とブロックチェーン技術の採用を発表しています。フォルクスワーゲングループは4月18日、コバルトなど自動車や家電産業向け金属採掘・利用に向けた関連業界ネットワーク創設でIBMや中国のHuayou Cobaltなどと合意しました。コバルトは、リチウムイオンバッテリーに欠かせない金属の1つです。フォルクスワーゲンは、IBMブロックチェーンプラットフォームを利用して、コバルトの採掘、供給の流れを追跡することができます。

18年5月には、BMWとGM、フォード、ルノーの自動車メーカー大手4社とブロックチェーンスタートアップ企業が、Mobility Open Blockchain Initiative (MOBI) を結成して、自動車業界におけるブロックチェーン技術の採用促進に乗り出しています。その他にも、ジャガー・ランドローバーは4月28日、仮想通貨プログラムにアイオータ(IOTA)の独自技術であるタングル(Tangle)を利用することを発表しました。

運輸大手がブロックチェーン技術利用の標準化呼び掛け

カナダのトロントで4月24~25日に開催された「Blockchain Global Revolution Conference」で、世界最大手航空貨物輸送会社FedExのロブ・カーター(Rob Carter)最高情報責任者(CIO)は、国際運送業界のブロックチェーン技術利用について、政府主導による標準化を実現するよう呼びかけました。

FedExはすでに、「ハイパーレジャー(Hyperledger)」のコンソーシアムに参加しています。ハイパーレジャーには270社余りが参加しており、ブロックチェーン技術の商用利用、プラットフォームなどの開発を鋭意進めています。またFedExとDHL Express、UPS3社は、会員500社余りで構成するBlockchain in Transport Alliance(BiTA)の有力メンバーです。

これら有力業界の動きは、日ごろ密接な関係にある金融業界に無言の圧力となっています。仮想通貨の格付も行うワイス・レーティングス(Weiss Ratings)のアナリストは「仮想通貨と法定通貨の境界線は、時と共に鮮明ではなくなる」と予言しています。

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参考
Korea Herald
Jaguar Land Rover
Volkswagen

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