ブロックチェーンを活用した食品認証

食品業界におけるブロックチェーンの将来性

ブロックチェーンの付加価値的機能として「トレーサビリティ(Traceability)」という言葉を、よく耳にするのではないだろうか。トレーサビリティとは「追跡可能性」のことを表しており、ブロックチェーンの「記録したデータを改ざんできない」という特徴をいかすことで、流通における情報をより真正性の高いものにすることができる。

アメリカの調査会社であるジュニパー・リサーチ(Juniper Research)が提示したレポートによると、ブロックチェーンがトレーサビリティ領域に及ぼす経済効果は45億ドル(約4,920億円)に達する見込みであるという。現在では、食品業界におけるサプライチェーン全体の品質管理と業務フローの改善に活用されるケースが増えており、多くの企業が出資しているようだ。

日本においても2018年6月に厚生労働省より公布された食品衛生法改正により、HACCP(ハサップ)制度に沿った衛生管理が制度化されている。HACCPとは、食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因を未然に防ぐための衛生管理手法のことだ。ブロックチェーンを活用することで食品のトレーサビリティを強化し、より安全な食品を提供可能となることも考えられる。

食のトレーサビリティ強化でもたらされるもの

食品業界は品質保証や業務効率に関する問題だけではなく、「フードロス」という世界的にも深刻な問題も抱えている。食品業界では未だアナログな業務フローとなっており、この非効率な業務によって、食物の3分の1が消費者に届く前に劣化し、破棄されているという。

フードロス問題に対するブロックチェーン活用事例として、世界的な小売企業であるウォルマート(Walmart)社は、IBMが提供しているブロックチェーンによるトレーサビリティープラットフォーム「IBM・フード・トラスト(IBM Food Trust)」を用いた実証実験を行った。この結果、食品の追跡に従来かかっていた時間的コストの大幅な削減が行われることが証明され、また食品の安全性も担保されることで、より付加価値のある食品ブランドとすることができるようになる。

このように食品業界へのブロックチェーン導入によってもたらされるメリットは大きいものの、高すぎる透明性によって、品質の記録を拒む企業も存在する可能性がある。一度記録されてしまったデータは永久に保存されてしまうため、低品質の食品データが記録されてしまうことを懸念するのではないだろうか。そのため、全ての企業に対するソリューションとは言えないかもしれないが、ブロックチェーンは食品業界のさまざまな課題を解決できる手段の一つと言えるだろう。

【参考】
Authenticating Food Through Blockchain
【事例】ブロックチェーンで生産から消費まで「食のサプライチェーン」を可視化する
食品におけるトレーサビリティの重要性

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