ダボス会議、重要発言まとめ

今月21日から24日の間、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)がスイスのダボスで開催。本記事では、今年のダボスで討論された仮想通貨・ビットコイン、デジタル通貨(CBDC)に関する重要発言をまとめている。

また、世界経済フォーラム年次総会にあたるダボス会議で集まったメンバーを中心に、仮想通貨やブロックチェーン関連イベントや発表も相次いで行われた。その中でみられた注目発言、2019年のダボス会議との変化も合わせて掲載する。

日銀らでデジタル通貨研究

日本銀行やイングランド銀行(BoE)を含む6の中央銀行と国際決済銀行はダボス会議に際し21日に、中銀デジタル通貨の発行・利用例について共同研究を行うべく、新しい組織をつくると発表。

新組織は「CBDC利用可能性評議会」といい、日銀と欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行のほかに、スイス国民銀行、スウェーデン中銀のリクスバンク、カナダ銀行を含む6中銀プラス国際決済銀行(BIS)も参加するという。

報道によれば、この組織はCBDCの課題や利点を整理し報告書を年内に公開する予定。

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米ヘッジファンド創業者「現金は無価値」

世界最大級の米ヘッジファンドBridgewater Associatesの創業者であるレイ・ダリオ氏は米CNBCのインタビューに応じ、各国の中央銀行が通貨の発行権限を握る現在の法定通貨システムでは、政府が不換紙幣を発行し続けることが可能なため「金余り」状態を生み出し、通貨価値の下落につながるとして「現金は無価値」と斬って捨てる発言をした。

そしてインド、パンジャブ州の経済アドバイザーを務める B.S.Kohli氏も同様の意見を示し、「現金は使えなくなっている」と語る。また、ヨルダンのデジタル経済及びアントルプルヌールシップ(起業家精神)の大臣を務めるMothanna Gharaibeh氏もこの考えに賛同した。

Gharaibeh氏によれば、ヨルダン国民が、税金や医療費など、政府機関による様々なサービスを現金で支払うことが不可能な段階に達しているのだという。そうした中で、モバイルウォレットや銀行送金のような電子決済システムの導入は必要不可欠だと説明。ただ一方で、新たなお金を再発明する必要はないとし、現金の匿名性を排除できれば充分だと述べた。

一方、デジタル資産の一つであるビットコインに対して、否定的な意見も散見される。イスラエルの歴史学者Yuval Noah Harari氏によれば、現在は通貨の「信頼」の重要性がより増しているとし、ビットコインはその信頼に欠け、現在の時代の流れと逆行するものであると指摘した。さらに、現在の流れはゴールドへの回帰にあるとの持論を展開している。

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CFTC前会長による新たなCBDCプロジェクト立ち上げ

米商品先物取引委員会(CFTC)の前会長Christopher Giancarlo氏(愛称:クリプトパパ)は、ダボスのパネルで、先日発表した「デジタルドル」のプロジェクトの詳細を公表。

IT大手のアクセンチュアがサポートし、経済学者や弁護士、学者、技術者を初め、多くの専門家が参加し、デジタルドル発行に向け、導入のメリットとデメリットについて調査を行なう計画が明らかになった。

なお以前、米連銀議長が昨年もドル現金の需要が依然として高いことを理由に、デジタルドルの必要性を否定したが、それに関する研究を進めていると発言した経緯がある。

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カリブラCEOが語るリブラ

フェスブック社の仮想通貨関連子会社カリブラのCEOを務めるデビッド・マーカス氏は、デジタル通貨の性質(小売決済かホールセール型か)に関係なく、金融決済を革新し、中央銀行が直面する通貨問題および自国経済の課題を解決する鍵となると指摘した。

仮想通貨リブラの銀行からの支持率が低いなか、マーカス氏はダボス会議の場で改めてその究極の目標を説明。「リブラは金融包摂という課題を理解し、解決法として試すものだ」と話した。

WEFがCBDCフレームワークを発表

リブラが半年前に発表されて以来、世界各国の中央銀行はその世界的カバーに対抗し、自国のデジタル通貨に関する研究や発行検討に取り組み始めている。

したがって世界経済フォーラムは初めて、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)に関するフレームワーク(枠組み)を発表した。

全28ページからなるフレームワークは、各国の中央銀行にとってCBDCの発行が適切であるかどうかの判断を手助けするガイドとなる。すでにCBDCの研究を実施している中央銀行に対し、リサーチがよりすばやく行えるようにサポートする内容も記載されている。

WEFのブロックチェーン・分散型台帳技術の責任者Sheila Warren氏は、CBDCの発行は、その国にもグローバルスケールにおいても重大な影響を与えると説明。「中央銀行は慎重に作業を進め、可能性や課題を厳密に分析することが必須である」と語った。

またWEFの最終日には、デジタル通貨のガバナンスの枠組みを設計するため、国際連合組織を設立したことを発表している。

本組織が強化する分野は、デジタル通貨に関する効率性、スピード、相互運用性、金融包摂、透明性とのことだ。今回の取り組みにはWEFのメンバーだけでなく、一般企業、金融機関、政府の代表者、技術者、研究者、NGOらを世界から召集している。

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Bakkt、仮想通貨アプリの特徴明かす

ダボス会議に参加したBakktの責任者Adam White氏は自社開発の消費者向けの仮想通貨アプリについてその特徴を明かした。

現在開発中のアプリでは、ビットコイン(BTC)を含むデジタル価値のある資産を導入対象とすると説明。仮想通貨だけでなく、バーチャルグッズやデジタル証券、ポイントなどもその対象に該当する。同アプリは年内ローンチされる予定だ。

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RippleのIPOも示唆

さらに、参加者のリップル社CEOガーリングハウス氏は、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記者の取材に応じて、自社IPO(新規公開株)について、12ヶ月以内に行う可能性を示唆した。

昨年12月に、シリーズCという戦略調達ラウンドで2億米ドルを調達したため、業界はすでにIPO着手の可能性を推測していた。ダボスでガーリングハウスは「今後12ヵ月に渡り、仮想通貨企業のIPOが続々と行われる可能性が高い。(リップルがIPOを行う)最後の企業にはならないだろう」と話した。

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仮想通貨技術の存在感高まる

ダボス会議では、スイス大手金融グループクレディ・スイスが「サトシナカモト」に関する広告が大々的に掲載されるなど、異例ともいえる光景が会場で見られた。

その広告には「サトシ、ダボスへようこそ」とのスローガンが掲げられ、多くのバンカーや政府高官の目にも触れていたようだ

2019年のダボス会議では、仮想通貨業界や現行の金融形態について「仮想通貨業界の規模が小さすぎる」、「中央銀行に頼るべきではない」などが主な見解だったが、2019年はリブラの台頭や、中国政府によるCBDC発行計画やブロックチェーン戦略などの盛り上がりと懸念もあり、昨年に比べ、デジタル通貨、そして仮想通貨・ブロックチェーン技術の存在感は増している。2019年は、この業界が大きな進展を見せた年と言えそうだ。

最後に本会議の開催と直接関係はないが、⁠米名門大MITの研究グループが、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が最終的には既存の仮想通貨技術を一部使用する可能性が高いと予測し、「政府と中銀は仮想通貨のエコシステムをCBDCの試験場として検証するべき」としている。

2020年、デジタル通貨・仮想通貨およびブロックチェーンの進展はより一層注目されていくだろう。

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