中国は国有銀行雇員手当の一部を試験的にデジタル人民元で支払い開始へ

中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)を開発する中国の動きが、いよいよ現実味を帯びてきました。国有4大銀行に1つである中国農業銀行が、デジタルウォレットのアプリケーションを近く政府職員に試験運用するというのです。

行員の5月の通勤費50%をデジタル人民元で支払う

中国共産党に近い環球時報(Global Times)は3月末、業界インサイダーの話としてCBDC発行計画の開始はさらに一歩近づいていることを確認しました。またPrimitive Crypto社のパートナーであるドビー・ワン(Dovey Wan)氏によると、人民銀行(PBoC)が上海に近い蘇州で、デジタル通貨電子決済(DC/EP)つまりデジタル人民元のテストを開始すると、人民日報4月15日の報道を確認しました。

ワン氏のTwitter(4月16日)によると、テストでは国有銀行の社員に5月の通勤給付金の半額をこのデジタル人民元で支払う形で実施されます。中国のテック株特化市場「スターマーケット(Star Market)によると、このテストにはまた、江蘇省地方政府職員すべての通勤費もCBDCで支払わるとのことです。またCBDCは近い将来、ほかの3省でもテスト展開される予定だとも言われています。

韓国銀行はデジタルウォンを試験運用 緊急対応に備える

中国がCBDC発行で先行していることに対応して、世界の数多くの政府や中央銀行がそれぞれの開発を強化しています。

韓国の中銀である韓国銀行(BOK)は4月初め、自前のデジタルウォンをテストするパイロットプログラムを開始したことを明らかにしています。聯合ニュースによると、韓国銀行はCBDCに対する差し迫ったニーズはないが、将来に備える必要があるかどうかは市場条件の変化次第であると見ています。

聯合ニュースは「現金に対する需要や競争力のある決済サービス市場そして高水準の金融包摂がなお実存する状況を考慮するならば、(韓国が)近い将来CBDCを発行するニーズはなお低い。しかし、国内と海外の市場条件が急速に変化する場合、迅速に対策を講ずべきニーズの1つである」と伝えています。

新型コロナウイルスまん延が世界のCBDC発行計画を加速

同様の動きは欧米にも広がっています。フランス銀行(Banque de France)は3月末、法定デジタル通貨発行に伴う恩恵とリスクについて、より多くの情報を収集するため、CBDCのテストを実施したいと提案しました。相前後してドイツ連邦銀行(Deutsche Bundesbank)もまた、デジタル通貨発行計画を進めることを認めました。

民間では、周知の通りFacebookがデジタル通貨「リブラ(Libra)」発行を進めるため、米国など主要国規制当局や立法府などと1年近くも協議しています。リブラの運営母体であるリブラ財団(Libra Association)は4月17日、国際的な反応を考慮して、中央集約的なステーブルコインの発行計画から特定の国の通貨と1対1交換可能な個別のステーブルコインの発行に切り替えるという修正案を発表しました。

中国の動きを意識した米国は、連邦準備制度理事会(FRB)が発行するデジタル米ドルの発行を真剣に検討しています。日本も日本銀行を中心にCBDCを検討、カンボジアなどかなりの数の発展途上国もそれぞれ自前のCBDC計画を検討もしくは進めていることは周知の通りです。新型コロナウイルスのパンデミックは、CBDC発行の動きを加速させるプラスの影響を及ぼしています。

参考
Chinese Government Employees to Get PBOC’s Digital Yuan First

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