ワンランク上のトレーディングツール
仮想通貨業界の有志が共同開発する、最先端の仮想通貨トレーディングツール「DECOCHART」プロジェクト。CoinPostの取材で、開発の舞台裏や今後のビジョンが明らかとなった。

仮想通貨トレーディングツール「デコチャート」

日本が、仮想通貨大国として復活するための第一歩となれば

かつて、仮想通貨市場で大きなシェアを誇った”日本円”の存在感を取り戻す。そんなビジョンを掲げた、新たなプロジェクトが立ち上がった。

その名は「DECOCHART」。プロジェクトには、日本の仮想通貨業界を代表する名だたる投資家や開発者らが参画する。

DECOCHARTは、仮想通貨の板情報をリアルタイムで一覧できるWebサイト「DECO BOARD」の開発者である「えーす級ぷろぐらまー(@joetheace107)」氏や「Tainoko(@btc_tainoko)」氏が新たに開発するトレードツールで、仮想通貨市場の指標となるBitMEX/Bitfinexのチャートを一覧表示できるものだ。

今後、DECOBOARDの機能や界隈の開発者が公開していた各種アラート/市場分析情報を統合させるほか、通知機能をつけるなど、利便性のさらなる向上を図り、投資家がワンランク上のトレードに必要な情報をまとめたツールの提供を目指す。

また、「サポートする表示情報の拡充」と「複数取引所をサポートした発注機能を実装する」ことで、シームレスな「情報取得→裁量/システムトレード」プロセスを実現するという。

プロジェクトの企画・監修を務めるのは、金融業界での豊富なノウハウを持つ「仮想NISHI(@Nishi8maru)」氏で、金融のプロの目線から市場動向を把握するツールのブラッシュアップ等を行なっている。

さらに、国内を代表する仮想通貨トレーダーである「HAT(@hat_fx)」氏らも当プロジェクトを支援しており、まさに各分野のスペシャリストの叡智を結集する形で取り組んでいる。

プロジェクト発足の背景

このプロジェクト発足の背景には、壮大なビジョンがある。

冒頭でも記載した「国内仮想通貨市場の復活」だ。

日本では、2017年春に施行された「改正資金決済法」など、政府が世界に先駆けて仮想通貨に係る法整備を進めたことで一般投資家の市場参入が相次ぎ、2017年のバブル相場において、日本円(JPY)が世界の市場シェアで一時50%を超えるほどの成長を見せた。

しかしその後、2018年を境に紆余曲折を経た仮想通貨市場がピークアウトに転じると、大量流入した日本からの資金を海外トレーダー及び海外市場に(結果的に)吸われるような形で、特に国内マーケット規模は縮小の一途を辿った。

この要因として挙げられるポイントとしては、2018年に相次いで発生した巨額の仮想通貨不正流出事件に伴うイメージ悪化や、金融庁による厳格な規制強化のほか、「海外との情報格差」が挙げられる。24時間365日稼働し、世界的に同時平行で取引される仮想通貨市場では、取引ツールや環境、ファンダメンタル要因のキャッチアップに至るまで、日本市場は英語圏の優位性に対し後塵を拝してきた。

ビットコインFXに限らず、アルトコイン取引でも、海外の多角的な情報を得ることができない状況は、同様に厳しい取引環境を強いられてきたと言わざるを得ない。

しかし、仮想NISHI氏はCoinPostの取材に対し、「そのような状況こそ、日本の仮想通貨市場が復活するヒントが隠されているのではないか」と言及した。

逆に、海外の英語利用者は、日本語に対して”壁”を感じている。

すなわち、最先端かつ最良のトレード環境をあえて日本語限定で提供することで、国内トレーダーに優位性をもたらすという逆転の発想だ。

これまで、良質な取引ツールが十分に整っていた英語環境のさらに上のステージを目指すため、情報プラットフォームを「日本」で提供する。これが、プロジェクト「DECOCHART」の根幹にある。

この点について同氏は、Twitter上で以下のように明かしている。

普段、機関投資家が(素人をハメるために)使っている”bloombeagや日経QUICKが販売している情報端末”を凌駕するツールをクリプト側では無料(もしくは最低限レベル)で作るのが目的。

開発のこだわり

主に個人投資家が利用するプラットフォームであることから、見栄えや使用感など「UI/UX」にもこだわり抜いた。

まず、DECOCHARTで一覧表示するチャートは、1分足チャートから可能な限り「低遅延(≒ゼロレイテンシー)」で表示する。

例えば、eSportsなど対戦ゲームの世界でも、上級者になるほどコンマ数秒のラグが試合の勝敗を分けることも少なくないとされており、その土俵が「投資」であればなおさらだ。DECOCHARTでは、より重要度の高い投資指標を一覧表示させることを目指しつつ、短い時間軸でのスキャルピングやデイトレードなどの投機面で必要不可欠な「描画パフォーマンス」には、特に力を入れて開発しているという。

各トレーダーのパーソナライズ化にも対応するほか、大口投資家の取引情報アラート機能も、特に熟練のトレーダーたちに重宝されている。

連携するのは、DECOCHARTの開発支援のほか、ツイッターでも日本屈指の仮想通貨情報を提供するTainoko氏(@btc_tainoko)だ。

Tainoko氏が提供するツールには、”巨大注文板・ステルス注文板・巨大REKT・巨大成行注文”を配信するBTC板アラートと、”未確認取引数・BitMEX&Deribit未決済建玉・ドミナンス・USDT時価総額・LXVX指数”を配信するBTC情報アラートが存在する。

DECOCHARTでは、BTC板アラートの巨大REKT、巨大成行注文を検知するプログラムの技術提供を行なっており、機関投資家を含む、大口投資家の動向をいち早く察知することができる。今後も両アカウントが提供するアラートの提供範囲拡大を模索していくという。

BTC情報アラートの使い方、かつ取組高(OI)を利用することの重要性を解説する内容は、金融業界に精通するToru Sasaki氏(@CocostaGeekend)がYoutubeで公開しているため、ぜひご覧になってほしい。

無料であることの意味

開発費や運用資金には、当然ながら相応のものが掛かると考えられるが、コミュニティベースで立ち上がったこのプロジェクトは、決して営利目的ではない。良質な提供を目指す「DECOCHART」であるが、これを有料販売するつもりは全くなく、「無料である必要性を感じている」という。

国内投資家の優位性を少しでも向上させ、本当の意味での日本市場の復活を目指す上で、正しい情報は投資初心者の方にも公開される必要がある。

そう語ったのは、ツール開発を手がける、えーす級ぷろぐらまー氏だ。「情報格差における不公平感は、業界の先細りに繋がりかねない」との危機感を覚えていることが理由の一つだという。その胸中を明かし、次のように言葉をつないだ。

仮想通貨に関わる事業者も含め、現在の市場では健全性および透明性が求められている要素であるが、情報格差をつけるのは、日本市場の中ではなく海外市場との間であり、日本の仮想通貨業界は、一致団結することこそ重要だと考えている。

初心者はなかなか自身で判断がつかず、投資行為そのものが難しいものであるとの先入観があるため、小難しいことを話す(詐欺まがいの)案件を信用してしまう傾向にある。今回のツールは、投資に必要な情報を一箇所にまとめ、無料で公開することで、”市場を理解することは実はシンプルである”ということが伝わってほしい。

個人投資家の金融リテラシーの向上に加え、日本市場の裾野拡大への一助になれればと意気込みを語った。

なお、無料でサービスを公開する恩恵は、日本市場における公平性だけでは留まらない。この点について仮想NISHI氏は、以下のように言及した。

(誰もが認める有益なものを)無償で提供するからこそ、有能な開発者らが善意で集い、より深く・大きなコミュニティに育つ可能性が生まれる。

これまで、市場に関わる情報について、コミュニティ主導の無料情報と、情報配信に対して対価を求める有料配信とで行われてきたが、こと日本の仮想通貨市場においては、特に無料配信で優良情報を公開す向きが強い。

プロジェクト「DECOCHART」では、本来、仮想通貨業界の”あるべき姿”と重なる点も数多い。個と個が非中央集権的に集うことで、一つのプロジェクト、またはコミュニティを形成する。「DECOCHART」は、まさに日本における非中央集権的かつ仮想通貨の原点回帰とも言える投資プロジェクトと言える。

現時点ですでに多くのサポート(支援)がプロジェクトを支えており、ツール公開に係るランニングコストなどが発生する状況において「開発」を後押ししている。

彼らの原動力は、国内市場の停滞(衰退)を目の当たりにする中、「自分たちの手で、日本の仮想通貨業界を再び盛り上げたい」という強い信念であり、だからこそ、その心意気に共感した支援者が後をたたない。

今後の展望

本格的な開発が始まったばかりの「DECOCHART」。今後の展望についてはTwitterでも随時報告されており、コミュニティからの意見・要望も積極的に取り入れている。

仮想NISHI氏曰く、

  • 金利
  • IV(インプライド・ボラティリティ)上限・下限
  • 先物乖離
  • メモリプール(未確認トランザクション)
  • OI総量(未定)

を表示出来るようにする構想もあるようだ。まさに至れり尽くせりの機能であり、個人投資家の期待を一身に集める「DECOCHART」の展望から、今後も目が離せない。

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