ビットコインやイーサリアムなどで指摘されるオフチェーンガバンスの問題点
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のソフトウェアのアップデートの決定手法に対して問題であると指摘される点は、その提案がブロックチェーンの外で行われ、クライアントがリリースするので透明性がないのではないかということです。
特に、ビットコインに関して言えば、クライアントのシェアは97%以上をbitcoin coreが占有しています。
参照:CoinDance
新しいbitcoin coreがリリースをされたとき、基本的にノードオペレーターやマイナーは、そのクライアントのアップデートを受け入れます。
またbitcoin coreを開発するグループは数名の開発者であり、彼らの間でどのようなやり取りがされているか、各開発者にスポンサー支援者がいるかどうかなどに関して透明性に欠けます。
2017年の6~8月は、ビットコインが誕生してからそのソフトウェアのアップデートについて最も大きく揉めた時期です。
当時、ビットコインコミュニティの開発グループでは、ブロックサイズを大きくするべきと主張をするグループ(ビッグブロック派)と、SegWitを導入してレイヤー2スケールをするべきと主張するグループが分かれました。
結果的にビッグブロック派のグループは、ビットコインキャッシュ というハードフォークをしたチェーンに活動を移行しました。このときのビットコインコミュニティでは、マイナーがプロトコルの意思決定を全てを決めるのか?という批判や、コードにこれまでコミットをしてきた開発者は投票権を持たないのか?などということが議論されました。
さらにマイナーや開発者ではないビジネスレイヤーが中心で提案したSegWit2xや、SegWitのシグナリングデータであるbit1を含まないブロックを全て拒絶するBIP148(UASF)をするユーザー中心の強硬策などさまざまな提案がされて、これらの論争は2年以上も続いたのです。
言い換えると、本当にクリティカルな議論になったとき、アップデートを決定するフレームワークが曖昧であることが露呈した場面でもあります。
イーサリアムの場合も、オフチェーンガバナンスによる問題点は同様にあります。例えば、The DAOがハックをしたときに、それをロールバックする判断は開発者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)をはじめとするイーサリアム財団が行い、彼らが開発者グループの中心であったからアプケーションレイヤーもユーザーもマイナーも彼らをフォローしました。
しかし、分散型・非中央集権のネットワークであるはずのブロックチェーンで、その決定プロセスの正さについては議論の余地があります。イーサリアムにオンチェーンガバナンスの仕組みがないからこその決定プロセスでしたが、例えばETHをステークしてユーザーによる投票モデルで、ロールバックを実行するかしないかを決定するというものとどちらであるべきかという議論が行われています。
また比較的に最近のトピックでは、イーサリアムの開発者コミュニティで、ブロック報酬をハードフォークにより3ETHから2ETHに減らすことが決定されました。この決定は、コアな開発者たちの議論のなかで決定されました。ヴィタリックをはじめとしたコア開発者を、基本的にはユーザーもマイナーもフォローするので、その提案は受け入れられます。
しかしこの決定プロセスに対しても、同様に疑問の余地はあるでしょう。より多くのユーザーやマイナーも含めたネットワーク参加者がその決定に参加する余地はなかったのか、と議論ができます。こういった課題に対してアプローチをしようとしているのがオンチェーンガバナンスのブロックチェーンです。
テゾス(Tezos)のようなオンチェーンガバナンスの課題
このような従来のブロックチェーンのアップデートに対するガバナンスを明確に定めようとしているブロックチェーンがテゾス(Tezos)をはじめとするオンチェーンガバナンスを取り入れるブロックチェーンです。
トークン保有者がトークンを用いてスマートコントラクトで投票して、その決定が自律的にソフトウェアに反映されるというものです。これは今まで曖昧であったガバナンスに対して明確にルールを導入しようとする取り組みであると言えます。
しかしながら、こういったオンチェーンガバナンスにも問題はあります。
第一に、流通するトークンの大部分は取引所に保管されているということです。最近ではユーザーはトークンを取引所に預けながら、ステーキング報酬を得ることもできるようになっており、自分のウォレットで保管するユーザーは少数派になりつつあります。ですがガバナンスへの参加・投票は自分のウォレットで管理していなければならないためハードルが上がります。
第二に、多くのユーザーはプロトコルの決定に対して投票する知識を持たなかったり、興味がないという事実もあるでしょう。そもそも投票をするという意思決定には思考コストをトークンホルダーに強いるものです。だからこそ、Tezosではステーキングノード(ベイカー)に対して委任することもできるようになっています。しかしながら、委任先ノードがどのような方針を持ってプロトコルを支持しようとしているか関心を持っているトークンホルダーが多くはない可能性もあります。
このような観点でオンチェーンガバナンスにもまだ課題はあり、今後、実際に使われながらテストされる必要性があると言えます。
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