世界経済フォーラム(WEF)が4月28日、ブロックチェーンに関する新しいリポートを公表しました。リポートは「信頼の再設計:ブロックチェーン展開ツールキット」との表題で、ツールキットはWEFウェブサイトで閲覧できます。
リスク評価などブロックチェーン技術実装のためのガイドライン
WEFは1971年に創設された企業リーダー中心の非政府組織(NGO)であり、世界の経済と産業の課題を探り、世界情勢の改善に取り組んでいる大きな影響力のある有力団体です。WEFが公開したツールキットは、ブロックチェーン実装プロジェクトの中で生じる諸問題に対応する実証済みのベストプラクティスを文書化した「その種の初の高水準ガイドライン」です。
ツールキットには、ブロックチェーン技術の応用研究が進んでいるサプライチェーン業界に対して、ブロックチェーンの安全な展開のための意思決定に利用できるチェックリスト、ガイド、リスク評価計算機、決定木が含まれています。
ツールキットはUAEの国家支出50%処理など2プロジェクトで実証済み
このツールキットを使った2つのパイロットプログラムがすでに実施済みです。その1つは、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビデジタル庁(ADDA)とのコラボ事業です。2019年4月に発足したUAEの「第4次産業革命センター(C4IR UAE)」の建設にツールキットが活用されています。UAEは国家予算の50%を21年までにブロックチェーンン技術を使って決済する計画です。
第2のプログラムは、世界最大手石油企業サウジアラムコ(Saudi Aramco)が、不正利用検知システム構築にツールキットを利用しました。
WEFの発表は「ブロックチェーン技術は究極のネットワーク技術である」と評価して、「組織は、課題を解決し、サプライチェーン全体に効率、自動化、透明性を提供するブロックチェーンン技術の破壊的能力を理解し始めている」と評価しています。
ツールキットは今後、世界の港湾と配船システムの効率化に取り組む
ツールキットは、新型コロナウイルスまん延によって生じた世界経済の大混乱に直接応えるものです。世界の消費者需要が急落、サプライチェーンが悪戦苦闘する中で、サプライチェーン機能のそれぞれにブロックチェーン技術を実装する指南書となります。サプライチェーンの主要な問題点であるデジタル化や対面接触なく処理する道を開きます。
また今回のツールキットは、特に世界の港湾と配船システムの効率化を対象としています。WEFは、依然として紙と人手に頼っている同業界を刷新するため、以下のような諸点に応えます。
- 紙からデジタルへのモデルチェンジ
- 供給者に対するデータプライバシーソリューションの改善
- データ共有に当たって、供給者へのインセンティブ創出
- 業界が将来ありうる危機に直面して機能を停止することのない早期対応策
WEFが特に重視している点は、国際的な供給者間の製品とデータの交換と相互共有のためのブロックチェーンベースのシステム構築です。ブロックチェーンはその際、透明性と安全確実なデータネットワークの構築を支援します。ブロックチェーンはまた、輸出業者が必要なコストを下げ、スマートコントラクトによる信頼できるネットワーク構築をサポートします。
参考
・World Economic Forum releases Blockchain Toolkit
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