デジタル時代に対応して米政府支援のデジタルドル発行の動き CFTC前議長が発表

米商品先物取引委員会(CFTC)前委員長のクリストファー・ジャンカルロ(Christopher Giancarlo)氏が、政府肝いりのデジタルドル(digital dollar)を発行するプロジェクトを開始しました。2020年1月15日から17日にかけてスイスのサンモリッツで開かれた年次暗号通貨金融会議(Crypto Finance Conference)で発表されました。

デジタルドルはFRBが発行し銀行システムから流通させる信用を享受

ジャンカルロ氏は「われわれは月面に人類を送り込んだ。今度は、米ドルをサイバースペースに送り込むことができる」と宣言しました。

同氏はその中で、「米ドルのデジタル通貨は、米国政府と連邦準備制度理事会(FRB)が発行し、在来の銀行システムを通じて流通することによって、米国政府の全面的な信頼と信用を享受する」と説明しています。

FRBがデジタルドルを発行するのではないかとのうわさは、VCファンドのモルガン・クリーク・デジタル(Morgan Creek Digital)の共同創業者アンソニー・ポンプリアーノ(Anthony Pompliano)氏が1月15日、Twitter上で伝えてから一挙に広がりました。同氏はFRBの発表は早ければ数日中とつぶやき、中国が進めているデジタル人民元(CBDC)の発行計画の影響を受けていると分析していました。

コインと紙幣、そして第三の形態としてのデジタルドル

ジャンカルロ氏はFRBの動きには直接触れず、「デジタルドルはステーブルコインではない。それはまさにデジタル化されたドルそのものである。米ドルは現在、コインと紙幣の2つの異なる形体で供給されているが、われわれは第3の形体であるデジタルドルを提案する」と述べています。

ジャンカルロ氏によると、デジタルドルは世界でも競争力を保持することになります。人類はデジタル化された21世紀に深く入りつつあり、20世紀のアナログ通貨では、世界の商業活動で果たす米ドルの重要性が過小評価されなくなります。

デジタルドル発行計画は、FRBのパウエル議長とムニューシン財務長官が19年12月初旬に会談して、ビットコイン(BTC)とその他仮想通貨は国家の安全保障の脅威であり、今後5年ぐらいの近い将来、(ドルの)デジタル通貨を発行する必要はないと言明したことは相反する動きです。

非営利団体のデジタルドル財団を設立

ジャンカルロ氏は1月15日、アクセンチュア(Accenture)社と提携して、非営利団体のデジタルドル財団(Digital Dollar Foundation)の設立を発表しました。協力者にはCFTCフィンテック研究部門LabCFTC元ディレクターのダニエル・ゴーファイン(Daniel Gorfine)、投資家のチャールズ・ジャンカルロ(Charles Giancarlo)氏ら。

クリストファー・ジャンカルロ氏は財団創設に当たって声明を公表し、「デジタルドルは、ドル紙幣が時代遅れにならないよう支援するもので、個人や世界の企業は場所と時間を問わずドル決済をすることができる」としています。

アクセンチュアは、デジタルドルの設計責任者、技術パートナーとして協力します。アクセンチュアはカナダ中央銀行、シンガポール金融管理局(MAS)、欧州中央銀行などとの技術提携の実績を示しています。

デジタルドル財団は手始めに、デジタルドル発行に向けたさまざまなアプローチを開始します。その際、FRBはじめ政府関係部局からの協力・支援を得る暗黙の了承を得ており、デジタルドルの発行が既存の金融システムを脅かさないことを公言しています。

参考
Former CFTC Chair Launches The Digital Dollar Project
Former CFTC Chairman Launching Digital Dollar Project to Develop New Currency Fully Backed by the US Government

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