本連載シリーズは新しいスマートコントラクトブロックチェーンであるテゾス(Tezos:XTZ) を特集しています。
新しいスマートコントラクトブロックチェーンTezosとは?
Tezosは、オンチェーンガバナンスによる自律的なアップデート、および形式検証が可能なスマートコントラクトが特徴として知られるブロックチェーンで、2018年9月にメインネットがリリースしています。
Tezosはスマートコントラクトを執行できるブロックチェーンという点で、イーサリアムと同じですが、メタコンセンサス機能を持つスマートコントラクトプラットフォームであり、プロトコルそのものの修正がハードフォークなしで可能であることが最も特徴的な点で、リリース時点でのホワイトペーパーでも焦点が当てられています。
Tezosの3つの特徴
オンチェーンガバナンス
イーサリアムではプロトコルのアップデートの大きい方向性が少数の開発者グループで決定されていると言われていたり、画一的なソフトウェアアップデート方法はありません。Ethereum Researchの掲示板などを通した開発者コミュニティでEIPという形式で提案し、開発提案を固めて、主要クライアントのGitHubにプルリクエストを出すという順序で行われています。
このようなプロセスは開発提案が受け入れられるかどうかに明確なルールが徹底されていないという指摘が存在しています。Tezosはその批判を参考にオンチェーンガバナンスという手法を採用しています。
トークンホルダーによる投票という明確なアップデートの決定方法で、その投票結果に基づきソフトウェアが開発されます。
自律的なアップデート
イーサリアムは大きいアップデートのために定期的にハードフォークを行い、互換性のない古いブロックチェーンを捨てるというアップデート手法を行っています。つまり新しいソフトウェアがリリースされたときに、マイナーやフルノードオペレーターはクライアントをインストールして能動的にアップデートする必要があります。Tezsoはこの点でより自律的なアップデートをするように設計されています。
具体的には下記のようなプロセスで進みます。
- 開発者は誰でもコードの変更を提案できます。
- Tezosのトークンホルダーはその提案を受け入れるかどうかを投票。
- 提案が投票で可決されれば、自動的にそのアップデートがテストネットで反映されます。
- 予め定められた期間、テストネットで稼働します。XTZを持っている人はこの期間、いつでも異議を唱えることができます。
- テストネットでの稼働が終了すると、トークンホルダーによる確認投票が行われます。この確認投票を完了するとメインネットでのソフトウェアのアップデートが行われます。
なお一般的にこの投票プロセスは、ブロックを生成するバリデータノードにデリゲート(委任)します。Tezosにおいてバリデータノード、ブロック生成候補者は、Bakerと呼ばれます。
ただしこういったオンチェーンガバナンスの設計について、トークンホルダーに求められる知識の期待値が大きすぎるという指摘や、金権政治になる可能性が高いという懸念は頻繁に挙げられます。
形式検証可能な言語のよるアプリケーション開発
さらにTezosの特徴的な点として、形式検証可能な言語でのアプリケーション開発環境があります。
パブリックブロックチェーン上に一度デプロイされたスマートコントラクトはアップデートしにくく、加えて実資産を扱うソフトウェアであるという観点で、コントラクトコードは開発者にとって扱い方が非常に難しいという背景があります。
The DAOやParityウォレットで起きたスマートコントラクトの脆弱性によるユーザー資産流出事件で数十億円規模の大きな被害が出たのを覚えている読者の方も多いのではないでしょうか。
Tezosはこの点で、形式検証可能な言語によって安全なスマートコントラクト開発環境を提案しています。これはバグがないコードであるかを数学的に検証をすることができる仕組みです。こういったスマートコントラクトの形式検証はブロックチェーン業界全体で注目が集まる研究テーマですがTezosはその代表的なプロジェクトです。
Tezosについてさらに詳しく知りたい方は下記のサイトへ
公式サイト:https://tezos.com/
ホワイトペーパー:https://www.tezos.or.jp/wp-content/uploads/2019/02/white_paper.pdf