DeFi(分散型金融)の周辺で立ち上がるビジネスレイヤーとポータルサイトとは

DeFi(分散型金融)は、パブリックブロックチェーンのアプリケーションとして最も注目される分野の一つです。DeFiとは何かについて基本的なことは下記のコラムで解説しています。

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これまでDeFiの領域で活発に資金調達がされ盛り上がりを見せていたものは特にプロトコルレイヤーでした。例えば、メイカーダオ(MakerDAO)やコンパウンド(Compound)、dYdXなどがそれにあたります。MakerDAOはa16zなどから3ラウンドに渡り2,700万ドル(約30億円)を調達、Compoundも同じくa16zから2019年11月に2,500万ドルを調達、dYdXもポリチェーン・キャピタル(Polychain Capital)やa16zなどから1,000万ドルを2018年に資金調達しています。これらは今ではDeFiのエコシステムで主流なプロトコルとして存在感を示しています。

DeFiで立ち上がるビジネスレイヤー

今まではこれらのプロトコルに資金が流れていましたが、2019年末頃にはベンチャーキャピタル投資がアプリケーションレイヤーにも向かい始めました。DeFiのアプリケーションレイヤーとは、インスタダップ(InstaDApp)やゼリオン(Zerion)などです。

インスタダップは2019年10月に240万ドルをパンテラ・キャピタル(Pantera Capital)やコインベース・ベンチャーズ(Coinbase Ventures)などから資金調達しました。またゼリオンは2019年12月に200万ドルを資金調達しています。

インスタダップやゼリオンなどのサービスはDeFIのポータルサイトなどと呼ばれます。
MakerDAO、Compoundなどはプロトコルであり、本質的にはイーサリアム上のスマートコントラクトです。ユーザーは優れたインターフェイスでそのコントラクトアドレスを利用できる必要がありますし、CompoundからUniswapといったプロトコル間のレンディングリバランスなどもできると望ましいでしょう。

さらにはユーザーが自身の資金をDeFiで貸し出しして、どの期間でどの程度金利を得ることができたか確認できると嬉しいユーザもいるはずです。このようなユーザーインターフェイスを構築しているサービスが、インスタダップやゼリオンといったアプリケーションです。多くのユーザーにとってプロトコルを直接利用することは難しすぎ、このようなインターフェイスが求められるだろうと考えられます。

インターフェイスとユーザーデータが分離されている重要性

ゼリオンの投資ラウンドをリードしたプレースホルダ(Placeholder)のパートナーであるブラッド・バーナム(Brad Burnham)氏は、インターフェイスとユーザーデータが分離されている重要性を指摘しています。

バーナム氏によると、DeFiのポータルサイトは、90年代にインターネットサービスプロバイダのAOLなどによってのポータルで限定されていたコンテンツを彷彿させるとしています。当時、初期のインターネットでは、ユーザーは自由にWebを閲覧するのではなく、インターネットサービスプロバイダのポータルサイト内のコンテンツのみを見ることが一般的でした。しかし、Webが成熟をするとユーザーは自由にインターネットを利用するようになり、ポータルの価値は相対的に減少をします。

DeFiのインターフェイスはこのようなポータルサイトと性質が似ています。しかし、似ていながらも重要な異なる点は、ゼリオンなどはポータルでありながらインターフェイスとユーザーデータが分離されており、ユーザーは自身の秘密鍵でブロックチェーンと通信しています。つまり、この場合、インスタダップやゼリオンを使用していてもユーザーは他のサービスも同時に利用できます。

これはユーザーのサービスの選択肢を奪っていない点で素晴らしく、ゼリオンはインターフェイスなど自社の強みを構築すれば、ユーザーはそれを享受しながら別のサービスも利用できる可能性がある点が、強調されています。このようなDeFiポータルサイトはまだマネタイズモデルが確立されていないものの、このように注目が集まっている分野です。

参考
Zerion

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