2019年前期の暗号通貨市場を振り返る

ネム(NEM)ブロックチェーンの投資部門であるネム・ベンチャーズ(NEM Ventures)共同創設者兼ディレクターのデイブ・ホジソン(Dave Hodgson)氏によるナスダック(Nasdaq)への投稿をもとに、2019年上半期までの暗号通貨およびブロックチェーン技術の動向を振り返っていく。

規制に関する事項

2019年に入り、複数の規制当局がブロックチェーン技術および分散型台帳技術(DLT)に関与し始めている。

金融活動作業部会(FATF)の暗号通貨取引に関する勧告、英国の金融行為規制機構(FCA)がヘッジファンドを承認、さまざまな団体がFacebookのLibra(リブラ)プロジェクトに関与、ドイツ規制当局がデジタルポンドを承認するなどイベントが数多くあった。

これらは、業界全体にとって前向きなステップであるとも言える。これまでの規制から、一部を承認するような動きに切り替わってきたこと、また承認されたことで暗号通貨技術を扱う企業やプロジェクトも今後、増える可能性があると思う。

機関投資家の動き

2019年に入り、暗号通貨に対する機関投資家の関心が高まっている。まず、JPモルガンは独自通貨の開発を発表し、ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)は証券トークンを発行するなどの動きがあった。Nasdaqは機関投資家向けに暗号通貨流動性指数を掲載するようになり、英国はでプライム・ファクター・キャピタル(Prime Factor Capital)が暗号通貨ヘッジファンドとして承認を受けた。

これらは、機関投資家からの信頼の高まりが起因していると言える。これらの進歩は、ブルームバーグ、CNN、ロイター、フィナンシャルタイムズなどの金融情報サイトで広く報告されている。

テクノロジー分野でのブロックチェーン

大手テクノロジー企業もブロックチェーンに関わる動きを見せ始めている。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、ブロックチェーン・アズ・ア・サービス(BaaS)を開始し、Googleなども同様の動きをしている。FacebookはLibraプロジェクトで暗号通貨に参入を宣言しており、ウーバー(Uber)、ペイパル(Paypal)、リフト(Lyft)、Visaなどとも提携予定である。中国企業もこれらの分野でイノベーションを起こす可能性があり、世界経済での米国の影響は、中国企業によって軽減されることになるかもしれない。

小売市場からの関心

2018年末以降、個人投資家などにサービスを提供するプロジェクトや企業からの関心が高まっている。中期的な価格上昇により、小売市場からの関心がさらに高まる可能性もある。

現実的なユースケース

ブロックチェーン技術は、すぐに効果を発揮するソリューションではないが、優れたアプリケーションも増えている。新しい技術は、他の技術と同様で大衆に受け入れられるためには、それを証明する必要がある。

ヘルスケアやエネルギー、サプライチェーンの分野でIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)に関するアプリケーションが増えている。また企業をはじめ多くの人がブロックチェーンとDLTを長期的ビジョンとソリューションに組み込み始めている。デロイトの2019年5月におけるレポートによると、企業経営者が主である回答者のうち、約83%がブロックチェーンの魅力的なユースケースを認識している。

ストラクチャードファイナンスの引き上げ

2017年のICO資金調達とは対照的に、セキュリティトークンやイニシャル・エクスチェンジ・オファリング(IEO)によって、投資関連の成熟度は高くなっている。この成熟は、ブロックチェーンと暗号通貨技術の採用を全面的に加速をもたらす。株式や債券への投資離れ、マイナス金利、量的緩和など金融システムもこの加速に起因していると考えられる。

冬の時代を抜け、技術への関心高まる

暗号通貨やブロックチェーンは、市場の盛り上がりとともに関心が増えているように感じる。2018年は暗号通貨の冬と言われてきたが、2019年に入りまた関心が増えてきたように思う。これは、さまざまな規制当局が一部の暗号通貨関連を承認したことと、世界的な企業が暗号通貨に対する認識を強め、参入してきたことに伴い市場価格が上昇し始めたことがきっかけなのかもしれない。

暗号通貨やブロックチェーン技術とその採用は、まだまだ開発初期段階であり、今後も成長の可能性が大きいのではないだろうか。そのあたりを認識しながら、2019年後半の暗号通貨市場を追っていきたい。

参照
Blockchain Isn’t a Silver Bullet, But Adoption Is On the Rise

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