グローバルとローカルで進むセキュリティトークンの開発について

セキュリティトークンはブロックチェーン業界の中でも非常に大きなテーマです。既存のプライベートエクイティの市場をブロックチェーン上に取り込むことや、今まで証券化が難しかった小口なアセットをブロックチェーン上に乗せることに大きな市場を見込んでいるプレーヤーは多いです。既にセキュリティトークンの発行事例は数多くその主要なものをこちらのレポートで解説しています。

地域性の強い開発が必要になるセキュリティトークン

最近のセキュリティトークンのトレンドの一つはローカルでの密連携です。ヨーロッパの主要取引所の一つであるユーロネクスト(Euronext)はセキュリティトークン関連のスタートアップのトークニー・ソリューションズ(Tokeny Solutions)に500万ユーロ(約6億円)の投資をしたと発表しました。(参照

同社はTokeny Solutionsの23.5%の株式を取得し、密な連携を進めると発表しています。Tokeny SolutionsはセキュリティトークンをEUのコンプライアンスに沿ったスマートコントラクトで実行できるT-REXプロトコル開発をしています。

コンプライアンス情報をスマートコントラクトで執行することはセキュリティトークンで期待されるメリットの一つです。例えば、適格機関投資家のみが購入できるセキュリティトークンをコントラクトで定義することもできますし、期間を設定した二次流通の制限などもコントラクトで定義できます。

セキュリティトークンが既存の各国金商法の中でやり取りされることは必然です。各国の規制要件がそれぞれ異なる以上、こういったコンプライアンス情報が関わるコントラクト開発は各国のベンダーが担うことが予想されます。

そういった点を考慮すると、これから地域性の高い連携や開発が目立つようになるでしょう。つまり、各地域のセキュリティトークン事業者が取引所や証券ブローカーと提携、および各地域のコンプライアンスに沿ったスマートコントラクトの開発が進むことになるでしょう。

ローカル×グローバルで進むセキュリティトークンのアダプション

一方で、「セキュリティトークンはグローバルで流動性を高めるのではないか?」という指摘も出そうです。これはパブリックブロックチェーンとコンソーシアムブロックチェーンを接続して実現しようとしている事例が多いです。

スイスのセキュリティトークン事業者のブロックステイト(BlockState)とスイス証券取引所が取り組んでいるプロジェクトはその良い事例です。イーサリアム(Ethereum)のERC20で発行されているセキュリティトークンを、R3のCordaで作ったコンソーシアムブロックチェーンに接続します。

パブリックブロックチェーン上のERC20トークンをロックアップして、そのロックアップした分をコンソーシアムブロックチェーン内でミラーリングします。コンソーシアムブロックチェーンは、スイス証券取引所としてスイスのローカル取引所として機能します。

つまり、コンソーシアムブロックチェーンとの接続は、既存の証券市場の仕組みのグローバルレポジトリレシートにあたります。これはある証券取引所が海外の会社の株式を確かに保有しており、同様のIOUのようなものをそのまま国内で取引できるような仕組みです。(参照

コンソーシアムブロックチェーンではこれと同じことを実行しており、そのコンソーシアムブロックチェーンではローカルの規制に沿うことになるでしょう。

しかし、恐らくこういったグローバルでの接続が目立つのは、それぞれのローカルでセキュリティトークンに関わるコントラクト開発や規制との折り合いが一巡してからでしょう。そこまでの時間軸がどの程度かは分かりませんが、セキュリティトークンという新しい産業は少しずつ確実に進んでいることは間違いありません。

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