Y Combinator(Yコンビネータ)は、アメリカで最も優れたスタートアップアクセラレータプログラムです。
シードアクセラレータ元祖と言える同社は、2005年にポール・グレアム、ロバート・T・モリス、トリヴァー・ブラックウェル、ジェシカ・リヴィングストンにより設立され、創業初期の起業家へ短期間のメンターシップと教育プログラムを提供します。プログラミング終了後に有望なスタートアップには投資を行い、また、様々なVCやエンジェル投資家を招いたデモデイを開催します。
Y Combinatorは、多くの成功したソフトウェア企業を輩出してきました。最も代表的な企業は、Airbnb(エアビーアンドビー)やDropbox(ドロップボックス)です。
よくよくY Combinatorから輩出されたブロックチェーンプロジェクトを振り返ると、実に様々なブロックチェーン企業が同プログラムから生まれていることに気付きます。本コラムでは、そんなY Combinatorから輩出された暗号通貨・ブロックチェーンプロジェクトを概観します。
Coinbase(コインベース)
2012年/夏期
出典:https://www.coinbase.com/
言わずとしれたアメリカで最も取引量が多い取引所であるCoinbase(コインベース)もY Combinator出身の企業です。直近の資金調達ラウンドでのバリュエーションは1兆円近くになっており、ブロックチェーン領域で最も成功している企業と言って良いでしょう。
Coinbaseは、ブロックチェーン業界のスタートアップスクールとも呼ばれ、Coinbase元社員が起業をして、様々なプロジェクトを始める事例も多いです。そういった様々な意味でもCoinbaseは、ブロックチェーン業界全体でも最も重要な企業であるとも言えます。
Dharma Lab(ダーマ・ラボ)
2017年/夏期
出典:https://dharma.io/
Dharma Lab(ダーマ・ラボ)は、Dharma Ptorocolを開発する企業です。Dharma Ptorocolは、債券発行のプロトコルで、Ethereumのミドルウェアです。Dharmaプロトコルを使用することで、様々なトークンを担保にして債務をトークン化して発行することができます。
そしてその債権トークンは、0x(ゼロエックス)のベースにして作られたDEX(分散型取引所)などで売買が可能です。DeFI(分散型金融)の主要なインフラストラクチャーになり得るプロトコルです。
Protocol Labs(プロトコルラボ)
2014年/夏期
出典:https://protocol.ai/
Protocol Labs(プロトコルラボ)は、IPFSをはじめとした様々なオープンソース・ソフトウェアを開発している企業です。Y combinator以外には、ウィンクルボスキャピタルから投資を受けており、個人投資家にはNaval Ravikantなどがいます。
また、Protocol Labsは、Filecoin(ファイルコイン)という、個人間でストレージの貸し借りができる分散型ストレージネットワークのプロジェクトも立ち上げています。プロトコルに相互互換性を持たせるインフラを整えるためのものと言えます。
他には、libp2p、IPLD、Multiformatsなどのオープンソースプロジェウトも推進しており、ブロックチェーン業界の人たちには非常に馴染み深い企業です。
Blockstack(ブロックスタック)
2014年/夏期
出典:https://blockstack.org/
Blockstack(ブロックスタック)は、より分散的なもう一つのインターネットを作るというビジョンを掲げているプロジェクトです。Blockstackブラウザでは、ユーザーは固有のIDを自身で管理し、Googleなどの中央集権企業が「邪悪にならないインターネット」ではなく、「邪悪に“なれない”インターネット」を目指します。
2018年12月にメインネットがローンチしています。
OpenSea(オープンシー)
2018年/冬期
出典:https://opensea.io/
Opensea(オープンシー)は、ERC721に代表されるNon Fangible Tokens(NFT)のマーケットプレイスです。
Cryptokittiesなどのゲームのトークンは、このマーケットプレイスで取引をされます。
他にも様々なERC721のマーケットプレイスがありますが、このopenseaが最も規模が大きく、メジャーです。
coinbase venturesなども、openseaに投資をしています。
関連:仮想通貨の議論でよく聞く「Non-Fungible Token (NFT)」とは?
まとめ
以上は、Y combinatorから輩出されたブロックチェーンプロジェクトの一例です。他にもスマートコントラクト監査のQuantstamp、Lightning Network上でのアトミックスワップにフォーカスするプロジェクトであるSparkswapなど多数のブロックチェーンプロジェクトが輩出されています。
その投資の打率、有望なブロックチェーンスタートアップを見出している割合は、平均的なブロックチェーン専門のファンドより好成績なのではないか、と思うほどです。当たり前ではありますが、ブロックチェーン領域においても従来と同様アントレプレナーシップ(企業家精神)とエグゼキューション(実行)能力を持って推進するリーダーが存在するプロジェクトだけが生き残ってるとも振り返られたりもします。
だからこそ、Y combinatorのアクセラレータプログラムは、ブロックチェーン領域においても有効なのではないのでしょうか。Y combinatorから輩出された企業一覧(非ブロックチェーンも含む全て)はこちらから閲覧できます。
関連
・起業家としてブロックチェーン領域に向き合う上で大切にしていること
・2019年のブロックチェーン業界予想: Fat Protocols”のみ”時代の終焉
d10n Labのリサーチコミュニティでは、ブロックチェーン業界の動向解説から、更に深いビジネス分析、技術解説、その他多くの考察やレポート配信を月に15本以上の頻度で行なっています。
コミュニティでは議論も行えるようにしており、ブロックチェーン領域に積極的な大企業・スタートアップ、個人の多くに利用頂いています。
▼d10n lab 未来を思考するための離合集散的コミュニティ
https://d10nlab.com/