東京オリンピックはサイバー攻撃やチケット転売防止にブロックチェーン技術の出番?

2020年の東京オリンピック開催時には、ブロックチェーン技術が少なくとも2つの側面、つまりチケット販売とサイバーセキュリティで重要な役割を果たせるはずです。香港大学工学部・建築学部の非常勤教授であるウィニー・タン(Winnie Tang)氏が、暗号資産(仮想通貨)メディアのコインニューステレグラフ(Coinnewstelegraph)に寄稿した記事を紹介しましょう。

ロシアのハッカー集団が平昌オリンピックの反ドーピング組織など攻撃

東京オリンピックでブロックチェーン技術が活躍できる分野の1つは、予想されるサイバー攻撃をブロックチェーン技術で事前防止しようという試みです。きっかけになったのはマイクロソフトの脅威インテリジェンスセンター(Microsoft Threat Intelligence Center)が2019年10月末、世界の反ドーピング機関やスポーツ団体を対象とする大規模なサイバー攻撃の可能性を探知したことです。

マサチューセッツ工科大学(MIT)が所有するメディア企業MITテクノロジーレビューが詳細を伝えています。ロシアのハッカー集団は、過去に特定の人物を狙うスピア・フィッシングやパスワードスプレー攻撃、インターネット接続機器への侵入などの手段によって、北大西洋条約機構(NATO)やフランスのテレビ局などを攻撃していました。

また、韓国の平昌で開催された18年冬季オリンピックに、ドーピング容疑でロシア選手の出場が拒否されたことを受け、一部ハッカー集団は、平昌オリンピック開催に関連する国家機関や反ドーピング組織にハッカー攻撃をしかけたとされています。

チケットの転売・ダフ屋行為を防止する試み 転売の対象者は中国人観客

もう1つはチケットの転売・ダフ屋行為です。東京オリンピックのチケット販売では、このような違法行為を防止する策として、チケットが抽選方式によって販売されました。チケット販売に絡む不法な転売に対しては、100万円の罰金もしくは1年の懲役刑が科せられます。

それでも中国のウェブサイトでは、チケットが4~5倍の値段で売買されおり、例えば開会式のセクションA券は、正規値段が30万円のところ9万人民元(約140万円)の値で取引されています。

販売されるチケットの総数は880万枚ですが、75%は日本国内で販売され、外国からのビジター向けには残りの約220万枚が販売されています。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会によると、約50万人の中国人がチケット転売の主要対象であろうと予測されています。

2024年パリオリンピックはブロックチェーンで透明化進む

このような深刻な2つの問題の解決策は、ブロックチェーン技術です。プライスウォータハウスクーパース(PwC)によると、次期2024年のパリオリンピックでは、チケット転売防止にブロックチェーン技術の採用が検討されています。そうなればチケット点検や転売、不法な取引などの手続きがすべてデジタル化されます。ブロックチェーン技術はほかにも、麻薬の闇取引防止やアスリートの公式データ、個人の医療情報記録などにも利用される可能性があります。

反ドーピングについても、アスリートのドーピング検査結果、過去の実績の記録などがブロックチェーン技術の共有システムにアップロードすることができます。これによって薬物検査結果に大きな信頼性が生まれ、ハッカーによる書き換えの可能性などを含む疑わしい結果が減少するかすべて除去されることから、個人記録の透明性と信頼性が高まります。

参考
Blockchain may be a solution for two problems of the Olympic Games Tokyo 2020 – Harbour Times

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