仮想通貨・ブロックチェーン業界が発展するスイス、クリプト銀行SEBAサービス開始

スイスのツーク市が「クリプトバレー(Crypto Valley)」都市を宣言してから6年になろうとしています。ロンドンのIT投資企業アトミコ(Atomico)は2018年末、欧州最速成長中の「テクノロジー都市」にツークを指名しました。ツークを訪れる旅行者は今や、デジタル通貨と法定通貨を自由に交換できる公認の銀行SEBAを市中に見いだして、シリコンバレーにちなんで呼称されるクリプトバレーの進歩に目を見張ります。

テクノロジー会議開催数で前年比177%増のツークが最速成長都市に指名

Atomicoは2015年から毎年発表している報告書「State of European Tech(欧州テクノロジー事情)」の中で、技術関連の会議への参加者数の年度比較増加率などに基づいたランクを発表しています。その中でツークは18年、テクノロジー会議開催の数で前年比177%増を記録して、世界最速成長都市に指名されました。

ツークの仮想通貨活動は、スイス政府から熱烈な支援を受けています。スイスは一貫して仮想通貨に進歩的なスタンスを取り、仮想通貨取引を早くから合法化しています。スイスは仮想通貨とブロックチェーン技術を世界金融の戦略的イノベーションと見なし、産業の成長維持とその分野の雇用拡大に努めています。

CVベンチャーキャピタルlの18年10月の報告書によると、ツークの仮想通貨、ブロックチェーン関連トップ50社の時価総額は440億ドル(約4,700億円)に達し、スイスのクリプト産業の確実な成長を裏付けました。ツークにあるデジタル通貨もしくはブロックチェーン技術関連の企業数は17年に、ほぼ倍増して600社に増えました。

法定通貨と仮想通貨を自由交換できる初の銀行SEBAが本格営業へ

これら企業にとどまらず、一般市民や旅行者も利用できる市中銀行が、19年8月にスイス金融市場監督庁(FINMA)から認可された初のクリプト(暗号)銀行SEBAです。SEBAは発足1年で本格事業の準備を進め、19年11月に企業や市民向けの新しい金融機関として本格運用を開始しました。

SEBAは19年末までに、3ケタの顧客の国内口座を開設し、1億フラン(約1億100万ドル)の第2ラウンドの資金調達を計画しています。

SEBAは発表文の中で、同行が「仮想通貨と法定通貨の間の橋渡しになることを目指している」と述べています。声明によると、仮想通貨と法定通貨はいろいろな面でほぼ同一のものと見なし、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ステラ(XLM)、ライトコイン(LTC)、イーサリアムクラシック(ETC)の取り扱いを実施しています。

スイスは金融アプリに対応する民法など6法修正、近代化へ

スイスのウエリ・マウラー(Ueli Maurer)財務相は18年12月初め、ブロックチェーンあるいは仮想通貨に特定した法的枠組みの確立に代わる手段として、この新技術と金融上のアプリケーションに供するため既存の法律を修正する計画を発表しています。

またフェイスブック(Facebook)は19年5月、ジュネーブにフィンテック企業「リブラネットワークス(Libra Networks)を設立して、自社仮想通貨「リブラ(Libra)」を発行する計画を進めています。米国を含めて多くの政府関係機関とブロックチェーン関係企業との関係は必ずしも円滑ではありませんが、Facebookのプロジェクトが受け入れられれば、そのような状況に風穴を開けることができるかもしれません。リブラ発行元がスイスを拠点としていることから、その国際的立場は一段と高まりそうです。

参考
SEBA Bank launches operative business
Report: Swiss City of Zug Named Fastest Growing Tech Hub in Europe

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