イスラム諸国が共通の仮想通貨の発行に動く?米経済制裁に対抗して

世界のイスラム諸国が圏内利用に限定した共通のデジタル通貨を発行して、ドルの世界独占支配に対抗することを計画しているようです。

Bitcoin.comが伝えたもので、にわかには信じがたい話ですが、本当なら第2次世界大戦後70年余り続いてきたドル支配に対して、初めて反旗を翻す動きです。米トランプ政権誕生後、金融面の制裁を武器とする対イラン、対トルコなどへの過激な動きが目立っていますが、まさにその対抗策して有効かもしれません。

ドルは国際貿易通貨の目的を失い、制裁手段と化したとの批判

国際ビジネスフォーラム(IBF)のエロール・ヤラール(Erol Yarar)会長は2018年11月16日、トルコの通信社アナドル(Anadolu)との会見で、ドルは国際貿易通貨としての目的を失い、「制裁手段」と化してしまったと厳しく批判しました。

ヤラール会長はさらに、イスラム諸国の単一通貨は主として、国際金融システムにおける米国既存の支配権を弱め、挑戦するために計画されたと、以下のように語りました。

「IBFは今年(2018年)、より公正で健全な貿易環境を創造するため『金融の多元的共存(monetary Pluralism)』について議論する。われわれは当面の課題であるイスラム諸国間の国際貿易に利用する仮想通貨システムを創り出すつもりだ」

イスラム諸国共通の仮想通貨は、製品価格とファンドの設定に利用

米国の金融制裁をまともに受けたイランは、制裁を回避する独自の仮想通貨の開発をほぼ完了、発行は時間の問題と観測されています。ヤラール会長によれば、イスラム諸国間共通のデジタル通貨は、企業や為替市場、イスラム諸国による製品の価格決定に使用される予定です。また、国際通貨基金(IMF)のビジネスモデルに見習うファンドの設立を考えています。

同会長は「無利子融資原則に基づくファンドは、経済危機に直面する諸国を支援する。ファンド名は、国際イスラム協力ファンド(International Islamic Cooperation Fund)となるだろう」と述べています。このような仮想通貨発行計画は、キューバやベネズエラ、北朝鮮、ジンバブエ、シリア、ロシア、イエメン、そしてイランなど、米国から制裁を受けている国が、自国の仮想通貨を発行するか否かの論議の引き金にもなります。

米国による制裁は、個人や企業、国との取引を禁止することで有効となります。これらの制裁はしばしば、大手金融機関の支援を得て一段と効果を発揮します。そのような際に、既成の金融システムの枠組みの外で運用される仮想通貨の利用は、他国との取引継続に対して制裁を受ける諸国を支援する最善の代替手段になるはずです。

仮想通貨の発行は米国の金融・経済政策を事実上骨抜きに

言い換えれば、金融取引を支援するため信頼できる仮想通貨システムが確立されれば、そのような取引を阻止しようとする米国を無力化して、制裁が持つ本来の力を奪うのに十分な能力を発揮する可能性があります。

イランでは、大手仮想通貨取引所のバイナンス(Binace)が、 米国の制裁に呼応して、イランのユーザーにバイナンスプラットフォームに保存されている手持ち資金を引き上げるよう勧告したと伝えられています。テヘランを拠点とするブロックチェーンプロジェクトAreatakの研究者であるニーマ・デカン(Nima Dehqan)氏は「イラン国内のユーザーは本来、仮想通貨取引所に余り信頼を置いていないので、目新しい出来事ではない」とコメントしています。

米国に配慮してビットレックス(Bittrex)やビットメックス(BitMEX)などいくつかのほかの取引所も同調する動きですが、デカン氏は制裁を理由にイランの投資家を締め出すことや、その陰にある米国の圧力を厳しく批判しています。

しかし、ワッツアップ(WhatsAPP)やロシア系のテレグラム(Telegram)などのコミュニケーションアプリを利用すれば、イランのユーザーは十分対応できるとの話もあります。今回のイスラム諸国内共通の仮想通貨発行計画は、万一実現すれば米国の金融・経済政策は事実上骨抜きにされるという見方は当たっているのではないでしょうか。

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参考
Bitcoin.com

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