政治的あるいは経済的な緊張が高まると、人々は法定通貨を見限り、比較的安全な金やビットコイン(BTC)を購入して、「価値の保存」を図ります。米国とイランの政治的対立や米中貿易紛争などが重なっている現在が好例で、特に関係国の人々は価値の保存の意味から、金とビットコインのどちらが勝るのか気になります。香港で発生した最近のデモが好例ですが、ビットコインはプレミアム付きの比較的高値で取引されました。
金価格は約半年で10%高、ビットコイン(BTC)は185%の値上がり
金価格は19年初めごろから上昇気配であり、通常のほぼ10%高を付けています。最近の金価格である1オンス1,400ドル(約15万2,000円)は、6年ぶりの高値となります。そのことは、法定通貨や株式投資への信頼が落ちている証拠でもあります。一方ビットコインもまたこのところ高騰し、19年1月以来短期では185%も値上がりしました。
しかし、金とビットコインの間には大きな相違があります。ビットコインは純粋に金銭的価値があるのに対して、金は富の蓄積としての価値に加えて工業的需要を持っています。株式仲介業のユーロ・パシフィック・キャピタル社の最高経営責任者(CEO)であるピーター・シフ(Peter Schiff)氏は6月22日のツイッターに、「金の需要は業界ではコモディティ(商品)として、中央銀行では準備資産としての実質需要がある。それ故に金がどのような価格になろうとも常にバイヤーがいる。ビットコインに対して唯一需要があるとすれば、それは投機家である」と投稿しました。
これに対して元Googleエンジニアで、ビットコインとその価値の保存に通じているヴィジェイ・ボヤパティ(Vijay Boyapati)氏は、ツイッターで反論し、「金価格の圧倒的部分は、ビットコインと同様に金銭的プレミアムそのものである。工業需要は決してそのようなプレミアムを保護しない。プレミアムは価値の保存としての適性に依存しており、その点でビットコインは金に勝る」と主張しています。
仮想通貨の悲観論者ルビーニ教授らの予言は実現せず
ビットコインは前年の低迷から回復して、100万円を超えました。そしてマイニング収益などで表されるネットワークの健康状態は、今まで以上に良好です。
米経済学者でニューヨーク大学教授であるヌリエル・ルビーニ(Nouriel Roubini)氏のような仮想通貨批判層で代表される悲観論者は、ビットコイン価格が反騰している最近、出番がなく沈黙を守っています。ルビーニ教授らが主張する仮想通貨全体が崩壊するとの予言はここまでは実現していません。ビットコイン価格は17年12月のピーク価格から18年にかけて84%も大暴落した後、今回は3カ月で50%以上の回復を見せました。
ビットコイン(BTC)は金に取って代わると主張する
貿易戦争の激化や米国などによる例えばイランに対する地政学的抑圧によって、人々は安全な避難先としての資産価値のある金やビットコインなどにますます目を向けることになります。これら両資産は、近い将来に向けてその価値を大きく高めることになりそうです。
金とビットコインとの比較で「ビットコインが勝る」と主張する代表的な見解は、オープンソースソフトウエアパブリッシャーのブロックワン(Block.one)創業者兼最高経営責任者(CEO)のブレンダン・ブルマー(Brendan Blumer)氏です。同氏は3月にツイッター上で「今後20年にかけて、ビットコインは価値を保存する主要な商品として金に取って代わる」と予言しています。
総合的価値の保存の意味で、金はビットコインに勝っているのかもしれません。金は天然資源であり、金の採掘に多額の資金を投資することになります。それに対してビットコインは、最も機能的な(利便性、確実な所有権など)価値の保存として勝っていることは間違いありません。
参考
・WHY BITCOIN EXCELS OVER GOLD AS A STORE OF VALUE
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