会計監査およびコンサルティング企業のPwCが、暗号資産業界のヘッジファンドについて調査したレポートを公開しました。投資家やトレーダーが、暗号資産の市場において、その規模や影響力、投資方針の傾向を知っておくべきことは重要でしょう。この業界のヘッジファンドは2017年頃から徐々に数が増えており、今後も増えることが見込まれます。本コラムでは同レポートの要約を取り上げます。
参照:2020Crypto Hedge Fund Report
暗号資産業界のヘッジファンドの規模や数
現在、暗号資産を扱うアクティブなヘッジファンドは約150存在するとされています。また、その総額では20億ドル(約2,200億円)を運用しているとされます。2019年の運用総額は2018年から2倍になっています。
しかし新しいヘッジファンドの創業は減少しており、これはより成績の優れたヘッジファンドに資金が集中していることを意味しています。また、ファンドに出資している出資者はファミリーオフィスが最も多く、その次に資産家の個人であることが明らかになっています。平均して一つのファンドに58人の資金の出し手がいるとされます。ほとんどのファンドが従来のヘッジファンドと同様の手数料体系で、2%の運用手数料と、利益から20%の報酬を得る体系です。5,000万ドル(約55億円)以上運用するファンドは2019年末時点で約15%です。
暗号資産業界のヘッジファンドの運用状況
次に暗号資産業界のヘッジファンドの運用状況について、投資戦略はクオンツが最も多いものの、戦略に関わらず2019年はほとんど全てのファンドがプラスパフォーマンスを出しています。
また興味深い点としては、暗号資産特有のステーキングなどに参加するヘッジファンドの数が多い点です。約40%のヘッジファンドがステーキングを利用したことがあると回答しています。また、普段トレードをする暗号資産の種類は以下のようになります。これはほとんど時価総額順です。時価総額15位以下の暗号資産をトレードするヘッジファンドは10%を切ってきます。
運用チームや使用ツールなど
次に運用チームや使用ツールなどです。同調査によると、業界のヘッジファンドの運用チームの平均人数は6人です。伝統的なヘッジファンドと異なる点は、エンジニアも関わる点が一般的な点です。暗号資産特有の管理に必要になる知識が多いためです。
また、80%のファンドが外部のカストディサービスを利用しているとしています。加えて30%のファンドがサードパーティーの調査サービスを利用しているとも述べています。サードパーティーの調査サービスは日本ではあまりないサービスですが、米国では例えばSkewやThe Blockなどが存在します。
まとめ
いかがだったでしょうか。運用総額が2,000億円程度というのは、筆者としては納得感のある規模であると感じたと同時にこれからも伸びしろが大きくあると言えます。また、イーサリアム(ETH)などビットコイン(BTC)以外の暗号資産もトレードしているファンドが多いのも特徴的で、ステーキングにも前向きであることも注目に値します。イーサリアムがプルーフ・オブ・ステーク(PoS)でステーキングできようになった際は、ヘッジファンドによるステーキングも行われるでしょう。投資判断の背景知識になるため、興味を持った方は是非原文をお読み下さい。
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