仮想通貨ネム(NEM)講演会参加レポート:ブロックチェーン活用事例とSymbolローンチに向けて

2020年1月19日に東京都港区南青山にあるアララ株式会社にて暗号通貨ネム(NEM)に関する講演会「NEM SEMINAR 2020 – Road to SYMBOL -」が行われた。NEMブロックチェーンを活用したサービス開発に取り組む企業と、2020年2月から3月にローンチ予定の次世代ブロックチェーンシンボル(SYMBOL)についての講演となった。各社はブロックチェーンを活用し、どんな課題に取り組んでいるのだろうか。

nem基礎講座〜NEMからSYMBOLへ ブロックチェーンの力で社会問題に挑む〜

最初に登壇したのは、株式会社オープニングライン(Opening Line)のテクニカルディレクターである岡田和也氏だ。岡田氏からは現行のNEM(NIS1)を活用した事例とSymbolの機能に関する解説があった。

株式会社Opening Lineは、ネム(NEM)のブロックチェーンを活用し、健康促進アプリFiFiCなどを開発している。このアプリは、スマートフォンに搭載される万歩計機能と連動することで歩数を記録し、アプリ上でNEMブロックチェーン上で作られたコイン(モザイクトークン)を獲得することができるというもの。獲得したコインは、提携しているお店のサービスと交換することも可能だ。また、近畿大学のブロックチェーン研究プロジェクトなどの技術的サポートも行っており、学内ではさまざまな実証実験が行われている。

また岡田氏からは、Webの既存ノウハウを活かし、比較的安全に利用できるNEMブロックチェーンから、次世代ブロックチェーン・シンボル(SYMBOL)になったことでどのような向上がされるかといった説明もあった。

岐阜大学のShizuiNet

次に登壇した岐阜大学大学院医学系研究科准教授の手塚健一氏は、自らが進める「岐阜大学しずい細胞プロジェクト」関して管理の観点からNEMブロックチェーンを活用している事例が紹介された。

手塚氏の研究では、親知らずから幹細胞を培養することで再生医療などの用途へ応用することが考えられている。年間約3,000万本も捨てられる日本人の歯から、歯髄(しずい)細胞を収集し、約100人に1人出現するヒト白血球抗原(HLA)をホモに持つドナーの探索を行い、脊髄損傷など緊急性を要する疾患にも安全に再生医療が行えるように進められるようにすることを目的としている。

歯髄細胞は凍結チューブに入れた状態で保管運搬されるなど、管理が難しい。そこでNEMブロックチェーンを活用することで、施設や企業、医療機関などでのトレーサビリティの強化を実現した。「誰が誰に何をどうした」など情報をブロックチェーンに残すことでトレーサビリティを強化できる。間違いが許されない医療現場などでは、ブロックチェーンによる正確な情報管理が重要なものであると考えられる。

再エネの価値を最大化させるトレーサブルな電力の供給

3番目に登壇したのは、みんな電力株式会社専務取締役の三宅成也氏。みんな電力株式会社では、電気の生産者とつながる新しい電力の形を提案する。社会情勢として、電力自由化が進み、さまざまな企業が電力の販売に参入できるようになった。また、再生可能エネルギー100%利用による事業運営を目指す「RE100イニシアチブ」への参画企業も増えており、再生可能エネルギーへの需要も高まりつつある。

みんな電力株式会社が提案したブロックチェーンソリューションを活用することで、まず電力が再エネであることが証明できる。また、ユーザーが支払った電気料金がどこへ使われるのかなどトラッキングすることも可能となる。そしてブロックチェーンで発行されるトークンにより、電力のカラーリング、シェアリング、ファンディングなどもできるようになり、電力の新たな市場が生まれる可能性も期待される。

Symbolのステーキング報酬について

株式会社イーサセキュリティ代表取締役の加門昭平氏は、次世代ブロックチェーン・シンボル(SYMBOL)の報酬制度について講演を行った。現行のネム(NEM)からシンボル(SYMBOL)へと移行することで、報酬の仕組みも変化する。分散化されたネットワークを形成し安定化させるためには、報酬制度でノードランナーを増やすことが重要なポイントとなってくる。

シンボル(SYMBOL)では現行のNEMにはない、ブロックを生成した際に報酬が入手できる仕組みの「ブロック報酬制度」が組み込まれる。このブロック報酬は四半期ごとに減少する。

また、ノードサービス報酬として、委任ハーベスターによって生成されたブロック報酬のうち、25%がノードに分配される仕組みとなる。シンボル(SYMBOL)では、将来的にスーパーノードに頼らず、ノードや委任ハーベストによるブロック報酬により、安定したネットワークの維持を目指していると考えられるという内容だった。

医療をもっと楽にしたい「楽医」

株式会社ヘルスケアゲート(HealthCare Gate)代表取締役である保田浩文氏からは、自社で進めている医療へのブロックチェーン活用ソリューションに関する講演が行われた。株式会社ヘルスケアゲートでは、「医療の見える化」を目的とし、オンライン診療の分野で新しいソリューションとなる「楽医(らくい)」の開発が進められている。

2019年11月には、患者に対して処方箋の薬効や副作用などの説明を行う服薬指導のオンライン化が薬機法改正により解禁となった。楽医は、これまで病院で受診し処方箋を受け取り、薬局で服薬指導を受け薬を受け取るまでの流れを、一貫してオンラインで利用できることを目指している。電子処方箋をブロックチェーン上に記録し送付することで改ざん防止となり、正確な情報として送信可能となる。時間が取れないことなど、なかなか病院に通院することができないことで病気を放置してしまいがちになるが、楽医の実現にとって、オンライン診療での治療を続けることが容易となるのが期待される。

スマートコントラクトがなくても知恵と工夫でなんでもできる

これまでNEMブロックチェーンを活用した、アイディアあふれる作品を作ってきた高崎悠介氏からは、これからの利用についてさまざまなアイディアが語られた。

高崎氏が作成したブロックチェーン掲示板「エスネムエス(SNEMS)」では、投稿がブロックチェーンに刻まれ、スレッドが盛り上がると、スレッド作成者にトークンが送金されるようになっている。また、「閉鎖国家ピユピル」ではピクセルアートをオンチェーンに保管することで、NFTのようなコピー不可能なデジタル作品の完成を実現させている。

今は、署名済みのトランザクションが面白いと語る高崎氏。NEMの期限付きトランザクションを使うことでサブスクリプションサービスや予約キャンセルへのペナルティ、トークンのレンタルと自動返却などのサービスも可能になるのではないかと、興味を湧かせるアイディアを述べた。

ノンプログラマーの秘密兵器となりうるNEM

最後の登壇者となるねむぐま氏からは、Symbolではなく、NEMブロックチェーンを用いることに関する講演があった。

ねむぐま氏はプログラミングの経験がなく、これまでプログラミング言語に触れたこともなかったそうだ。まったくの未経験から、ブロックチェーンを活用したアプリケーション制作を始めている。一般的に無謀とも言える取り組みだが、最難関とも考えられたNEMブロックチェーンを取り込む部分の開発は、4ヶ月ほどの制作期間のうち、1週間で完成させたとのことだ。できあがったアプリケーション「F1000」は、ブロックチェーンとアートを繋いだ作品となっており、対象のアートにNEMがチップされた分だけ、アートが変化していくものとなっている。ネム(NEM)がどれだけ使いやすいブロックチェーンかをプログラマーでない自身の体験から語った。

NEMの魅力とは

NEMブロックチェーンは、セキュアな設計でありながらも、比較的安価なブロックチェーンであるように感じた。ブロックチェーンを活用したサービスを作る場合、トランザクションを発生させる度に手数料がかかってしまう。この手数料が安価な面と多くのトランザクションを捌けるところもNEMの魅力だろう。また、NEMならではの設計により、既存のサービスへの統合が取りやすい。ノンプログラマーでもたった1週間でブロックチェーンの機能を組み込むことができるほどの容易さは、他のブロックチェーンにはないのではないだろうか。

今後次世代ブロックチェーン・シンボル(SYMBOL)がローンチされる予定で、クロスチェーン、アグリゲートトランザクション、マルチレベルマルチシグアカウント、アカウント制限など、さらにパワーアップした機能も追加される。現在テストネットも公開されているので、この機会に触れてみてはどうだろうか。

ネム(NEM/XEM)の価格・相場・チャート

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