多くの人が2019年のブロックチェーン業界の予想を行っています。個人的に今年の動きを大きく予想するならば、確実なものとして「Ending era “only” fat protocols(Fat Protocols”のみ”時代の終焉)」と考えています。
Fat Protocols”のみ”の時代の終焉
ブロックチェーンの領域では、信じられている概念、投資理論で「Fat Protocols」というものがあります。
インターネット時代は、TCP/IPやhttpsといったプロトコルに価値がつかなかったが、ブロックチェーン領域においては、プロトコルに価値がつくという理論です。
現在も、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)の仮想通貨、つまりはプロトコルトークンが最も価値があります。
さらにビットコインを使うエンティティ、イーサリアムの上に乗るアプリケーションが増えれば、さらにプロトコルの価値は高まり、アプリケーションの価値に対して、プロトコルの価値は常に上回るという理論です。GoogleやFacebookのサービス層がインターネットの価値の多くをキャプチャしている構造とは真逆です。
このFat Protocolsの理論を元に、ベンチャーキャピタルなどはプロトコルに多くの投資を多く行ってきました。しかし、これからプロトコルの価値をドライブさせるためには、当然アプリケーション層も必要です。
ベンチャーキャピタルが投資するプロトコルの上のアプリケーション層も応援するという構造が2018年後半くらいからかなり目立つようになりました。プロトコルと、そのプロトコルに投資をするベンチャーキャピタルなどが協力して、アプリケーションレイヤーをインキュベートするような動きです。
こういった事例がかなり増え、その動きが形になりはじめるのが2019年前半にあると予想されます。
サーバー(オフチェーン)を併用してユーザービリティを上げるアプリケーションの増加
また、そういった動きとは別にサーバーを多用する形で構築するアプリケーションも多く生まれると思います。マイクリプトヒーローズ(My Crypto Heros)がその点で成功事例になりつつあるからです。
国産のブロックチェーンゲームであるMy Crypto Herosは、執筆時点において、アクティブユーザーがグローバルで最も数が多いイーサリアムのゲームです。2018年後半に誕生し、2019年の元旦には全国ネットでCMも流れました。
My Crypto Herosは、ゲーム性自体はまだ十分に洗練されているかはどうかはこれからと思いますが、この実装は興味深いです。
My Crypto Herosの実装は3層構造に分かれています。
1.イーサリアムのブロックチェーン
アセットの発行上限、所有情報など最もクリティカルな情報をブロックチェーンに書き込んでいます。
ERC721のキャラクター・エクステンションはERC721で表現されています。
2.Loomのサイドチェーン
ERC721のMetaデータの書き換えはメインチェーンではなく、サイドチェーンで行います。
3.オフチェーン(サーバー)
さらに三層目の構造としてオフチェーンとしてサーバーを利用しています。現在おおよそ全てのゲームロジック、バトルなどはサーバーで組まれていると思われます。実装の検討段階では、ゲームロジックもLoomのサイドチェーンで載せたかったものの、技術的制約から上記の実装になったことはこちらの資料から参照できます。
これによってユーザーが負担をするgasを低くしています。更に詳しい解説はこちらのレポートを参照ください。
アプリケーションレイヤーが目立つように
こういった要素から、これまでよりアプリケーションレイヤーが目立つようになるのではないかと予想しています。
そしてアプリケーションレイヤーの台頭は、そのブロックチェーンの活用方法などが分かりやすく、ブロックチェーン業界外からの「ブロックチェーンは使い道がない」という見方も多少ながら変化をするのではないかと予想しています。
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