機関投資家の仮想通貨投資意欲をそぐさまざまな要因とは?

機関投資家やトレーダーはここまで、暗号資産(仮想通貨)の取引でいくつかの深刻な障害に直面してきました。信頼できる資産保管(カストディ)事業者の欠如、明確かつ標準化された規制環境の不在、全体的に未熟な市場構造などがそれです。

信頼できる資産保管事業者の欠如が大量投資を阻んでいる

機関投資家の観点からすると、仮想通貨への投資には本来大きな関心があるはずです。しかし、ロンドンのコンサルティグ企業グレイスパーク・パートナーズ(GreySpark Partners)の報告書(2018年9月4日)によると、仮想通貨を取引しているヘッジファンドは、世界全体で5500社の内、わずか2%以下に過ぎません。それだけに成長の余地があると言えるでしょう。

しかし、ヘッジファンドの参入は、機関投資家が資産を直接所有もしくは保管することを禁じる米証券取引員会(SEC)の規制によって限られてしまいます。主要銀行など信頼できる第三者保管業者は、ほかの資産クラスについては保管します。ところが仮想通貨の保管になると、話が違ってきます。

それが法的、技術的あるいは戦略的理由のいずれであろうが、大手銀行など主要な保管業者は概して仮想通貨の保管を嫌がりますので、多くの機関投資家による仮想通貨の大量取引は限定されたものになりかねません。信頼できる保管業者の欠如によって、機関投資家はほかの資産クラスにはそうしているような大量の仮想通貨を取引する能力が結果的に阻害されています。

標準化された規制環境が不在

米国や欧州諸国では、規制環境はパッチワークそのものであり、法的な落とし穴や罰金を恐れる企業の業務を制約します。例えば米国では、いくつかある連邦規制当局がそれぞれの金融規制に責任を持ち、さらに州ごとに異なる規制によって事態はさらに複雑になります。

SECと商品先物取引委員会(CFTC)、金融犯罪取締執行ネットワーク(FinCEN)の3つの規制当局の共同声明(2019年10月11日)が、仮想通貨取引所であれブローカーディラー、投資信託であれ、仮想通貨業界プレーヤーには悲観的(マイナス)な影響を与えています。三者の声明は業界プレーヤーに対して、銀行秘密法などさまざまな銀行・金融サービス関連法を順守しなくてはならないと勧告したものです。

リターンを求める投資家の投資意欲に応える環境整備を

明確かつ標準化された規制環境の不在の問題はさらに深刻です。仮想通貨の定義そのものも、規制当局間に見解の不一致があります。例えばSECは、デジタル通貨を証券と見なして仮想通貨取引は、証券法に準じなくてはならないと考えますが、CFTCはかなりの数の仮想通貨を商品と位置づけて、ユーザーによる仮想通貨のデリバティブ取引を認めようとします。

未熟な市場環境は、機関投資家が投資をためらう大きな問題です。取引所は垂直統合企業となって、取引、清算、決済すべてをオールインワンの環境の中でホストします。ネットワーク金融システムを欠く仮想通貨取引所は、ほかのプレーヤーとは一切連携なく業務を行う結果、仮想通貨の取引と決済に時間がかかってしまいます。大量の取引と迅速な決済・清算を望む機関投資家にとって。その資金運用は効率的ではなく、取引の魅力を失いかねません。

このように投資の意欲をそぐさまざまな問題はありますが、機関投資家の関心は仮想通貨のような新しい投資からリターンを求めてやみません。今後、少なくとも資産保管と未熟な市場構造の問題が改善される可能性は十分あります。規制環境の問題についても、SECやCFTCなどは、欧州や中国の速い動きに対抗するためには、「煮え切らない姿勢」は早期に解消しなくてはなりません。2020年は仮想通貨市場の発展を左右する重要な1年になるでしょう。

参考
Just How Unfriendly Is the Crypto Ecosystem for Institutional Investors Today?

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