15カ国が関心を示す中銀発行デジタル通貨(CBDC)、IMF歴史的転換点と認識

国際通貨基金(IMF)が、決済手段として中央銀行発行の法定デジタル通貨(CBDC)に強い関心を持っている国が、世界に15カ国存在するとの調査報告書を公表しています。

IMFの報告書は「Casting Light on Central Bank Digital Currencies(中央銀行デジタル通貨に光を当てる)」とのタイトルで、CBDC発行の現状と将来について深く考察しています。

仮想通貨への関心は、市場での取引量が減少するのに反比例するように増大しており、IMFはCBDC発行を目指す主要な理由は2つあると指摘しています。

スウェーデン、中国など15法域がCBDC発行に関心示す

CBDC発行に関心のある国は、オーストラリアとブラジル、中国、東カリブ海諸国機構(OECS)、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、ウルグアイ、バハマ、カナダ、オランダ領キュラソー&シント・マールテン、エクアドル、イスラエル、フィリピン、英国の15法域です。

IMFはこのほか、発行を検討中としながら詳細を公表しない国として、バーレーン、バルバドス、エジプト、ユーロ圏、香港、インド、インドネシア、イスラエル、ジャマイカ、韓国、レバノン、ニュージーランド、ロシア、スイスを挙げています。

モバイル決済の台頭など、現金の役割弱まる傾向か

民間金融機関が、日常的に仮想通貨を決済手段に利用することになれば、新たな決済手段について熱烈な関心が高まり、中銀でも広く登録されるようになるかもしれません。

スウェーデンでは実際、モバイル決済アプリが普及しており、現金の流通が極めて少なくなっています。またスウェーデンでは数年後に現金を受け入れなくなると予測されています。一方中国では、中国人民銀行(PBoC)がCBDCの発行プロジェクトを進めており、デジタル法定通貨に関連するソフトウエアや暗号化モデル、マイクロチップを開発できる人材の募集を始めています。

関連:中国人民銀行がブロックチェーン技術者公募、法定デジタル通貨開発促進へ

IMF公式ウェブサイトに公表された報告書は、暗号通貨とブロックチェーンとして知られるテクノロジーを開発する国には、2つの重要な理由がるあると述べています。第1に現金の役割がCBDC発行によって弱まること、第2に銀行口座がないか金融サービスを利用できない多数の市民との接触を図るため、この金融テクノロジーを利用する中銀が増えていると指摘しています。

ラガルドIMF専務理事は仮想通貨への歴史的転換点と認識

クリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)専務理事は11月14日に開催されたシンガポール・フィンテック・フェスティバルで「Winds of Change:The Case for New Digital Currency(新デジタル通貨と変化の風)」というタイトルの講演を行いました。

IMF公式ウェブサイトに掲載された講演の内容によると、ラガルド専務理事は「通貨自体が変わりつつある。規制を超えて、国家はマネーマーケットの積極的プレーヤーにとどまるべきか?あるいは、国家は現金の後退によって残される空間をどう埋めるべきか?」とコメントしています。

また同専務理事は、新たな金融環境における中銀の役割について、「CBDCに関連してデジタル化という新しい風が吹いており、われわれは歴史的転換点にある、われわれすべてが採用する途上にある」と、通貨自体が変わりつつあることを認めました。

ラガルド専務理事は、スウェーデンなどスカンジナビア諸国を例に挙げて、デジタル時代の夜明けを予告しています。

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参考
Casting Light on Central Bank Digital Currencies
Winds of Change: The Case for New Digital Currency

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