バイナンス(Binance)から学ぶスタートアップの戦略、タイミングと参入角度

「未来を予測することは簡単だが、スタートアップにはタイミングと参入角度が重要で、それこそが最も難しい」これはよく言われる言葉です。例えば、暗号通貨は広く使われるという未来を予測できたとして、どのタイミングで会社を創業して、暗号通貨業界でどの事業からスタートをするかは選択が難しいです。

バイナンスの成長スピードは異例

依然として暗号通貨のスタートアップは、ビジネスをすることが難しいと言われていますが、これはまさにタイミングと参入角度の選定の難しさからでしょう。暗号通貨業界でこれを最も優れた形で実行した企業がどこかと問われれば、筆者はバイナンス(Binance)と答えます。

取引所バイナンスは今もユーザーに支持さて、世界最大級の出来高を維持しています。同社の1年目の利益は、ドイツ銀行を上回り、その成長スピードは異例です。ドイツ銀行は、創業から148年、支店数は2400、従業員は98,720人ですが、当時のバイナンスの従業員は200人です。同社は、創業期のGoogleやFacebookより遥かに早いスピードで成長を続けている企業です。

CZがすぐにバイナンス(Binance)を創業しなかった理由は?

タイミングの点でいえば、バイナンスの創業は2017年です。創業者で最高経営責任者(CEO)あるCZは、中国の取引所OKExでの(最高技術責任者)CTOとしての勤務を経て起業していますが、すぐには取引所を創業せず、他取引所に技術供与をする受託の期間を1年間ほど経ています。

2017年に自身の取引所を設立して参入した理由はようやく市場が大きくなりつつあったからと語っています。彼によると、2016年時点では、マーケットのサイズが大きくなく、良いビジネスではなかったからだと言います。

確かに日本国内でみても、2016年まで暗号通貨取引所はほとんど黒字化しておらず、すぐに利益体質なビジネスを構築することは難しかったでしょう。このとき彼は機会を見計らいながら、他取引所への技術供与を通して、キャッシュフローを得て、かつ開発力を高めています。そして2017年に暗号通貨市場に新しい市場参加者の流入の兆し、具体的には、日本でコインチェックなどの取引所がテレビCMを打ち始めたり、韓国市場の本格的な立ち上がりがあり、同年6月にバイナンスを創業します。

事業を広げ続けるバイナンス(Binance)

参入角度の点では、取引所というビジネスを選定して、その中でもバイナンスは暗号通貨同士の市場から事業を開始しました。暗号通貨の市場は簡単に国境を超えてグローバルの顧客に訴求できます。

同社は、グローバルで市場を専有した後、スポット取引以外の市場提供や各国のローカル取引所を開設、現在ではレンディングやステーキング、独自ブロックチェーンへと事業を広げています。もしバイナンスの創業事業が、一カ国をターゲットにした戦略や、最初から法定通貨にこだわっていたら今のようには成長していないでしょう。ここからも同社の参入角度を学べます。

タイミングと参入角度を見極める判断能力はどこで養えるのか

タイミングと参入角度を見極める判断能力をどこで養えるでしょうか。それは、やはり見晴らしの良い場所にいることなのでしょう。CZの場合は、それが当時2015年でのナンバーワン取引所であったOKExというバンテージポイントでCTOをしていた経験からできた意思決定ではないかと思います。

他にも将来に振り返れば「あの企業はタイミングも参入角度も完璧だった」という企業が今すでに生まれているかもしれません。しかし、それは将来にならないと多くの人に認識できず、その不確定の可能性を信じれる人が起業家なのでしょう。

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