AIと医療を繋ぐブロックチェーン:Ocean Protocolの提携続く

AIと医療の架け橋となるOcean Protocol

ブロックチェーン技術を活用し、AI(人工知能)のための分散型データ交換プロトコルを提供するオーシャンプロトコル(Ocean Protocol)が、2019年8月19日に、シンガポールに本社を置くヘルスケア企業のコネクテッドライフ(ConnectedLife)との提携を発表した。ブロックチェーン技術を活用し、患者の症状監視を強化するソリューションを提供する。

ConnectedLifeのIoT技術におけるモーションセンサーにより、患者の症状を継続的に監視できるようになった。癌や心臓病のような、徐々に発症し治療が長期に及ぶ慢性疾患や、脳内のドーパミン神経細胞の脱落により、歩行などの運動障害を発する難病のパーキンソン病など、長期に及ぶ治療においては医師の診察を毎日受けられるわけではない。そのため自身でのセルフケアが重要となる。患者は症状を記録し、適切なタイミングで薬を投与する必要がある。

データとAIによる治療

適切な治療を行うために、データはニューラルネットワークに送られ、機械学習を行う。パーキンソン病患者の症状を確実に予測するためには、1年分のデータが必要となる。ConnectedLifeの提供するソリューションでは、症状の変動を継続的かつシームレスに監視することが可能となっている。これにより、医師は治療スケジュールを適切に設定することができるため、パーキンソン患者の急な症状の変化が起きないように抑制することができる。より多くの患者に提供できる正確なソリューションとするためには、AIのトレーニングに大量のデータが必要となる。

データ量と質の課題

AIソリューションをより正確で強固なものにするためには、大量のデータが必要であるが、医療データのアクセスにはいくつかの課題がある。

まず、医療データは機密性が高いため、患者、医療専門家、病院、政府、医療会社、保険会社などのデータ供給者がデータを共有することに消極的なことだ。また、データの所有者が不明確であるため、共有のための同意を得ることも困難である。また、医療データは多くのデータベースに分散されており、特定の医療データを探し出すのも難しいことがある。

ブロックチェーン技術でAIのスケーリング

これらのデータに関する課題に対処し、データをより広く利用するためには、データを扱う関係者の中で信頼を確立する方法が必要だ。ブロックチェーン技術を活用したオーシャンプロトコルによってデータエコノミーを前進させることができる。

ID管理されたデータは所有者を確立し、また、スマートコントラクトによりデータのアクセス制御を保持することでデータ共有に対する信頼を強化できる。加えて、ブロックチェーン技術ならではの正確なトレーサビリティによって、データの取得から使用に至るまでの経過が追跡可能となる。オーシャンプロトコルは、データのプライバシーを保護できるため、機密性の高いデータの共有ソリューションに向いている。

AIを使ったソリューションをより正確なものとするためには、データを多く読み込ませ、AIをトレーニングさせる必要がある。オーシャンプロトコルは、データの機密性を保持しながら共有できるサービスを提供する。

より優秀な知能となるために大量のデータを求めるAIに対し、データ共有にネガティブなイメージがある医療データを掛け合わせるには、ブロックチェーン技術とプライバシー技術を組み合わせたプロトコルが必要ではないだろうか。オーシャンプロトコルはデータエコノミーの先駆けとなるかもしれない。

参考
Combating Chronic Disease with Data, AI, and Blockchain

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