
イーサリアム(Ethereum)は、日本時間7月31日にジェネシスブロックから4周年となりました。当初はその難しい構造や、ビットコイン(BTC)のスクリプトと違った自由度の高いスマートコントラクトプラットフォームとして注目を浴びたものの、そもそもローンチできるのか?という懐疑的な意見も多数見受けられました。
本稿では、イーサリアムが成し遂げてきた軌跡と今後について見ていきましょう。
祝:イーサリアム4周
4年前の2015年7月30日に、メインネット"フロンティア"としてジェネシスブロック(#0)がマイングされました。5年近い歳月をかけてリサーチ、開発されてきたセレニティ(イーサリアム2.0)も来年と迫り、より飛躍の5年目になるといいですね #ethereum #イーサリアム #仮想通貨 pic.twitter.com/sXvPI9tZlh
— 墨汁うまい(Bokujyuumai) (@bokujyuumai) July 30, 2019
イーサリアムのICOとローンチ
イーサリアムのICOは2014年5月から約40日間行われ、31,529BTCを調達。ビットコインは当時63,000円を推移していたため、約20億円の資金調達に成功したということになります。2015年5月にバグテストのオリンピックがローンチ、2015年7月31日に正式なメインネットとしてフロンティアをローンチしました。
同年11月に、イーサリアム上のトークンとして最低限実装されるべきルールを定義した基準である「ERC20トークン」が提案され、現在でも幅広く使用されています。その後安定版となるホームステッドが2016年3月にリリース。ガスコストやトランザクションの調整が行われたことで、コントラクトのデプロイが一般的に行われるようになり、2016年末に向けてイーサリアムのコントラクトを使用したICOが爆発的に人気を博すことになりました。
The DAOとETCの誕生
スタートが順調であったイーサリアムは、2016年という苦難の年を迎えることになります。
The DAOはイーサリアムのコントラクトを使用した投資信託のDAOプロジェクトで、2016年5月にICOを行い約1,300万ETHを調達。その後コントラクトの脆弱性をついたハッカーにより2016年6月17日に360万ETHを盗み出されて(子DAOへ送金)しまいました。
The DAOハックはイーサリアムの脆弱性ではなく、The DAOがデプロイしたコントラクトに問題があり、1つのコントラクトアドレスで全てのETHを管理していたことにより、ハッカーはコントラクトのルールにより即座にETHを引き出せなかったものの更なるETHを引き出すことができたため、イーサリアムファンデーションはハードフォークを決定しました。
The DAOハックにより20ドルを推移していたETHは55%の暴落で9ドルを記録。
このハードフォークでハッカーが得るはずだったETHのコントロールは無事戻ったものの、イーサリアムの不変条件を覆すハードフォークを行ったことにより、破棄した元チェーンを支持する「イーサリアムクラシック」派が誕生。元チェーンのETHはイーサリアム上では無効なETHですが、ETCとして価値がつくことに目をつけた中国マイナーにより、ETHとは別の仮想通貨としてマイナーが「売却目的で支持」をしたことにより今日も存在し続けています。
このハードフォークにより生まれた新しいETCは、無効なETHではあるもののハードフォークまでに使用されたハッシュ関数は同じであるため、ETCを送金すると「ETHの送金もリプレイ」というリプレイアタックによる損害を取引所がはじめて経験。今までにないコミュニティとリソースの分裂により、イーサリアムだけでなくブロックチェーン全体が多くのことを学んだ事件となったのです。
*リプレイプロテクションが実装されていない時、ETCだけを送金しても取引所にETCとETHが反映され、存在しないETHを売却。再度ETCを送り返すという手段で存在しないETHを売却することができた。
ホームステッドのトランザクションスパム攻撃
さらに事件は続きます。悪意のある攻撃者により、イーサリアムネットワークが非常に強烈なトランザクションスパム攻撃を受け、平均15秒のブロック生成時間が大幅に遅延することになります。
イーサリアムのコントラクトを動かす心臓部であるEVM(イーサリアムバーチャルマシン)のオペコードであるEXTCODESIZEのガス代が安いことに目をつけたハッカーが、低コストでスパム攻撃を開始。このEXTCODESIZEのオペコードは、イーサリアムのコントラクトの状態やアカウントが所有しているETHなどを記録する「ステート情報」をノードから読み込みを行うため、1ブロックにつき5万回もの読み込みを行わせることで、イーサリアムネットワークを遅延させることに成功。
その結果2016年10月、攻撃コストを増加させるためのオペコードのガス代を20倍以上にする実装「タンジェリンホイッスル」、スパム攻撃が行われたという履歴により膨れ上がったステート情報のデータ量を減らす「スプリアスドラゴン」の2つのハードフォーク実装を行うことになりました。
結論と考察
このように、現在の巨大なエコシステムを形成するイーサリアムは、2016年という苦難の年を経験することで、セキュリティの飛躍的改善を行うことができたのです。これらの攻撃やコントラクトの脆弱性は、黎明期であったイーサリアムにとっては大きな被害となったものの、これらの経験を活かすことができる強いエコシステムはイーサリアムの最も重要な強みであると言えます。
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