暗号資産(仮想通貨)支持者の間では、匿名性こそ分散台帳技術(DLT)の最も有望な機能の1つと見てきました。同時のこの問題は、政府や規制当局者にとって最も厄介な問題と受け取られており、ブロックチェーン空間に対して行う深刻な審査、規制の対処になりつつあります。
政府や規制当局にとって匿名性は、不正行為やマネーロンダリング(資金洗浄)の温床になる可能性が高く、世界経済を脅かす弱点であるとともに深刻な脅威そのものになりかねません。
匿名性の強弱は仮想通貨の種類によって異なる
匿名性が仮想通貨の利用と共に果たす役割を理解することは、それぞれのプラットフォーム固有の違いがあること知るべきです。例えば、ビットコイン(BTC)は準匿名とも言えるもので、トランザクションはパブリックレジャーの一部であり、特定のソースにまで追跡することは難しいが不可能ではありません。
一方、モネロ(Monero)などの仮想通貨は、トランザクションデータをほぼ完全に解読不能にすることができ、ユーザーの関心を集めています。しかし、仮想通貨空間はテクノロジーと同様に進化しており、少なくとも一部仮想通貨について、その匿名性を軽減、消去することも可能になっています。エリプティック(Elliptic)やサイファートレース(CipherTrace)などの企業は、仮想通貨の犯罪科学的追跡サービスを提供しています。
ブロックチェーン資産の匿名性は、法定通貨の価値を弱める恐れがあることから、世界の政府指導者にとって大問題です。最近の例では、Facebookが独自通貨リブラ(Libra)発行計画を発表したした際、米国の上下両院はこの問題を注視して問いただし、プロジェクトの代表を務めるのデービッド・マーカス(David Marcus)氏は、リブラの匿名での利用は許可しないと再確認するほどです。
仮想通貨取引の可視化が国際的に進み、厳格なKYC求める動き
国際的な場では、仮想通貨の取引を可視化する方向に進んでいます。G7を含む35カ国・地域で構成する国際機関の金融活動作業部会(FATF)は、取引所が順守すべき顧客確認(KYC)フレームワークを作成しました。ここで得られた幅広い個人情報は、適切な政府機関によって管理されます。
取引所自体も匿名による仮想通貨利用を徐々に減らしつつあります。例えば、バイナンス(Binance)は近く、米国人に対して特に厳格なKYCを求める米国向け取引所を開設します。同様に、コインベースUK(CoinbaseUK)は、匿名性を特に重視しているジーキャッシュ(Zcash/ZEC)取引を登録から除外しました。
プライバシー保護と絡み匿名性は今後国際的な議論に発展か?
仮想通貨取引の匿名性を問題視する動きがどの程度高まるのか、今後の事態の進展次第です。プライバシー保護の問題は、仮想通貨支持者の間でも依然として重視されています。プラットフォームに匿名性そのものの機能を備えたジーキャッシュ(ZEC)のような仮想通貨は、匿名性の機能が失われるとユーザー基盤の成長は望めません。
一方、仮想通貨空間は規制が強化されると、時勢とは逆にその採用と利用はますます匿名性を持ったプラットフォームに比重が高まり、金融当局と協力することを拒む取引所が台頭する可能性もあります。対照的に、規制当局は取引と個人情報の公共性(可視性)を保証する、より積極的な手段に打って出ることは十分ありうることです。仮想通貨の匿名取引問題は今後、さらに国際的な議論に発展する可能性が十分にあります。
参考
・Privacy Coins Creating Unique Challenges, Courting Controversy
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