2019年の米証券取引委員会(SEC)は仮想通貨規制にどう動くのか?

米証券取引委員会(SEC)は2018年、ICOや詐欺行為に関係した仮想通貨企業に対して厳しい法的措置を取りましたが、仮想通貨やICO規制に何らかの方針を示すことはできませんでした。

規制問題の決着はもはや時間的な余裕は余り残されておらず、市場を混乱させないためには、2019年中それも早い段階で手始めにビットコインETF上場について何らかの方針を示す必要に迫られています。

証券取引法違反でSECの取り締まり目立った2018年

米国には、仮想通貨を監視、規制する政府機関が多くあります。SECのほか商品先物取引委員会(CFTC)、連邦預金保険公社(FDIC)、財務省所管の通貨監督庁(OCC)、内国歳入庁(IRS)などが、それぞれの守備範囲を固めて互いに譲らず、関係省庁の一致した見解をまとめることが困難になっています。さらに連邦政府関係機関と州政府の意見調整も難しい状況です。

特にSECとCFTCは、規制問題に絡んで全く逆の見解を示してきた経緯があります。さらに連邦と州の間では、例えば、オハイオ州は18年11月末、企業が税金をビットコインで支払うことを全米で初めて認めたように、州独自の政策実行が目立ちました。

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SECは18年を通じて、ICOに関連するセキュリティを強化し、数百のスタートアップ企業が証券取引法侵害容疑で取り締まりを受けました。ICOによる不法な資金調達を図る個人や企業に対する監視の目も強化されました。

例えば、元WBC世界スーパーフェザー級と世界ライト級王者だったフロイド・メイウエザー(Floyd Mayweather)や、ミュージックプロデューサーのDJキャレド(DJ Khaled)ら有名人を含む個人やスタートアップが罰せられました。

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ビットコイン(BTC)ETF認可のカギとなる4つの懸念

SECのジェイ・クレイトン(Jay Clayton)委員長は、ビットコインが証券取引所で取引される上場投資信託(ETF)として認可される前に、仮想通貨の市場監視とカストディ(保管)の必要性を強調しています。同委員長は併せて、ICOは証券取引法などとのコンプライアンスが保証されて初めて登録される必要性を説き、「ICOによる資金調達を実施する場合、私募を選ぶか、さもなければSECに登録しなければならない」と述べ、登録には株式上場と同様に財務諸表とその他SECが求める情報の提出が必要だとしています。

バーンズ&ソーンバーグ法律事務所(Barnes & Thornburg LLP)のパートナーであるトレイス・シュメルツ(Trace Schmeltz)氏は「仮想通貨市場そして特にETFの(上場)可能性のあるビットコインに対する規制について、SECは4点を懸念している」として、以下のように指摘しています。

  • 市場操作:取引量が少なく、規制も緩いスポット市場は、(例えば国際指標にある米国の濃縮冷凍オレンジ果汁先物の取引のように)市場操作される可能性がある。
  • 価格ボラティリティ:ETFは基礎となる投資の値動きにマッチしなくてはならないため、ボラティリティの高い市場では正確な値決めが難しいという懸念が存在する。
  • 流動性:投資が即座に清算できるような市場には適切な流動性がなくてはならない。
  • 物理的保管:先物よりさらに物理的な支援を受けるETFはすべて、ビットコインに対する安全かつ確実な物理的保管を取得、実証されなくてはならない。

シュメルツ氏は、上記の4つの懸念が払しょくされれば、ビットコイン市場は円熟すると述べ、「ビットコインの評価額が低めの昨今、(仮想通貨関連企業の)M&Aはより大きな管理と監視ができる安定した市場の出現につながる。その結果としてSECは、これら規制上の懸念に先立って市場のイノベーションを図り、ビットコインベースのETFを認可すべき時期に差し掛かっているようだ」と述べています。

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参考
Bitcoin.com

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